
超特急が5月7日に2nd EP「Why don’t you 超特急?」をリリースした。
“超特急のこれまで”をリスナーに提示する1st EP「Just like 超特急」を2024年4月に発表して以降、各局の音楽番組への出演、大型イベントへの出演、個人個人の活躍など目覚ましい躍進を続けている超特急。新作EP「Why don’t you 超特急?」は“今こそ超特急してみない?”とリスナーを超特急ワールドへと誘う作品で、TeddyLoid作曲の“ダンスボカロ曲”「踊ライナー」、スイートな王道ポップスを響かせるリードトラック「キャラメルハート」、彼らの真骨頂と言える要素が詰め込まれた“超特急流メタル系トンチキ”「メタルなかよし」など、彩り豊かすぎる6曲が収められている。
リリースを記念し、音楽ナタリーではメンバーのリョウガ、タカシ、マサヒロ、ハルにインタビュー。新作の制作秘話や年末年始に行われたアリーナツアーの話題などについて、じっくりと話を聞いた。
取材・文 / 三橋あずみ撮影 / 曽我美芽
超特急の表現の可能性を感じたツアー
──昨年秋のシングル「AwA AwA」(2024年11月)から約5カ月ぶりの新作リリースということで、まずは「AwA AwA」のリリース後、年末年始に行われたアリーナツアー「BULLET TRAIN ARENA TOUR 2024-2025 “Joker”」を振り返れたらと思います。「Joker」は“ジョーカー探し”の謎解き要素を軸にライブパフォーマンスが展開していく構成で、今までにないタイプの衝撃を観る人に与えるようなライブでした(参照:Jokerは誰だ?超特急が豊かな表現力で描いた壮大なミステリー、ツアー最終公演で明かされた衝撃ラスト)。
ハル 超特急が13周年を迎えるタイミングということで、ライブ演出を担当しているユーキくんが数字にまつわるタイトルを考えてくれて。13枚のカードと1枚のジョーカーで構成されているトランプをモチーフにエンドロールまで流れる映画風の演出でライブを見せるというのは、これまでの超特急にはない挑戦だったと思います。ユーキくんはプレッシャーもある中で、各公演ごとに1人のメンバーが“ジョーカー”として物語を表現していく、そしてその裏ではツアー8公演を通してのストーリーも進行していくという演出を考えてくれて。僕的には「こういう演出も素敵だな」と感じたというか、超特急の表現の可能性を感じたツアーでした。
──今ハルさんがおっしゃったように、本編の最後の曲でその日のジョーカーは誰だったのかが明かされ、そのジョーカーによる“ラストダンス”で物語が締めくくられる、という構成でした。1人ステージに残り、自身の演技をもって幕を下ろすという今までにない見せ方に挑戦した感想はいかがでしょう?
マサヒロ 僕は愛知公演の1日目を担当したんですが、何をするかは前日まで決めませんでした。みんなのジョーカーを見すぎても引っ張られてしまいそうだから、あえてほかのメンバーの表現はそんなに見ず、自分の考えるジョーカー、裏表のある感じをイメージして。ただ、“キャメラワーク”は……。
リョウガ ん?(笑)
マサヒロ キャメラワークは大事だから「ここで何をします」というのは事前に伝えておかないと、と思って。急に動いたりすると、カメ……キャメラも追えないから。
タカシ 忘れるならやらんでええ(笑)。
マサヒロ 「ここで回転します」「このあたりで振り返ります」みたいな大まかな動きは共有するために決めていましたけど、表情なんかはもうその場その場で自分の中に落とし込んで、キャメラに捉えてもらいました!
ハル あはははは! 気になるなあ~。
マサヒロ でも本当にキャメラチームが完璧でした。
リョウガ もう、言いたいだけやん(笑)。
──リョウガさんはいかがでしたか?
リョウガ 正直「何しようかなあ」と考える時間で言うと、「ジュブナイラー」で毎回僕がやっていた“意味深ゼリフ”のアイデアを考える時間のほうが長くて。ジョーカー役に関してはあまり考えてなかったですね。でも、前の人の演技とカブっちゃいけないみたいな空気感があって。
マサヒロ そう、なんかあったっすよね。
リョウガ 誰もそんなことは言ってないし言われてもないのに「同じようなことをやっちゃいけない」と、みんな勝手に思いながらやっていたので……。
ハル でも、それがよかった。リョウガくん、ジョーカーのカードを食べましたから。
マサヒロ 1つだけ、「ジョーカーのカードを破く」という動きだけは決まっていたんです。それ以外の、カードを破るまでや破いたあとの行動は自由。で、リョウガくんは口でくわえたカードを破いて。大抵の人は吐き出すと思うんですけど、食べちゃったんですよ。
リョウガ 「これどうしよ、どうしよ!」みたいな、もう頭の中でずっと。「うわどうしよ、ああもう、食べちゃえ!」って(笑)。
マサヒロ でもめっちゃよかったっす。食べた人は初めてだから、みんなすごい盛り上がってた。
──斬新すぎますね。
リョウガ でも、そのあとちょっと落ち着いてきたら「ヤギ」って言われ出して……。
タカシ ヤギジョーカーな。
リョウガ 「うーん、そうなっちゃうか。難しいな」とか思ってましたね(笑)。
ジョーカーがたどる道は僕の花道
──タカシさんはいかがでしたか? タカシさんがジョーカーだった公演は、会場で観させていただいたんです。
タカシ やっ。逆にどう思いました……?
──この日が初見だったのでラストの展開自体に衝撃を受けつつ、ジョーカーというキャラクターを宿しているからこそ表情や仕草に現れているであろう哀しみや不安、安堵といったような機微が、普段の“タカシさん像”からはうかがえないものばかりで。
リョウガ 確かに。だって、タカシは(オープニングの)登場シーンからすでにタカシじゃなかったですもんね。金網のフェンスをバーン!と蹴破って出てきて……。
ハル (胸と肘を張って歩く動きで)モサモサモサ~!って。
タカシ なんでムスカ大佐の歩き方やねん。「どこへ行こうというのかね?」ちゃうねん。
ハル あはははは! 似てる!(笑)
タカシ それはいいとして(笑)、ありがとうございます。確かに自分的にも新鮮なこと尽くしだったなと思うし……僕の中では、ジョーカーに寄りすぎずに“僕らしさ”を表現したいという気持ちがあったんです。誰しもが抱えている、人間の奥底にある深い闇みたいなものを出せたらいいなと思っていたから。だから、ジョーカーがたどる道は僕がこれまで歩いてきた、僕の歴史が詰め込まれた花道。時の流れに重ねるように、センターステージへ向けて進む道を“過去”、そこからメインステージへと戻っていく道を“今と未来”にしようとイメージしたんです。
ハル そうなんだ。すごい。
タカシ これまでの活動を振り返って……13年前、何が起きるかわからない道を歩き出した自分。進んでいく中には別れがありました。それがつらい。でも、うつむいていた顔を上げたとき、みんなが見守ってくれていた。8号車のみんなも、この道の参加者。それを感じて胸をなで下ろして、現状に満足げな表情をする。そこからは希望を持って、未来へ向けて走り出していく……っていうのをざっくりとした流れとして決めて。これを1分ちょいの時間の中でどうにか表現できないかな?と思って、家の廊下でめっちゃ練習しました(笑)。
リョウガ すごいな、練習してたんだ。
タカシ そう、音源流してな。
ハル 偉すぎる……!
マサヒロ すごいなあ。こういう話を聞くと、全員分のラストシーンを改めてちゃんと観たいですよね。9人分の“ジョーカー映像集”、8号車は絶対欲しいと思う。
期待を込めてくれたことがうれしかった
──本当にそう思います。そしてハルさんは、ツアーファイナルでその存在が明かされた“真のジョーカー”という役を担われました。
ハル そうですね。ツアーのコンセプトが決まったときくらいから、自分の役割に関してはなんとなく話を聞いていて。
──この大役を任されたとき、どう思いましたか?
ハル 「あ、僕か」って。誰が真のジョーカーを演じるのか?というのは、メンバーの間でも話題になっていたんです。僕の号車番号である14はトランプにない数字ですし、任されたときユーキくんに言ってもらったのは「ハルは20代になって、これからいろんな意味でジョーカー(切り札)になれると思うから」と。そうやって期待を込めて言ってくれたことが、僕はすごくうれしかったです。
──実際、ステージで“真のジョーカー”を演じてみていかがでしたか?
ハル 僕はみんなと違って、やることが決まっていたんです。ここで傘を投げる、雨に打たれる、カードを見せる、というような感じで。「どうアレンジしようかな?」と考えたりもしたんですけど、もともと決まっていた流れが一番いいなと思ったから動きを付け加えることもなく。あとは表情の演技でどうにかがんばりました。
──エンドロールのあとにハルさんが登場したときの、驚きと悲鳴が入り混じった歓声がすごかったですね。
ハル めちゃくちゃ気持ちよかったです。実は前日のライブ終わりに、僕とユーキくんの2人で本番同様に動きを通してみたんです。そのときもユーキくんが「マジで鳥肌立った。めちゃくちゃよかった」と言ってくれたので、8号車のみんなの反応をすごく楽しみにしてました。実際、あんなに大きな歓声が聞けるとは思わなかったので、うれしかったですね。
──そして、療養中だったタカシさんにとっては、超特急のライブを初めて客観的に観るツアーファイナルだったかと思います。
タカシ そうですね。超特急のライブを客観的に観ることって、普段だったら叶えたくても叶わないことなので不思議な気持ちになりました。みんながこのライブで、「Joker」ツアーの集大成を見せようとしている。ペース配分とか何も考えず、1曲1曲に魂を込めてパフォーマンスしている。僕にとっては、そんなメンバーの姿をしっかりと目に焼き付ける時間でしたね。「超特急のライブって、こんなにカロリーが高いんだ」とすごく満足できるような気持ちはあったけど、その反面では申し訳なさと……うん。とにかくいろんな感情があふれたライブでした。
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踏切を人力で表現するっていう
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