過去10年以上にわたり、大西洋をまたぐ資本の流れは一方通行で、ドル高が止まらずユーロは大きく後れを取っていた。しかしここにきて、大口投資家らは「潮目が変わりつつある」と見ている。
ユーロが今年、20年ぶりの好調な値動きとなる方向にある中、アムンディなどの資産運用会社は弱気から強気に転換。1999年の導入以降でめったに見られなかったようなユーロの復活が進行している。
トランプ米大統領が進める世界貿易体制の刷新は、欧州の政策当局者らにとっては長年待ち望んできた機会となった。つまり、ユーロが危機に陥りやすい分裂した地域の通貨ではなく、強く安定した経済大国を支える通貨として見なされる好機だ。
貿易摩擦を巡る不透明感が続く中でも、アムンディのアンドレアス・ケーニッヒ氏ら投資家は、4月初旬の波乱の数週間に始まった流れが簡単には巻き戻せないと見る。ユーロは先月、1ユーロ=1.15ドルと、2021年終盤以来の高値をつけた。
「これは構造的な変化であり、想像以上に長く、かなり先まで続く可能性がある」とケーニッヒ氏は述べた。

ただ、こうした見方にはリスクもある。今年1月までの状況から急転換しているためだ。欧州には依然として多くの問題が残っている上、米国が英国や中国などと貿易交渉を進めている中で、トランプ政権の政策の今後の行方は不透明だ。

マルセイユ港に並ぶ新車
Photographer: Jeremy Suyker/Bloomberg
それでも、欧州資産に流入する可能性のある投資マネーの規模は、軽視できない。過去15年間、欧州の投資家たちは高利回りや成長力を求めて米国に数兆ドル規模の資金を投じてきた。仮にその一部でも逆流すればユーロには大きな影響を与え得る。
一方で、フランスのマクロン大統領をはじめとする政治家らは、外貨準備におけるユーロのシェア拡大を目指している。現在、世界の中央銀行や公的機関が保有する準備通貨のうち、ユーロの割合は20%にとどまる。これに対してドルは約60%と、長年にわたり圧倒的なシェアを維持してきた。
ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズのマクロ政策研究責任者エリオット・ヘントフ氏は「世界は全体的に米国への依存が非常に大きかった。今後はその比重が見直されていくだろう」と述べ、「欧州がこの分散の恩恵を受けることは、間違いない」と予想した。

原題:Traders Bet the Euro’s Ascent Is a Tidal Wave in the Making(抜粋)