ノジマが2025年5月7日に発表した2024年度(2024年4月~2025年3月)の連結業績の中で、VAIOの2024年度第4四半期(2025年1月~3月)業績を公表。売上収益は176億9,900万円、経常利益は8億5,400万円となった。
ノジマは、2025年1月6日にVAIOの買収を完了。今回の決算では、新たなセグメントである「プロダクト事業」としてVAIOの業績を明らかにした。
法人向けVAIOノートが好調
ノジマ 取締役兼執行役 財務経理部長の幡野裕明氏は、「2025年10月のWindows 10のサポート終了が迫り、PCの買い替え需要を背景に市場全体が成長しているが、VAIOは市場の成長率を上回るペースで販売が急伸している。特に法人PC向けの事業が好調。ノジマ店舗での販売拡大や、グループ内の連携も開始している」と述べた。
VAIOは、売上の9割近くを法人向けPC事業が占めており、直接商流および間接商流のいずれもが販売が好調に推移しているという。中でも、2024年10月に発表したハイエンド向けモバイルPC「VAIO Pro PK-R」(個人向けはVAIO SX14-Rとして販売)は、1,000台単位での導入が多くの企業で続々と進んでいるという。また、ノジマ店舗での販売拡大や、コネクシオなどとの協業による法人顧客の開拓にも乗り出しているようだ。
VAIOの2025年度(2025年4月~2026年3月)の業績見通しについても言及。「第4四半期実績の売上高176億円を4倍にすると700億円を突破するが、2025年度はそこまではいかない。だが、年間500億円は超えていくことになる」との見方を示した。
VAIOは2024年度計画として500億円突破を目指していた。従来は5月末決算であったため直接比較はできないが、この実績を上回ることについては手応えを示した。
国内PC市場は、2025年10月のWindows 10の延長サポート終了に向けて、上期にはPCの買い替え需要が高まるものの、下期は反動によって落ち込み、全体としては法人向け個人向けともに、前年並になると見ている。
「VAIOは国内で設計開発を行ない、国内で生産をしている。経済安全保障の観点からもVAIOに対する注目が集まっており、法人からの需要が強い。為替の影響を受けながらも増収増益になるだろう。これまでほとんど扱っていなかったノジマの店舗において、全店展開を開始しており、差別化されたPCとして店舗での引き合いは強い。だが、VAIOの生産能力には限界があり、ノジマの店舗にはあまり入ってこないという実態もある」などとした。
今後のグループシナジーについては、ITXの法人部門を通じたVAIOの販売強化を進めるほか、ソリューションサービスの拡大にも取り組むという。
なお、VAIOは2025年4月1日付で、NJM1を存続会社とする吸収合併により解散。同日付で存続会社であるNJM1をVAIOに商号変更。従来の5月31日の連結決算日を、3月31日に変更している。
ノジマは過去最高の売上高
一方、ノジマの2024年度連結業績は、売上高は前年比12.1%増の8,534億円、営業利益は前年比58.3%増の483億円、経常利益は前年比55.4%増の511億円、EBITDAは前年比29.0%増の742億円、当期純利益は前年比61.6%増の322億円となった。
ノジマ 取締役兼執行役 財務経理部長の幡野裕明氏は、「売上高と営業利益は過去最高を更新。グループの経営指標として重視するEBITDAも過去最高になった」としたほか、「物価上昇などにより、厳しい市場環境にあるが、コンサルティングセールスの進化と、各事業間のシナジーに努めた。1月にはPCメーカーのVAIOが新たにグループに加わったことも利益を押し上げた要因の1つになる」と総括した。
2024年度のセグメント別業績は、ノジマの店舗によるデジタル家電専門店運営事業の売上高が前年比12.8%増の3,019億円、経常利益は同25.8%増の200億円。同社独自のコンサルティングセールスの徹底と、創業65周年セールおよび上場30周年セールの実施、携帯電話販売部門でのオペレーションの改善などにより増収増益になったという。現在、デジタル家電専門店は248店舗の体制となっている。
ドコモショップなどを展開するITXやコネマシオを始めとしたキャリアショップ運営事業の売上高は前年比6.1%増の3,677億円、経常利益は同128.0%増の192億円。顧客の立場に立ったイベント企画、出張スマホ教室の開催、乗り換え促進策の実施などが功を奏し、売上高、経常利益ともに過去最高となった。キャリアショップ全体では935店舗体制となっている。
ニフティを始めとするインターネット事業の売上高は前年比5.9%増の703億円、経常利益は同14.7%増の61億円。ニフティでは顧客の声に基づいた環境づくりに向けたツールを開発。通販事業のセシールでは顧客に寄り添った製品開発により、受注が増加した。
シンガポールやマレーシアを中心に展開している海外事業の売上高は前年比17.2%増の813億円、経常利益は同年度の3億円の赤字から、9億円の黒字に転換した。2023年7月に買収したマレーシアのThunder Match Technology(TMT)が年間を通じて貢献。シンガポールでは、自社割賦のクレジット販売の強化、旗艦店の改装、新規店舗のオープンが貢献。現在は、海外で114店舗を展開している。売上高は過去最高を更新した。
マネースクエアによる金融事業の売上高は前年比12.1%減の52億円、経常利益は同35.7%減の11億円。市場環境変化の影響を受けて、減収減益担った。
AXNによる有料衛星放送事業、アニマックスブロードキャスト・ジャパン、キッズステーションなどによるその他の売上高は120億円、経常利益は同18億円となった。「オリジナルコンテンツのラインナップに力を入れており、売上高、経常利益ともに過去最高を達成している」という。
一方、ノジマの2025年度(2025年4月~2026年3月)の連結業績見通しは、売上高は前年比5.5%増の9,000億円、営業利益は前年比3.4%増の500億円、経常利益は前年比5.5%増の540億円、EBITDAは前年比5.0%増の780億円、当期純利益は前年比8.4%増の350億円とした。
「人材、店舗、DXへの投資を継続し、コンサルティングセールスのさらなる強化を図る。各セグメントのこれまでの強みを生かしつつ、グループシナジーを最大限に発揮することで、新たな価値創造に取り組む。デジタルマーケティングでの成長も目指す」と発言。売上高、営業利益、EBITDA、当期純利益で過去最高を目指すことになる。
デジタル家電専門店運営事業では、店舗の増加分が売上増加に貢献するほか、エアコンや冷蔵庫などの買い替えにおいて最大8万円分がお得になる東京ゼロエミポイントに、スムーズに対応できる仕組みを用意。これを活用することで他店舗に比べて優位になることを強調した。
また、75型以上の大型TVの販売に注力するための売り場づくりを進めるという。PC販売については、足元の販売が好調であることに加えて、ノジマ店舗において、VAIO専用什器を設置。これら店舗でのVAIOの販売に弾みがついていることを示した。ノジマ 取締役兼代表執行役専務 商品ソリューション推進部長兼関連事業推進部長の温盛元氏は、「ノジマ店舗におけるPCの販売は、年間を通じ、前年実績を上回ることになる」と期待を寄せた。
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