24日、NTTドコモが新料金プランを発表した。本稿では、同社代表取締役副社長の齋藤武氏による質疑応答と囲み取材、そして料金面をリードするマーケティング戦略部長の山本明宏氏への囲み取材の様子をお伝えする。

質疑応答

――これまでの料金と比べ、たとえば「eximo」の月額7315円から、「ドコモ MAX」は8448円と1000円強の値上げに思える。円安・物価高という環境だが、料金改定の背景・理由を教えてほしい。

齋藤氏
 料金は、常にどういうものがベストか考えています。データ量と料金だけで選ばれるというよりも、いかに価値を組み込んだプランにして選んでいただけるようにするか、というコンセプトに変えていこうという点が、改定の一番大きな理由です。

 値上げと指摘ありましたが、それ以上にDAZN for docomo、そしてAmazonプライム会員の6カ月無料特典、あるいは海外ローミングで30GB分利用できることなど、その分(値上げ)を上回る価値を入れていると自負しております。ぜひ、「eximo」のお客さまにご利用いただきたいです。

――「DAZN for docomo」が追加料金なしということで、料金プランにバンドルされる。一方、これまでは「爆アゲセレクション」としてコンテンツを利用するとdポイントで還元される形だった。新料金を機に施策も変わるのか。

齋藤氏
 「DAZN for docomo」のバンドルは、新料金プランのうち、「ドコモ MAX」「ドコモ ポイ活 MAX」の2つが対象です。

 ほかのプラン、たとえば「ahamo」「ドコモmini」といったところは、引き続き「爆アゲセレクション」を利用いただけます。

 「MAX」は、やっぱり特別な料金プランになります。ここにバリュー(価値)をいろいろと詰め込んでいきたいという思いからバンドルしております。

――新料金のうち「ドコモ mini」は4GBと10GB。これまでの「irumo」の0.5GB、3GB、6GB、9GBという4種類から半分になった。整理した理由は。

齋藤氏
 お客さまの利用状況を見ますと、通信量はやはり増えております。4GBと10GBで、ニーズはおおよそ対応できると思っています。

――ahamo登場時は、料金プランをシンプルにするという方向だった。今回は複雑になっているが、どういった考えか。

齋藤氏
 分かりやすさと価値の組み込みのトレードオフということになりますが、ahamoはahamoで、極めてシンプルなオンライン専用料金プランです。

 「ドコモ MAX」はいろんな価値を入れ込んでいくというコンセプトです。今後も、さまざまな価値を付加するよう考えていきます。

――ahamoだけなぜ残るのか。

齋藤氏
 今回、「ドコモ MAX」「ドコモ ポイ活 MAX」「ドコモ ポイ活 20」「ドコモ mini」を店頭でフルサポートしてお選びいただくことになります。「eximo」「irumo」よりも「MAX」「mini」という名称がわかりやすいかと思っています。

 一方、「ahamo」はターゲット層が、店頭を利用される方と少しセグメントも異なります。今も好評で、ブランド価値も蓄積されてきたと感じており、そのままにしようと。

――DAZNは定期的というか、大胆な値上げが過去に何度かあった。今後、DAZNが値上げした場合、ドコモ側の料金プランも変わる可能性はあるのか。

齋藤氏
 今の時点では、DAZNさんが料金を改定したからといって、追随して値上げすることは考えておりません。

――競合他社の料金プランと比較できない印象もあるが、それくらいでちょうど良いということか。

齋藤氏
 きちんと他社さんと差別化できているという、最大限のお褒めの言葉です。料金金とデータだけではなく、そこの競争からは少し違う競争軸で提供したいと思っています。さまざまな価値を詰め込んで提供していくスタンスで、お客さまから支持いただければ非常に嬉しいです。

――irumoで、0.5GBがなくなる背景について、MNPで転出元としてかなり使われていたという話も聞いている。実際はどうだったのか。

齋藤氏
 はい、ご指摘の部分はありました。

――MAXでの特典にある海外ローミングについて、「ahamo」といくつかスペックが異なるようだ。

齋藤氏
 利用可能な国・地域の数が異なります。ahamoは約90、一方、「MAX」は200を超えています。211の地域で使えます。そういう意味では、MAXのほうが利便性が高く、収益についてもきちんと得られるように計算しています。

齋藤氏の囲み取材

――値上げが続く一方で、携帯業界は値下げの話が強かった。決算に与える影響は。

齋藤氏
 今回の料金プランの改定は、物価上昇と直接、関係はしていません。あくまでもドコモの置かれた競争環境にどう対応していくかという点で考えております。

 物価の高騰については、料金プランというよりも、会社全体の経営を考えていく上でどう対応するかという話だと認識しています。決算への影響は、まもなく発表ですので、そこで改めて申し上げたいです。

齋藤副社長

――今後、どういったものを追加していきたいのか。

齋藤氏
 お客さまの嗜好や熱中することを軸に考えたいです。今回は第1弾。スポーツを応援するお客さまにドコモを選んでいただけるようにということです。

 たとえばエンターテイメントで言えば、音楽もあるでしょうし、映画もあるでしょう。幅広いものがあると思いますので、そういうコンテンツを次々にご提供できるように進めたいです。

――DAZN以外のコンテンツを追加する時は、料金も変わらずどんどん追加されていくというイメージか。

齋藤氏
 その形はまだ決まっておりません。追加していくこともあり得ます。もう少し出揃ってきた時に形も含めて考えたいです。

――第2弾、第3弾はちょっと違う形になる可能性もある。

齋藤氏
 ちょっと決まってないです。すいません。

――DAZNを組み込むことは大胆な決断のように思える。スポーツ好きなら良いが、そうしたマイノリティに受けるかもしれないものの、スポーツへ関心がないマジョリティにとっては、DAZNが不要で、多く支払う格好にならないか。

齋藤氏
 マイノリティかどうか、という点については、スポーツを応援する人は、プロ野球ファンでも1000万人、Jリーグのファンだけでも1000万人いると思っています。必ずしもマイノリティの人に向けたプランとは思っていませんし、それなりに多くのお客さまから支持いただけると考えて、今回、提携しています。それが大前提です。

 加えて、非常にリーズナブルな価格で提供することで、今まで観戦していなかった方がスポーツを観るようになったり、それをきっかけにスタジアム・アリーナを訪れたりというところもあるのかなと。そういう、良い循環にしたいです。

――DAZNが不要な人にとっては高くならないか。

齋藤氏
 そういう意味では、(DAZN以外の特典として)Amazonプライム6カ月無料、海外ローミングといったものがあります。また、もっとも要望として大きい長期の割引です。今回(10月開始予定で)は20年で月220円、10年以上で月110円、還元いたします。DAZNだけではなく、幅広い便益を提供したいと思っています。

――NTT(持株)はシェアの拡大(注:持株社長の島田明氏はシェア35%を求めていると過去に発言)に注力している。ドコモとして、今回はARPU(ユーザー1人あたりの売上)に重きを置いたように見える。

齋藤氏
 ドコモとしても、ARPUの高いお客さまを獲得することはもちろん(重要なこと)ですが、収入は掛け算です。顧客の数とARPUで決まっていきます。顧客基盤をしっかり盤石なものにしたいという狙いで進めていますし、今回の料金プランもその一環です。

――「DAZNを契約したいが高い」と思っている人が、世の中に多いということか。

齋藤氏
 すごく多いと思っています。値上げの過程で契約を辞める人は相当数いらっしゃる。そういうお客さまにもう一度、DAZNを観ていただいて、スポーツの楽しみを味わっていただきたいです。

――2017年、月額980円の「DAZN for docomo」で割安に感じて加入したものの、その後の値上げで辞めた人も多いと。

齋藤氏
 かなり多いと思っています。

――DAZNの既存ユーザーが新料金プランを契約すると、切り替えの手続きなどは簡略化できるのか。

齋藤氏
 ドコモのお客さまでDAZNをお使いの方は、プランを変えるだけで大丈夫です。

――1000円アップで4000円のDAZN見放題をどう実現させたのか。

齋藤氏
 DAZNさんとの契約の中身になりますので、直接お答えはできません。両社ともにちゃんと収益を得られるようになっています。

――DAZNではなく、(ドコモの映像サービスである)Leminoをバンドルする選択肢もあったと思う。

齋藤氏
 お客さまにどれだけ入会いただけるか、強さがあるのかという観点がひとつです。スポーツに特化したサービスですので、特色を打ち出すには、まずDAZNさんから、ということは、良かったと思っています。

――irumoで0.5GBがなくなることで、競争力の面で、(競合他社の)サブブランドに対抗できるのか。

齋藤氏
 0.5GBプランは、他社から乗りかえた方もいますし、(ドコモユーザーの中でも)比較的シニアのお客さま中心に低容量の方に加入されていました。今回、4GBと10GBにしましたが、競争力は十分維持できると考えています。

――ポイ活も今回あるが、これまでと大きな違いはないか。

齋藤氏
 はい、ポイ活自体のスペックは、「eximoポイ活」と変化はありません。基本的には一緒です。お客さまからはご支持いただいていると思っていますので、変更する必要はないという判断です。

料金担当の山本氏囲み取材

――ahamoは残しつつ、「ドコモ ポイ活 20」があり、irumoは新規受付を終了して「ドコモ mini」が用意された。迷いがあるようにも見える。

山本氏
 いえ、(迷いはなく)確信しかないです。

 質疑でもありましたが、「ahamo」はオンライン専用として、ブランドも浸透しています。昨年10月には30GBにも増量し、好評です。「ahamoは変えない」というのは、当初から決まっていました。

山本氏

 一方で、2年前の「eximo」は、私が壇上に立ちましたが、店舗でサポートできる料金プランとして、ちょっとわかりにくいという声もいただいていました。思い切って、今回(DAZNという)バリューを入れるタイミングでリニューアルしようと。

――分かりにくいって指摘は実際はどのあたりを指したものか。

山本氏
 我々は良いと思った「エクシモ」「イルモ」も、たとえば「eximo」はドコモで、エクシード・進化する、といった意味で名付けました。
 ただ、そうした意図と違って、どちらが大容量で、どちらが低容量かわかりづらいと。ドコモの料金プランであることも、認知していただきづらかった。やはり分かりづらいのか、とあらためて認識して、今回「ドコモ」と各プランに付けて「MAX」「mini」とわかりやすくしました。反省を活かしているつもりです。

――今後、MAXへ追加するコンテンツの目処は。

山本氏
 現時点で決まったものはありません。なるべく早くスポーツを、ということにフォーカスして進めました。

 エンタメでも、いろんなジャンルがありますので、推し活をされている方にドコモを使っていただけるような、仕掛けをしていきたいです。

 スポーツに対しては、ドコモもずっと事業を展開し、スポーツ振興に取り組んでいます。スポーツに貢献したい、地域を活性化したいという思いがありました。

――irumoの0.5GBがなくなることは影響が大きい印象がある。

山本氏
 OCN モバイル ONEからの移行先としてirumoをご用意したところもありますが、ある程度、移行が進み、役割を終えたとも言えます。

 また、お客さまのデータ通信量が増えていますから3GBを4GBにしました。4GBで(割引適用後で最安なら)880円は十分使えるのではと、流出は起きないと思っています。

 利用されていないわけではなく、普段使いからすれば、0.5GBは足りないだろうと。光回線を契約して、自宅で使うという方もたくさんいらっしゃったと思いますが、外で使ってほしいという思いがありますので、思い切って0.5GBはやめると。

――OCN モバイル ONEからの乗りかえを促進する特典も収束するのか。

山本氏
 もうほとんど実施してませんので、順調に移行が進みました。問題はないと思っています。

――エコノミーMVNOへの力を入れていくのか。

山本氏
 いえ、それは考えていません。

――miniで4GBから、となる一方で、「ドコモ MAX」は段階制で、最小のしきい値が1GB。1GBを増やす考えはあるか。

山本氏
 使わないときに向けて段階制にしています。他社さんも1GBを残されていると思うんですが、どうしても(おトクに)DAZNを観たい場合、自宅中心でご覧になる使い方もあるかと思いますし、そういう使い方の幅を広げる意味でも(料金最小の単位として1GBを)残しています。

 MAXには、DAZNを始め、バリュー(特典)を詰め込みましたが、それは要らないという方には、「ahamo」もありますし、今回「ドコモ mini」「ポイ活 20」もご用意します。幅広い選択肢から選んでいただける形がいいかと思っています。

――シンプルな環境で大容量を使いたい人は?

山本氏
 シンプルで大容量の場合は、「ahamo大盛り」という選択肢になるかと思います。

――「ドコモ ポイ活 20」を入れた理由は。

山本氏
 ahamoではなく、ドコモで20GBという中容量帯がなかったためです。eximoポイ活はいいけど、20GBがあったらなという考え方で、選んでいただけるようご用意しました。

――「ドコモ miniの20GB」ではなくポイ活にしたと。

山本氏
 どちらかと言うと、やはりポイ活をしていただきたい考えはあります。(割引を適用し、さらにポイント5000円相当を充当すると)3000円以下で楽しんでいただきたいというのが一番の思いです。

――今回は料金値上げを感じさせない形だが、据置ルーター向けの「home 5G」は値上げです。

山本氏
 home 5Gは、物価高を受け、他社さんとの競争環境を見据えて決まりました。

――DAZNをきっかけに、auからユーザーを獲得できるか。

山本氏
 かなり来ていただけるんじゃないかなって思ってます。

 auさんだけではなく、それ以外の他社さんをご利用されていても、DAZNを月額4200円で利用されている方はたくさんいらっしゃいます。ドコモに来ていただけるんじゃないかと思いますし、それが狙いです。

――他社ではNetflixなどをバンドルしているが、そういうサービスもMAXへ追加される可能性は。

山本氏
 可能性は否定できません。ただ、推し活のような、ひとつのセグメントに特化したものを選んでいきたいという思いもあります。

 バラエティに富んだ配信は「Lemino」でも実績を積んできましたし、「爆アゲセレクション」では、Netflixで最大20%還元です。ディズニープラスもありますし、そちらでコンテンツは十分カバーできているところもあります。(MAXの特典として)次をどうするかは、まさに議論中です。

――料金プランとしては複雑になっている。「さよならドコモ」と言われる懸念はないか。

山本氏
 受け入れていただける価値ではないかと思っています。齋藤も言及していましたが、いろんな価値を追加すると確かに複雑そうに見えます。

 でも、(その特典が)いいなと思う人にとっては複雑ではなくて、「良いものを入れてくれた」と感じていただけると思います。魅力的なものが入れば、と。



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