旅行者の間では、ニューヨーク都市圏にあるニューアーク国際空港を敬遠する動きが広がっている。
空港の電光掲示板には連日「欠航」の赤い文字が点滅し、運航遅延が相次ぎ旅客は足止めされている。そんな中で、旅行者の不安をさらにあおる事態が発覚した。航空管制官との無線通信が90秒間途絶えていたというのだ。大事には至らなかったものの、一歩間違えば重大事故につながりかねない事態だ。
人手不足にシステムの老朽化、滑走路の工事など混乱を引き起こす要因は山積しており、早期の改善は見通せない状況だ。全米で航空関連事故が相次ぐ中、ニューアーク発着便自体を避けようとする旅客が増えている。
毎月のようにジョージア州アトランタからニュージャージー州バーゲン郡の家族を訪れているカミーユ・オヌオハさん(29)は、「旅行計画を本気で見直す必要がある」と語る。今後は「どのような負担を伴ってでも」ニューアーク空港の利用を避けると述べ、移動時間が2倍になろうとニューヨークのラガーディア空港を使うと話す。

ニューアーク国際空港で遅延した便を待つ長蛇の列(5月5日)
Photographer: Spwncer Platt/Getty Images
先週の航空管制の通信トラブルとそれに伴う人手不足で悪化した空の旅の混乱は、ニューヨーク都市圏の主要3空港の一つが不確実性に見舞われていることを意味する。
ニューアーク国際空港は昨年、4800万人を超える旅行者が利用した。ユナイテッド航空の国際線の最大拠点であり、国内線の重要なハブでもある。しかし同社は先週、1日当たり往復35便を削減すると発表した。
フライトアウェアによると、4日に624便、5日には580便強、6日にも520便余りが欠航または遅延した。ユナイテッド航空は、影響を受けた旅客に対し、ラガーディアやフィラデルフィア発着便への無償振り替えを案内している。
ユナイテッド航空のスコット・カービー最高経営責任者(CEO)は7日、従業員宛てのメッセージで、「まず何よりも重要なのは、ニューアーク発着の全てのフライトは完全に安全であるということだ」と指摘。「連邦航空局(FAA)もユナイテッドのパイロットも、安全を犠牲にするようなことは決してない」と強調した。

それでも、ニュージャージー州在住のエラジャ・バスケスさんは、重要な改善措置が実施されるまでニューアーク空港発の便を利用しないとしている。すでにテキサス州ラボック行きの便をラガーディア空港発に変更しているというバスケスさんは、「ニューアークが国際空港なのにインフラが安定していないというのは、この国の現状を物語っているように感じる」と語った。
米国では7日から、国内を航空機で移動する人に対し、連邦政府が承認した新たな身分証明書「リアルID」の提示を義務付ける法律が施行されることから、当局は旅行者にさらなる遅れが見込まれると警告している。
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この1年、航空機事故やニアミスの報道が相次ぎ、旅行者はますます不安を募らせている。ボーイングは、2024年初頭に「737MAX」機が重大事故寸前のトラブルを起こし、乗客が搭乗を避ける動きも見られた。これは企業のイメージが急速に悪化する可能性を浮き彫りにしており、ニューアーク空港の場合も同様に利用者の信頼が揺らいでいる。
ニューアーク空港で清掃員として働いた経験を持つメアリー・ロザルバさん(30)は現在の空港の様子について、これまでにない混乱ぶりに驚いていると言う。7月にビヨンセのラスベガス公演に行く予定で、出発地を別のニューヨークの空港かフィラデルフィアに変えようかと検討中だ。
航空管制の人手不足もあり「ちょっと怖い。この1年、飛行機の事故が多かったし、まさかニューアークがこんな事態になるとは思っていなかった」とロザルバさんは語った。
原題:Newark? No Thanks: Flyers Avoid Airport Over Safety Fears (1)(抜粋)
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