先だって、マウスコンピューターがゲーミングブランド「G TUNE」フラグシップモデルの新型オリジナル筐体を披露した。PCにおいて筐体は見た目だけでなく、使い勝手や拡張性なども左右する大きな要素だ。今回、同社担当者に新型筐体について話をうかがう機会を得た。新型筐体設計のこだわり、新型筐体で可能になることなど、気になる点を根掘り葉掘り聞いてきた。

 インタビューを受けていただいたのは、開発・購買本部製品部エキスパートの林田奈美氏と、開発・購買本部開発部リーダーの横関昭浩氏の2名。なお、インタビューは3月に実施しているので、ビデオカードなどの状況はインタビュー時点の話となる。

G TUNEを印象付ける赤。普遍的なかっこよさを目指したスリットデザイン

Q:今回、新型筐体をリリースしましたが、どのような経緯でリフレッシュしたのでしょうか。

林田:まず、これまでを振り返ると、G TUNEの源流は、「TUNE」ブランドで2002年に発売したゲーミング向けハイエンドモデルでした。そして2004年、TUNEのゲーミングブランドという位置付けで「G-Tune」ブランドが生まれ、主力のNEXTGEAR、ハイエンドのMASTERPIECEといったシリーズがここから始まりました。

開発・購買本部 製品部 エキスパート 林田奈美氏

横関:当時、ゲーミングの筐体でも今のように「ブラック」を前面に打ち出すものではありませんでした。ただ、2000年代半ばから後半になるとゲーミング=ブラックというイメージが定着し始め、G-Tuneでもブラック筐体を採用するようになりました。

 独自デザインを採用したのが2010年ごろです。ケースメーカーとの付き合いも増え、「まだ世の中に出ていない形」の筐体を作っていこうじゃないかという流れがあって現在に至っています。

開発・購買本部 開発部 リーダー 横関昭浩氏

林田:そして今回の新筐体開発は、G TUNEが20周年を迎えた節目ということも1つ理由として挙げられますが、筐体の変更についてはもう少し前から検討していました。と言うのも、Intel Coreの第12世代、NVIDIAのGeForce RTX 40シリーズくらいから、旧筐体ではサイズや冷却の面で支障が出始めていたので、それに対応したかったというのが大きな理由です。

左が新型筐体、右は旧筐体

Q:外観、デザインテーマについてお聞かせください。

林田:旧筐体にある赤のラインのように、G TUNEのイメージカラーは赤です。この赤をキーポイントにしたいということで、赤いライティングを採用しています。ゲーミングPCは中身を見て楽しむという流れもあり、筐体の中を赤いLEDで照らすことでG TUNEを強く印象付けるものにしました。

 フロントの重厚感あるスリットデザインについては、普遍性をイメージしています。フロントはPCケースの顔です。何年も使い続けられる中で、いつ見てもかっこいい、時代の流行り廃りに左右されない普遍的なデザインをコンセプトにしました。スリットはアルミ合金製です。シャープで素材感もあって落ち着いたデザインは特に力を入れたところです。

 全体で見れば、光っているし存在感もあるのですが、過度に主張しない、落ち着いた高級感を感じさせるものに仕上げています。これぐらいが落ち着くよねという、大人のデザインを考えています。

 フロントパネルから見て左上にはG TUNEロゴ、その後ろにヘッドセットホルダーも備えています。今ではほとんどの方がヘッドセットを着けてゲームをプレイされます。そしてI/O関連を天面にまとめています。シャッターを設けて、不使用時はホコリが入らないよう閉じられる設計にしています。

高まる冷却要求、大型化するビデオカードに対応。BTO PCならではの設計も

Q:冷却やメンテナンス性について教えてください。

林田:ゲーミングPCは安定性が重要です。冷却性能を向上させるため、前面スリットは意匠的にそうしているだけではなく、当然エアフローを取り込む設計になっています。

 そして、昨今はCPUもGPUも熱量が大きくなっているので、CPUにもGPUにも水冷ユニットを搭載できるようになっています。前面に12cm角×3面、天面にも12cm角×3面のラジエータ搭載スペースを設けました。

前面パネル裏に12cm角×3面(36cmクラスのラジエータにも対応)

天板パネル裏も12cm角×3面(36cmクラスの簡易水冷CPUクーラーで使用)

横関:旧筐体も好みのデザインなのですが、ガラスパネルのためフロントを吸気に使えないんです。開発当初は手前味噌ながら、先見の明があるなと思うほどいろいろと搭載できたのですが、直近2年ほどは冷却に苦労していました。

 そして、この筐体を開発する中で、エアフロー的にはシンプルが一番で、「前から入れて後ろに出す」のが最適だろうと改めて思い、そのように設計しました。

林田:フィルタは天板、前面、右側面、底面に備えています。底面からも吸気する設計なので、そこはスライド式の簡単に着脱できるフィルタを採用し、ほかの部分はカバーを外してメンテナンスできます。

底面フィルタは前面からスライド式に着脱できる

パンチング仕様の天面カバーを外すと、その裏にマグネット式フィルタ

Q:ビデオカードの対応サイズはどのくらいでしょうか?

横関:設計上380mmまで搭載できます。GeForce RTX 5090で350mmという製品を見かけましたが、それより大きくなってもカバーできる筐体サイズです。

林田:汎用性の高い筐体設計は重要です。

Q:重量級ビデオカードのたわみ対策はいかがでしょうか。

横関:ビデオカードホルダーを標準装備しています。

Q:(実機を見て)ネジ穴によってかなり細かく位置調整できるようになっていますね。

長さ、高さ、厚みの違うさまざまなビデオカードに対応するビデオカードホルダー

横関:ここはポイントなんです。ビデオカードはカードサイズや電源コネクタの位置が一律でないため、こうしておかないと汎用性が確保できないのです。旧筐体には途中からカードホルダーを追加しましたが、設計の制約で2ポジションしか選べなかったのです。それにより搭載できるビデオカードの選択肢が狭まってしまっていました。

 ちなみに、市販のカードホルダーは下から支えるものが一般的です。しかし、製造したPCの輸送時は、上下、左右、前後の動きまで想定されます。そこで、下から支えるだけでなく上からも挟んでしっかり固定しています。

BTO PCでは輸送事故防止にネジ固定が重要と言う

Q:GeForce RTX 50シリーズでは消費電力も増えました。電源はどのように選んでいますか。

林田:GeForce RTX 5080、5090搭載モデルで1,200W、GeForce RTX 5070 Ti搭載モデルで850Wを採用しています。

 弊社のGeForce RTX 5090搭載モデルは少し発表が遅れました。それはビデオカードが手に入らなかったのもありますが、電源周りを時間をかけて検証していたからという理由もあります。

横関:GeForce RTX 5090はTGP 575Wという仕様です。弊社では検証時に最大負荷をかけて計測する決まりになっています。実際に負荷をかけてみると、それより高い値が出ていました。CPUのブーストと合わせると、システム全体では1,000Wを少し超える程度になります。BTOカスタマイズにも対応しなければいけませんし、お客様自身で後日何かを追加搭載されるかもしれませんので、マージンを持たせる必要があり、1,200Wの電源を搭載するに至りました。

底面に電源チャンバーを設けている。ATX 3.1準拠電源はケーブルも太く、これを収めるために裏面配線スペースを拡大しているとのことだ

Q:ストレージ拡張性についてはいかがでしょうか。

林田:まず前面のシルバーライン部分に光学ドライブを搭載できます。今はゲームでも光学メディアを使うことは少ないと思われますが、DVD、BD、過去に自分で制作したバックアップなど活用される方もいますので、そうしたニーズにも対応できるようにしています。

 3.5インチシャドウベイは電源チャンバー部分に1基搭載しています。新しいマザーボードはM.2 SSDを3基搭載できるものを採用しています。今は外部ストレージも充実していますから、通常3.5インチベイは不要でしょう。ただ、G TUNEフラグシップというモデルで「載せられないという選択肢はない」というところで、1ベイのみですが用意しています。

新筐体採用モデルは早くも注文殺到。続くミドルレンジ筐体にも注目

Q:新型筐体を投入してからの売れ行きはいかがでしょうか。

林田:新デザインも注目いただき、おかげさまで好評です。高価なハイエンドモデルを投入する際は、過去のデータからこのくらい売れるだろうという予想を立てるのですが、今回はそれをはるかに超えるご注文をいただいていまして実際のところ驚いています。

 最近発売された人気タイトルが高スペックを要求することや、生成AI需要もありますし、買い替えるなら何年も使える高スペックなものが欲しいという方も多くいらっしゃいます。こうした要素が一度にすべて重なった印象ですね。

Q:新筐体でスチール側板や他色のLED、ホワイトモデルの展開はお考えですか。

林田:現在のモデルについてはこのままのデザインで行く予定です。まずはこのイメージが浸透してくれればと思います。ただし、今後microATXモデルの筐体についてもリニューアルを予定しています。高まる冷却要求、カードサイズについてはこちらも同様ですからね。そしてそちらではホワイトのバリエーションも検討しています。

Q:ありがとうございました。



フラッグシティパートナーズ海外不動産投資セミナー 【DMM FX】入金

Source link