音楽はどこにでもあります。
コーヒーショップで流れる音楽や電話の保留音、Uberの車の中、YouTubeの広告でも音楽は流れます。もちろん、仕事をしている際に耳につけているイヤホンからも、音楽が聞こえてきます。
日常に音楽があふれているため、私たちはそれらを害のない背景音のように扱いがちですが、実は脳にとってはそうではありません。
本当の意味での背景ではない
自覚があろうとなかろうと、音楽が処理されるのは、脳の「注意」や「記憶」、「感情」と結びつく領域です。ということは、聞き流しているだけでも、集中の仕方や感じ方、判断の仕方に影響する場合があるのです。
「バックグラウンド・ミュージック(背景音楽)」は、本当の意味での「背景」ではありません。音楽は、精神状態の支えとなるか、妨げとなるかどちらかです。つまり、私たちは選ぶことができるのです。
マルチタスクが当たり前で、ひとつの作業に集中することがほとんどない、現在の目まぐるしい仕事状況。音楽は聴き方によって、目標達成を助けてくれることも、妨げることもあります。
でも、心配はいりません。ちょっと意識するだけで、今お使いのプレイリストが、生産性向上のための強力なツールになるのです。
「聴き方」を使い分ける
音楽は、生産性を上げるためのツールとして見過ごされがちです。
重要なのは、音楽を聴くかどうかではなく、どのようにして聴くかです。「アクティブ・リスニング(積極的傾聴)」と、いわゆる「意図的なパッシブ・リスニング(受動的傾聴)」と呼ばれるものは違います。
どちらも非常に効果がありますが、その理由は異なります。
アクティブ・リスニング
音楽に全神経を集中し、メロディやリズム、ハーモニー、歌詞に耳を傾ける聴き方で、このような聴き方をしているときは、マルチタスクはほぼ不可能といえます。
こうしたアクティブ・リスニングは、ストレスを和らげたり、高ぶった感情をリセットしたり、集中し直したりする必要があるときに取り入れましょう。
一定のビートに合わせて呼吸したり、歌詞のないお気に入りの音楽を聴いたりして、頭の中の雑音を取り除くと、注意と感情を制御する脳のシステムが活性化されます。
こうしてじっくり耳を傾けて聴く練習をしていると、そのうちに、他者の声に耳を傾けて気持ちを理解する能力も高まり、対人関係を強化することもできます。
意図的なパッシブ・リスニング
仕事をやりやすくしたり気分を変えたりするために曲を選んだうえで、音楽に意識を集中せず聴くことです。
アルゴリズムの自動再生に任せず、意図的に選曲します。たとえば、メールの受信箱を整理するときは「Lo-Fi Beats(ローファイ・ビーツ、わざと音質を劣化させ温かみのある音にした音楽)」、ブレインストーミングをするときは環境音楽などがいいでしょう。
こうしたタイプの聴き方は、脳の「デフォルトモード・ネットワーク」に働きかけます。これは、空想や内省、アイデアを生み出すときなどに活性化されるシステムです。
このデフォルトモード・ネットワークが活性化されると、集中が必要な作業から一歩引いて、ひらめきや創造力、大局的な考え方につながる余裕が生まれやすくなります。
音楽はバックグラウンドで意識的に流すと、タスク間の橋渡しとなり、想像力を使う仕事のさりげないサポートシステムとなってくれるのです。
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