トヨタ自動車の豊田章男会長を含むトヨタ創業家が、グループ源流に位置づけられる豊田自動織機に非公開化を前提とした買収提案を行ったことが分かった。複数の関係者が明らかにした。
関係者らによると、豊田織は提案を受けて特別委員会を組成した。豊田織と特別委は実務を担う財務アドバイザーをそれぞれ選定し、提案の精査や是非の検討を進めている。経済産業省の合併・買収(M&A)に関する指針では、買収提案を受けた場合には可及的速やかに、特別委を設置することを推奨している。関係者の1人によると、買収総額は6兆円規模と巨額案件になる可能性がある。

豊田章男氏
Photographer: Toru Hanai/Bloomberg
報道を受けてトヨタは26日、豊田織に「一部出資することを含め、さまざまな可能性を検討している」との声明を出した。トヨタの広報担当者は前日、同社が公表したものではないとした上で、保有するトヨタグループの株式については常に最適な在り方を検討しているが、現時点で決定した事実はないとし、開示すべき事項が生じた場合には、速やかに開示するとしていた。
国内では企業統治(コーポレートガバナンス)の向上や親子上場の解消、一部では買収防衛の観点などから、創業家が中心となる非公開化の動きが活発になっている。カナダのコンビニ大手から買収提案を受けたセブン&アイ・ホールディングスの創業家は、昨年から今年にかけて経営陣が参加する買収(MBO)を計画したものの、資金調達のめどがたたず断念した。
同関係者らによると、創業家らは豊田織買収のための特別目的会社(SPC)を作る計画。買収資金は豊田氏個人やトヨタなどによる出資に加え、三菱UFJ銀行など3メガバンクからの融資も活用する案も浮上している。
豊田織も同社グループの企業価値向上のための資本政策を含め、あらゆる可能性を検討しているが、現時点で決定した事項はないとした。
豊田氏のコメントをトヨタに求めたが、現時点で得られていない。
豊田織の半期報告書によると、トヨタが豊田織株の24.2%を保有するほか、豊田氏が会長を務めるトヨタ不動産が5.32%を持つ。時価総額は25日時点で約4兆3000億円だった。一方トヨタの半期報告書によると、豊田織はトヨタ株を9.07%保有する。
豊田氏の曽祖父(そうそふ)にあたる豊田佐吉氏が1890年に、高効率な木製の人力織機を発明。その後自動織機の製造・販売のために豊田織の前身を設立した。自動車製造は豊田織の一部門として始まり、1937年、部門が独立する形でトヨタ自動車工業が設立された。
(第3段落に26日のトヨタの声明を追加して更新します)