欧州中央銀行（ＥＣＢ）政策委員会メンバーのホルツマン・オーストリア中銀総裁は、米国による関税の影響は、ユーロ圏の消費者物価を押し上げるのではなく、むしろ物価上昇を抑制する可能性が高いとの見解を示した。
タカ派として知られるホルツマン氏だが、今回の発言ではややハト派寄りの姿勢を見せ、現時点での政策判断は「完全にオープン」だと述べた。
ホルツマン氏は国際通貨基金（ＩＭＦ）春季会合が開かれているワシントンでインタビューに応じ「今後どこに行き着くかはまだ分からない」が、「ラガルド総裁に同意する。米関税の影響は、今のところインフレではなくディスインフレの方向に働くようだ」と語った。
Source: Bloomberg Economics
ＥＣＢは昨年６月以降、すでに７回の利下げを実施しており、今後の政策判断では企業景況感の悪化、ユーロ高、今後数週間の関税の動向などが鍵を握る。
ホルツマン氏のハト派的発言を受けて、市場は６月の0.25ポイント利下げを完全に織り込み、年内の利下げ幅予想は0.65ポイントとなった。２回の利下げを完全に織り込み、３回目の確率を60％と想定する水準だ。
トランプ米大統領は一部関税を３か月間凍結し、交渉ための猶予期間を設けたが、たとえ交渉の結果関税が引き下げられたとしても、経済への悪影響は残るとホルツマン氏は警告。
「米国が生み出す不確実性は、90日間の猶予期間を過ぎても継続する」と述べた。
ＥＣＢは６月の会合で、新たな経済・インフレ見通しを基に政策判断を行う予定だが、今回のような規模の貿易ショックに対応できるモデルが整っていないことから、予測には大きな不確実性がつきまとうとホルツマン氏は指摘。
「６月の予測は、どの前提を用いるべきかが不明確であり、極めて高い不確実性にさらされる。われわれのモデルはこのような規模の貿易ショックに対応できるようには設計されていない」と語った。
原題：ECB’s Holzmann Sees Disinflationary Impact From US Tariffs (1)（抜粋）
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