SFドラマに登場するような家庭用ヒューマノイド(人型)ロボットは、実際に動作するハードウェア面だけではなくリアルタイムで情報を処理するソフトウェア面がAI技術の進化と共に発展したことで現実味を帯び、すでに多くの企業が開発に着手しています。

Invasion of the Home Humanoid Robots – The New York Times
https://www.nytimes.com/2025/04/04/technology/humanoid-robots-1x.html

Invasion of the home humanoid robots – The Economic Times
https://economictimes.indiatimes.com/tech/technology/invasion-of-the-home-humanoid-robots/articleshow/120036383.cms

2017年にGoogleの研究者がTransformerアーキテクチャを発表し、2018年にBERTGPTなどの大規模言語モデルが登場してからAIの技術は急速に発展し、AIは今やエッセイの執筆やプログラミングを自動でこなすまでになりました。テキストや画像、動画など複数の情報ソースを統合的に処理できるマルチモーダルモデルが生まれたことで、日常生活のタスクを人間のようにこなすことができる家庭向けのヒューマノイドロボットも開発されています。

1X Technologiesは、2014年にベアント・ベルニック氏がノルウェーのオスロに設立したAIロボティクス企業で、人間のような動きや行動が可能なヒューマノイドロボットの開発を専門としています。ベルニック氏は「汎用(はんよう)的なロボットを人間と共存させ、人類を向上させる」というビジョンを掲げており、1X Technologiesが最初に開発したロボット「EVE」はエレベーターやキーパッドの操作、ドアの開閉など、工場や企業での使用が想定されています。

1X Technologiesは、2023年にOpenAIとTiger Globalが主導するシリーズA2資金調達ラウンドで2350万ドル(約34億円)を、2024年1月にEQT Venturesが主導するシリーズB資金調達ラウンドで1億ドル(約144億円)を調達し、第2世代ヒューマノイドロボット「NEO」の市場投入を計画しました。

NEOは身長167cm・体重30kgで、人間と同じように動く手足を持ち、重量最大75kgを持ち上げることができます。以下のムービーは、2025年2月に発表された改良版の「NEO Gamma」で、家庭内での使用に適したデザインやAIを特徴としています。

Introducing NEO Gamma | Another Step Closer to Home – YouTube


また、NVIDIAのロボット研究機関であるNVIDIA GEAR Labとも共同開発を進めており、NEO GammaがNVIDIAのジェンスン・フアンCEOに革ジャケットをプレゼントする動画も公開されています。1X Technologiesは2025年末までに、NEO Gammaを数百から数千の家庭でテストする計画を立てており、実世界でのデータ収集とAIモデルのトレーニングを進める予定です。

1X & NVIDIA Research Collaboration – YouTube


ヒューマノイドロボットの開発を目指しているのは1X Technologiesだけではありません。たとえばイーロン・マスク氏が率いるテスラも、「Optimus」と呼ばれる人型ロボットを発表しました。

テスラが人型ロボット「Optimus」の第2世代を発表、「第1世代より30%速く歩く」「指の動きが超なめらか」「踊れる」など性能を示すムービーも公開 – GIGAZINE


ニューヨーク・タイムズによれば、記事作成時点で50社以上のスタートアップがヒューマノイドロボットを手がけており、2015年以降にヒューマノイドロボット開発企業が受けた投資総額は72億ドル(約1兆円)に達しているとのこと。また、2023年におけるヒューマノイドロボット産業全体への投資額は、合計で16億ドル(約2300億円)を超えたそうです。なお、この16億ドルという金額にはテスラのOptimusへの投資額は含まれておらず、ニューヨーク・タイムズはヒューマノイドロボット産業への投資熱が非常に高まっていると指摘しています。

1X Technologiesやテスラをはじめとする企業は、ヒューマノイドロボットが家事や倉庫作業、工場労働など、人間が行っている多くの物理的労働を代替できる未来を描いています。家庭やオフィス、倉庫など、人間のために設計された空間に対応するためには、人のように歩き、曲がり、物をつかむことができるロボットが必要とされます。

1X TechnologiesのNEOは、物理シミュレーター内のバーチャル空間で歩行やバランスの取り方を学習し、それを現実の機体に反映させることで歩行能力を獲得しています。これにより、押されたり物体を避けたりしても倒れない安定性を持ち合わせているものの、それでもまだ不安定な場面は多く、家事のような複雑な作業に関しては完全自律ではなく、ムービーでは遠隔操作に頼っているそうです。


それでも、NEOは記事作成時点で、洗濯物の出し入れやカウンターの拭き掃除、冷蔵庫からのボトルの取り出しといった作業を実演しています。これらの作業には、ロボット本体に搭載されたカメラやセンサーを通して得られるデータが活用され、AIがタスクを学習していきます。1X Technologiesは、ユーザーの家庭内データの扱いについて透明性を重視しており、遠隔操作を行う際にはアプリでの同意を必須とし、収集データも24時間は使用されず、削除依頼も可能だとしています。


なお、NEOのようなヒューマノイドロボットが将来的に「家政婦や清掃スタッフなど、家庭労働者の仕事を奪うのではないか」という懸念もありますが、アメリカ家事労働者同盟(NDWA)のアイ=ジェン・プー会長は、「ヒューマノイドロボットが家庭内の重労働や危険を伴う作業を担うことで、人間の労働者がより人間らしい、心のこもったケアなどに集中できる環境が整うでしょう」と述べており、人間とヒューマノイドロボットの共存に前向きな姿勢を示しています。

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