
アスパルテームは砂糖の約200倍もの甘さを持つ甘味料であり、カロリーを抑えつつ甘さを出すことができるため、低カロリーを売りにするさまざまな清涼飲料水やお菓子に含まれています。そんなアスパルテームは本当に安全なのかどうかについて、イギリスのエッジ・ヒル大学で栄養および健康プログラムのリーダーを務めるヘーゼル・フライト氏が解説しました。
Aspartame: the artificial sweetener is calorie-free but not risk-free – a nutritionist explains
https://theconversation.com/aspartame-the-artificial-sweetener-is-calorie-free-but-not-risk-free-a-nutritionist-explains-254318
砂糖は非常においしいものの必須栄養素を含んでおらず、カロリーの割に栄養がほとんどないエンプティカロリーです。砂糖の過剰摂取は2型糖尿病や心臓病、虫歯などの健康問題と関連しているため、保健当局は砂糖の摂取量を減らすよう人々に呼びかけています。
たとえば、世界保健機関(WHO)は砂糖の添加量を1日に摂取するカロリーの10%未満にすることを推奨しており、これは平均的な成人でおよそ1日あたり25g程度となります。しかし、500mlの甘い炭酸飲料には50~60gもの砂糖が含まれているといわれており、甘い物好きな現代人がこの基準を超えないようにするのはかなり難しいとのこと。
そこで注目されているのが、アスパルテームをはじめとするほとんどカロリーゼロの甘味料です。これらの甘味料は多くのダイエットドリンクや低カロリー食品に含まれており、体重や血糖値の管理に役立つといわれていますが、アスパルテームなどは健康への悪影響が懸念されています。
アスパルテームは1965年に発見された甘味料で、砂糖の180~200倍もの甘さがあります。記事作成時点では各国の100を超える規制機関から使用が承認されており、6000種以上の食品・飲料と600種以上の医薬品に含まれていると推定されています。
アスパルテームは低カロリーな上に血糖値を上昇させないため、2型糖尿病患者にとって好ましい砂糖の代替品といえます。しかし、メタボリックシンドロームや2型糖尿病のリスクと関連しているという研究結果もあるため、砂糖をそのままアスパルテームに置き換えるには懸念が残るとのこと。
また、アスパルテームと同じくカロリーゼロ飲料などに使われるスクラロースを用いた研究では、「スクラロース入りの飲料を摂取すると血糖値もホルモンレベルも変わらないが、砂糖を摂取した場合に比べて空腹感が大きくなる」という結果が示されました。これは、アスパルテームなどの人工甘味料が空腹感を増し、食欲を増進して体重増加につながる可能性があることを示唆しています。
カロリーゼロの人工甘味料は脳をだまして空腹感を増大させるとの研究結果 – GIGAZINE
人によってはアスパルテームの摂取によって頭痛・めまい・気分の変化といった副作用を経験することがあるほか、アスパルテームを神経変性疾患や脳卒中、認知症などと関連付ける証拠も浮上しています。人間の被験者にアスパルテームの多い食事を与えた研究では、気分の悪化や抑うつ症状などの悪影響が出たことが報告されています。
特にアスパルテームの摂取に気をつけなくてはいけないのは、フェニルアラニンというアミノ酸がうまく分解できない先天性疾患・フェニルケトン尿症を持つ人々です。アスパルテームは脳内のフェニルアラニンとアスパラギン酸の濃度を上昇させるため、フェニルケトン尿症の人々はアスパルテームを完全に避けなくてはなりません。他にも、アスパルテームは胎盤の構造と機能に影響を与える可能性が研究で示唆されているため、妊娠中の女性もアスパルテームの摂取を避けるべきだとフライト氏は指摘しています。
アスパルテームやその他の人工甘味料が腸内細菌叢(そう)を混乱させる可能性を示唆する証拠もあり、これが消化器系の健康や免疫機能に悪影響を及ぼし、感染症やその他の健康問題のリスクを高める可能性もあるとのこと。
また、WHO傘下の国際がん研究機関(IARC)は2023年7月、アスパルテームを「ヒトに対して発がん性がある可能性がある」とされるグループ2Bに分類しましたが、1日の許容摂取量については変更していません。
WHOが人工甘味料「アスパルテーム」を発がん性物質に分類しようとしている – GIGAZINE
フライト氏は、「アスパルテームは砂糖不使用の魅力的な解決策を提供するかもしれませんが、リスクがないわけではありません。WHOは体重コントロールのために砂糖以外の甘味料を使用しないよう勧告しており、神経系の問題から腸の健康への懸念に至るまで、アスパルテームと慢性疾患との複雑な関連性が研究によって明らかにされ続けています」と述べました。
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