毎年春になると、多くの人々が花粉症に悩まされるが、日本の花粉症は杉花粉が主な原因とされている。
戦後、木材需要を満たすために杉が大量に植樹されたが、需要の減少に伴い伐採が進まず、杉が過密状態となり、花粉の飛散量が増加。近年では、花粉症対策として杉林を伐採しようという取り組みも進められているが、杉を伐採することで土壌の保水力が低下し、洪水や土砂災害のリスクが高まる危険性がある。また、伐採後に適切な植樹が行われない場合、植生の多様性が回復せず、一部の外来種が繁殖してしまうことも懸念される。自然界は繊細なバランスの上に成り立っており、単純に杉林を減らすだけでは、本質的な解決には至らない。
こうした課題の中、ミドリクNbS株式会社は、自然資本や生物多様性の状態を可視化・診断し、持続可能な森林管理や生態系の回復を支援するデータ基盤を提供している。人工衛星・ドローンや各種LiDAR・AI技術を活用し、取得される森林の3次元データを元に、樹種の判別や炭素固定量の推定を行っており、自治体や研究機関、企業の意思決定を科学的に支えるツールとなっている。
近年では、花粉症の課題に関連して、森林の樹種構成や高齢化の状況を把握し、将来的な管理方針を検討するうえでの基礎情報として注目されつつある。こうした情報の活用により、地域ごとに適した植生の見直しが検討されることで、花粉症対策を考慮した管理計画の促進にもつながるかもしれない。科学的な知見や地域の合意形成を前提に、大学・自治体・NPOなどとの連携を通じて、森林管理の高度化と環境保全の両立が図られることが期待されている。