地球外生命の探究史の中では、火星のメタンや金星のホスフィンなど、生命の痕跡と期待される発見が数多くなされてきましたが、残念ながら確固たる証拠となるものはなく、依然として人類は宇宙で孤独な存在だと考えられています。ケンブリッジ大学の天文学者らのチームが、慎重な姿勢を保ちながらも、地球外での生物活動を示唆するものとしてはこれまでで最も強い化学的痕跡を検出したことを発表しました。

[2504.12267] New Constraints on DMS and DMDS in the Atmosphere of K2-18 b from JWST MIRI
https://arxiv.org/abs/2504.12267

Strongest hints yet of biological activity outside the solar system – Hycean Worlds
https://hycean.group.cam.ac.uk/articles/hints-of-biological-activity-outside-the-solar-system/

Astronomers Detect a Signature of Life on a Distant Planet – The New York Times
https://www.nytimes.com/2025/04/16/science/astronomy-exoplanets-habitable-k218b.html

ケンブリッジ大学天文学研究所のニック・マドゥスダン教授らは、2025年4月16日に学術雑誌・The Astrophysical Journal Lettersに掲載された論文で、地球からしし座の方向に約124光年離れた位置にある惑星のK2-18bの大気中から、有機硫黄化合物であるジメチルスルフィド(DMS)と、ジメチルジスルフィド(DMDS)が検出されたと報告しました。

K2-18bは、地球の8.6倍の質量と2.6倍の大きさを持つ惑星で、液体の水が存在できるハビタブルゾーン内に位置しています。過去の研究で、大気にメタンや二酸化炭素などの炭素系分子や水蒸気が含まれている可能性が示されていることなどから、K2-18bは水素(hydrogen)に富む大気の下に海(ocean)が広がっている「ハイセアン(hycean)」惑星とも呼ばれています。

by Pablo Carlos Budassi

地球におけるDMSとDMDSの唯一の発生源は生命で、主に海洋性の植物プランクトンなどの微生物によって生成されます。研究チームは観測結果を有望視しており、統計的有意性を「3σ(シグマ)」、つまり誤検知の可能性はわずか0.3%と見積もりました。これは、科学的な証拠として認められるのに必要な「5σ(0.00006%未満)」を下回るものの、太陽系外惑星の生命の兆候としてこれまでで最も強力な結果です。

マドゥスダン氏らの研究チームは、以前にもジェイムズ・ウェッブ望遠鏡(JWST)に搭載された近赤外線撮影・連続波長分光分析計(NIRISS)と近赤外線分光器(NIRSpec)を使った観測で、K2-18bにDMSが存在する可能性があることがわかったと発表していました。そして、JWSTの別の機器である中赤外線装置(MIRI)を使った今回の研究で、DMSのさらに強いシグナルと、類似する別の分子であるDMDSの存在を示すシグナルを捉えることに成功しました。

研究チームは、JWSTでさらに16~24時間ほど追跡観測を行えば、有意性を「5σ」に引き上げることも可能であり、自信を持ってK2-18bにDMSやDMDSがあると言えるようになるのもそう遠くないと考えています。

マドゥスダン氏は、発表会見で「生命を発見したと時期尚早に主張するのは誰の利益にもなりません」と前置きした上で、「これは革命的な瞬間です。人類が居住可能な惑星で潜在的な生命の痕跡を目撃したのはこれが初めてです」と述べました。


今回の発表はセンセーショナルですが、地球外惑星で生命が見つかったと主張するには、より多くのデータを得ることが不可欠だとマドゥスダン氏は述べています。

例えば、テキサス州にあるサウスウエスト研究所の惑星科学者のクリストファー・グレイン氏らが2025年4月16日に発表したばかりの論文によると、K2-18bは水の海ではなくマグマの海が広がる過酷な惑星の可能性があり、少なくとも人類が知るような生命が存在するのは到底不可能だとのこと。

また、K2-18bにDMSやDMDSが存在することが証明されたとしても、生命とは無関係な未知の化学的プロセスでそれが発生した可能性は排除できません。そのため、マドゥスダン氏は他の天文学者らと協力し、今回見つかった気体が非生物学的に生成されることがあるのかどうかを確かめるべく、さらなる理論的・実験的研究を進めたいと考えています。

マドゥスダン氏は「数十年後に今を振り返って、『あのときこそ命が息づく宇宙に手を伸ばした瞬間だった』と思い出す日が来るかもしれませんし、この研究結果が転換点となって、『私たちは宇宙で孤独な存在なのか?』という根本的な問いの答えが突然見つかるかもしれません」と語りました。

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