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欧州中央銀行（ＥＣＢ）のチポローネ理事は29日、米国の関税は世界的な経済成長を鈍化させ、短期的にユーロ圏のインフレに悪影響を及ぼす可能性があると述べた。
チポローネ氏はフランクフルトで開催された会議で、「短期～中期的な影響は、米国の関税の発表後に実質金利が上昇し、通貨が上昇したユーロ圏においては、むしろデフレ圧力を強める可能性もある」と指摘した。
また、米国の関税をはじめとする貿易措置が「高生産性部門から低生産性部門へ資源をシフトさせることになり、20世紀にも見られた非効率性を生み出すリスクがある」として、「この収縮効果が、世界の成長率の持続的な低下を招く可能性がある」と警鐘を鳴らした。
ＥＣＢの当局者はこのところ、インフレ見通しについて楽観的な見方を示しており、昨年６月から今月まで、７回に渡り0.25ポイントの利下げを行った後も、さらなる利下げを準備している。欧州経済が低迷する中、市場は今年中に、さらに２－３回の利下げを織り込んでいる。
トランプ米大統領が関税を発表して以来続くユーロ高は、当局者らにとっては最大の驚きだったようだ。ユーロ安を想定しており、輸入コストの上昇が欧州連合（ＥＵ）の報復措置と相まってインフレ率の上昇を招くリスクがあるとみていたためだ。
チポローネ氏は、為替レート、債券利回り、株式市場の最近の動向は、米国資産が従来のような安全資産としての役割を果たしていないことを示唆していると指摘した。また、こうした変化が資本の流れや国際金融システムに広範な影響を及ぼす可能性があると述べた。
同氏は「特にインフレ率の上昇、成長の鈍化、米国債務の増加といった形で、関税引き上げの長期的な影響が現実化すれば、米ドルの国際貿易・金融における支配的地位への信頼が損なわれかねない」と述べた。また、貿易の分断が「米国主導のグローバルシステムから、複数の通貨が準備通貨の地位を競う多極化システムへの段階的な移行」につながる可能性にも言及した。
原題：ECB’s Cipollone Sees Tariffs Likely Disinflationary Short Term（抜粋）
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