今やPC/コンソール/モバイルそれぞれのプラットフォームでサバイバルジャンルの作品は定着していて、多くのプレイヤーがさまざまな世界を舞台にサバイバルを楽しんでいます。
Game*Sparkでは【クラフトサバイバル名鑑】として、同ジャンルが好きな筆者が、定番作品を中心にクラフトサバイバルジャンルの作品の魅力を紹介・解説しています。今回紹介するのは、2022年11月18日に正式リリースされた異世界砂漠サバイバル『Starsand』です。
砂漠マラソンに参加したら異世界にワープ!?
Toplitz Productionsがパブリッシングを務める『Starsand』は、インディーゲーム開発スタジオTunnel Vision Studioが手がけています。同社はイタリアに拠点を置く小規模なスタジオで、これまで3DグラフィックやVRゲームなど、多くの作品を制作しています。
『Starsand』は2020年にティザー映像が公開され、2021年に2度の体験版配信を経てPC向けの早期アクセスがスタートしています。物語は、主人公が過酷な砂漠マラソン競技中に砂嵐に巻き込まれ、周囲に人がいない、見たこともない砂漠にテレポートしたことから始まります。
プレイヤーはオープンワールドの砂漠を探索しながら、クラフトや拠点構築、戦闘などを行っていきます。過酷な環境の砂漠を生き抜くため、オアシスを見つけ、食料を確保し、突如として現れる“脅威”に立ち向かうための方法を探し、元の世界に戻る方法を探し出していきます。
ゲームは早期アクセス期間中にラクダやワニといった動物、砂地を滑り降りるサンドボードの実装をはじめとした、さまざまなコンテンツを追加。およそ1年間の早期アクセス期間を経て2022年11月18日に正式版をリリース、同時にコンソール版の展開も行われています。ただ、残念ながらすでに開発終了状態で、予定していたマルチプレイなどの要素は今後実装される見込みはないようです。
絶望的な砂の世界にようこそ
本作の物語は、主人公が巻き込まれた砂嵐の中で、見つけた民家に避難するシーンから始まります。なんとか安全な場所に着いたことで緊張が解けたのか主人公は気を失いますが、その背後で「キーン」という不思議な音と共に、何処か別の場所へと飛ばされてしまいます。
ゲーム内ではまず、チュートリアルに従って、素材の収集やクラフト、砂漠で生きるための水の確保、調理、セーブの仕方などのサバイバル術を学んでいきます(オプションでオン/オフ可能)。ゲームとしては、木を切るには斧、岩を砕くにはツルハシが必要な、比較的オーソドックスなシステムの作品です。
丸太を切れば枝に。
個人的にはチュートリアルを含めた序盤の導線が優秀なゲームだと思っています。最初の家から木が見え、木に近づくと最初のオアシスが見えるマップデザインは、過酷な世界を生き抜くための可能性をプレイヤーに提供しています。マップに関しては、制作が“ランダム生成ではない理由”を開発初期に紹介しています。
昼は高温、夜は低温になる砂漠の気候を生き抜くためには、日陰で休む、水に入る、焚き火を用意するなどの温度管理が重要です。もちろん飢えや渇き、体力などのステータスにも気をつけなければなりません。どこを見ても砂が広がる世界では、ちょっとの油断が死につながってしまうのです。
オアシスや流水を見付ければ安全な水を確保できますし、砂漠に生息するカエルや野生生物を倒せば肉も手に入ります。また、本作は木に登ることができる割と珍しいシステムを採用していて、切り倒すことなくヤシの実なども入手できます。資源の復活は早いので、良い土地さえ見つかれば、生活はある程度安定します。
栽培もできます。最初の水ボトルがありがたい。
自分で地図を作る面白さ
『Starsand』には地図機能がありますが、最初に書かれているのは開始地点の家のみです。マップ画面では、発見したオアシスや廃墟などのアイコンを置きながら自分自身で地図を開拓していく必要があります。オアシスの場所が複数わかっていれば、万が一の避難場所にもなります。
ただし、プレイヤーは初期状態で方角もわかりません。マップにクラフトした「目印」を設置することで、地図に矢印と位置が表示されるので活用しましょう。目印は壊れると地図から消えてしまいますが、置いたアイコンは消えないので、少しでも発見があったらチェックしておくことが大切です。
廃墟や遺跡ではクラフト・建築レシピを入手できますし、新しい土地によってはラクダなどの生物を発見することもあります。ラクダは餌を与えてペットにすることで騎乗可能で、探索や生活のクオリティを大幅にアップさせてくれます。まずはラクダを探すことが『Starsand』のポイントと言っていいかもしれませんね。
この世界には他の住人がいないものの、さまざまな生活跡や巨大なピラミッドといった遺跡も残されています。また、遺跡などで「アーティファクト」を見つけると、この惑星で起きた過去の物語などを閲覧できます。それによると、この世界には過去から人類と争ってきた恐るべき存在がいるようです……。
恐るべきエイリアンに立ち向かえ
本作は資源の復活が早いため、自然豊かなオアシスでの生活は物資の安定が望めます。しかし、過酷すぎる砂の惑星では、1ヶ所でゆったりと生活することは許されません。ゲームが進むことで、この惑星で人類を脅かしてきた「エイリアン」の襲撃が始まるのです。
襲撃頻度は2日に1回で、襲撃前には事前に地面が大きく揺れる警告があります。エイリアンは巨大な虫のような見た目で、砂の中を潜りながらプレイヤーに襲い掛かってきます。1匹くらいなら石斧でも倒せますし、弓や槍があればもっと簡単に倒せるでしょう。しかし、彼らは人類の天敵です。
エイリアンは“1つの場所に長く留まっている”ことで、襲撃数が少しずつ増えていくのです。そのため、ゲーム内では罠や装備を揃えて襲撃に対抗するか、定期的にいろいろな場所に移動して襲撃数自体を減らすことが求められます。本作は死んだらセーブからやり直しなので、定期的にセーブする癖をつけましょう。
このエイリアン襲撃はフォーラムでも多くの意見が出ている要素で、これまで出現数の調整なども行われていました。また、開発としてもゲーム開始時の設定でエイリアンの襲撃がないプレイでも、ゲームは問題なく楽しめるものだと紹介しています。
ワニや砂嵐などの脅威も。ワニは矢で倒せる。
エイリアンの存在はゲーム内の重要なファクターなのですが、正直サバイバルとして襲撃はあまり楽しめません。強力な設備で対抗はできますが、初期状態では解放されていないレシピも多く、慣れるまでプレイヤーを悩ませる要素でもあります。ゆったり建築や冒険を楽しみたければ、いっそオフにしてしまいましょう。
『Starsand』では、未知の砂漠を舞台にした過酷なサバイバルを楽しめます。温度対策や飢え、渇き、危険な野生動物との戦い、そしてエイリアンの襲撃と、慣れるまでは一日一日を乗り越えるだけで手一杯です。その中で必死に地図を作り、ラクダに乗って砂漠を走り、少しずつ謎を解き明かしていく楽しさは、砂漠という舞台を活かした魅力に溢れています。
とりわけ地図を作っていくのは面白い要素で、位置と方角を示す「目印」アイテムの存在で難しくなりすぎないのも嬉しい部分。ゲーム開始時の設定で方角表示することも可能です。エイリアンに関する項目やサバイバル管理に関する難易度も細かく調整できるので、自分なりのカスタム世界で自由に遊べます。
夜明けはどこの世界でも美しい。
本作でおすすめしたいのが、砂漠を旅する圧倒的な“砂”感です。どこまでも続きそうな灼熱の砂漠を歩き、オアシスや遺跡を見つけたときの喜びは特筆もの。これらのマップ配置も絶妙で、ゲーム全体が“過酷だけど難しすぎない”というゲームデザインです。
装備のアンロックや敵の数など、コンテンツの広がりが遅いという点はありますが、油断すればすぐに乾いてしまう「砂漠でサバイバル」というコンセプトはたっぷり楽しめる一作です。日本語にも対応していて、壁に書かれた謎のメッセージなどもしっかりと翻訳されていますよ!
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