「マタタビ配合」「ノンカフェイン」──異色の特徴を持つエナジードリンク『HICAT Hi-ENERGY(ハイキャット ハイエナジー、以下HICAT)』。
株式会社WinCが展開するこのドリンクは、単に喉の渇きを癒すだけでなく、特定のカルチャーコミュニティ、特にインターネットカルチャーへの強い親和性を意識したブランド戦略を展開している点でも特殊な例と言える。
4月26日(土)・27日(日)に幕張メッセで開催された「ニコニコ超会議2025」での出展も踏まえ、そのユニークなアプローチを見ていこう。
VTuberとの共創が生む、深いエンゲージメント
HICATの戦略を象徴するのが、自社で運営するVTuberプロジェクト「RINNEKO」の存在だろう。「現実世界に疲れた人間が猫の姿となり、第2の人生を歩む」という独特の世界観を持つこのプロジェクトは、HICATブランドと密接に連携している。
既存メンバー「NiBOSHI」に加え、ニコニコ超会議では新メンバー「招来(まねき)ロア」「招来(まねき)シア」がお披露目された。
これは単なるタレント起用や広告宣伝を超え、商品と顧客とを深く結びつけるための核となる部分だ。
HICATはVTuberを、ブランドの世界観を共有し、ファンコミュニティと深く繋がるための”共創パートナー”と位置付けているという。
VTuber自身の活動(歌や配信など)とHICATを結びつけ、イベントでの交流企画(例:超会議での「おしゃべり券」)や限定グッズ展開を行うことで、ファンはHICATブランドに対し、単なる飲料以上の感情的な繋がり、いわば”推し”に近い感覚を抱くのではないか。
VTuberファン層は、ゲーム実況や長時間配信の視聴など、HICATがターゲットとするユーザー層と親和性が高く、この連携は極めて合理的な戦略と言えるだろう。
超会議にて販売された「NiBOSHIスターターセット」/ © 株式会社ライスカレー
同日販売された「招来ロアスターターセット」/ © 株式会社ライスカレー
同様の「招来シアスターターセット」/ © 株式会社ライスカレー
「夜でも飲める」強みを活かし、ゲーム・配信シーンへ浸透
HICATが推奨する飲用シーンを見てみると、「ゲームや配信のお供に」「勉強や仕事の前に」といった項目が並ぶ。
これは、長時間集中したい、あるいは夜型のライフスタイルを送るネットカルチャーの住人たちの姿を明確に意識していることの表れだ。ここで重要なのが「ノンカフェイン」という特徴である。一般的なエナジードリンクに含まれるカフェインは覚醒作用が強い反面、摂取時間帯によっては睡眠への影響が懸念される。
しかしHICATなら、深夜のゲームセッションや配信作業中でも、カフェインを気にせずリフレッシュメントを得られる。これは明確な差別化要因だ。
さらに、「仕事猫」のようなインターネットミームとして人気のキャラクターとのコラボレーション(先のニコニコ超会議でもコラボグッズが販売された)も、ネットカルチャーへの親和性を高める施策と言えるだろう。
紫色の液体と銀のラベルという、メタバース空間やデジタル感を意識したとされる個性的なデザインも、感度の高いネットユーザーの心を掴む要素かもしれない。
フルーティーな味わいや、蓋を開けた瞬間のハーブの香りといった、純粋な飲料としてのこだわりも、もちろんリピーター獲得の基盤となっているはずだ。
© 株式会社ライスカレー
HICATは、最初からマス市場を狙うのではなく、VTuber、ゲーム、配信といった特定のネットカルチャーコミュニティに深く根差すことで、熱量の高いファンを獲得し、独自のブランドポジションを築こうとしている。
それは、単に商品を売るのではなく、カルチャーの一部として受け入れられ、共に成長していくという、新しい時代のブランド戦略の姿なのかもしれない。
「飲む」という行為を通じて、好きなカルチャーへの帰属意識や楽しみを増幅させる──HICATの挑戦は、飲料市場における新たな価値創造の試みとして、今後も注目していくべきだろう。
Top image: © 株式会社ライスカレー
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