

電話は、仕事をする上で欠かせないコミュニケーションツールの一つだ。しかし近年、電話に苦手意識を持つ人が増えているという。どうすれば電話が怖くなくなるのか。押さえておきたい対応のコツを『電話恐怖症』(朝日新書)の著者が解説する。(日本メンタルアップ支援機構代表理事 大野萌子)
「電話が苦手な人」が増えている?
電話は難度が高いコミュニケーション
「電話に出るのが嫌なので会社を辞めたいです」――。
この言葉を退職理由として初めて耳にしたのは、今から10年前、2015年のことでした。
「○○が嫌だ」という苦手意識や嗜好の違いなどは誰にでもあることですが、日常生活や業務遂行に支障をきたすとなると、これは立派な問題となります。
当初は、その理由に驚きを隠せませんでしたが、今となっては大いにうなずけます。
そもそも、電話というツールを使用するためには、かなり高度なスキルが必要なのです。
なぜなら、私たちは、相手とやり取りをするときに、視覚情報にその半分以上をゆだねています。電話では、その視覚情報が皆無であり、それを補うためのコミュニケーションスキルが要求されるのです。
コミュニケーション研修の一環で、つい立てを立てて、声だけで指示しながら図形を置いたり、実際の絵を見せずに口頭の指示だけで絵を描いてもらったりすることがよくありますが、これが本当にうまくいきません。
「まず丸を1つ描いてください」と指示されたところで、どこにどんな丸を描けばいいのか、自分の判断にゆだねられてしまうのです。たとえ、「小さな」という形容詞がついたとしても、小さいにも個人的な感覚の差異があります。指示を出す方と受け手の感覚が、ピタリと一致することはありません。
お互いわかったつもりになって作業を進めていき、出来上がったものを見て愕然とするわけです。ゲームなら笑って済ませられるかもしれませんが、実際の業務ではそうはいきません。
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