ソラコムと丸紅は、IoT領域での協業を拡大し、新会社を設立すると発表した。
合弁会社は、丸紅I-DIGIOホールディングス傘下の丸紅ネットワークソリューションズのMVNO事業を分割し、8月1日付けで設立される。ソラコムが51%を出資する。
拡大するIoT市場と協業の背景
今回の戦略的協業および新会社設立の背景には、ビジネスIT領域、特に今後大きく拡大が見込まれるIoTの領域における需要の増加がある。丸紅I-DIGIOホールディングスの佐藤由浩社長は、ソラコムが持つIoTプラットフォームの活用や技術支援によって、丸紅のビジネスIT事業拡大に大きく貢献できるとの見解を示した。
また、テレワークの普及やワークスタイルの変革が進む中で、企業ITネットワークにおける無線活用の重要性が高まっている。ソラコムとの提携により、国内複数のキャリアの通信プロファイルをインストールした回線提供が可能となり、これにより冗長性や安全性の向上が期待できる。
さらに、両社が持つシステム、仕組み、帯域、マネージドサービスといった資産を共有することで、全体の効率化と最適化を図ることも目的としている。
丸紅I-DIGIOホールディングスにとって、ソラコムとの資本提携を「絶好の好機」と捉えられており、新会社と共に顧客の新たな価値創造に挑戦し続ける意向が示された。
新会社設立の概要とそのユニークな強み
提携の核となるのは、丸紅I-DIGIOホールディングスのMVNO事業を分社化し、ソラコムが51%を出資して設立される合弁会社。新会社の設立は8月1日を予定している。
丸紅I-DIGIOホールディングスのMVNO事業は、2012年に法人向けにサービスを開始し、NTTドコモのフルMVNOとしてコンシューマーやモバイルワーカー向けの通信インフラを展開してきた実績を持つ。一方、ソラコムは2014年創業で、KDDIのフルMVNOであり、グローバルで400以上の携帯通信事業者と提携したMVNOサービスを提供している。
ソラコムの玉川憲社長は、両社の強みは「補完関係にある」と説明し、新会社はNTTドコモとKDDIの両方のフルMVNOを持つ“非常にユニークな存在”になると述べた。
フルMVNOとは、通信キャリアの基地局を借りつつも、交換機や顧客管理データベースを自社で保有・運営し、SIMも自社で発行する事業形態であり、ビジネスモデルの自由度が高いという特徴がある。これにより、新会社では独自SIM発行、IoT向けユニーク料金プラン、複数の契約情報を格納できるマルチプロファイルといった、付加価値の高いサービス提供が可能になる。
提供サービスと今後の展望
新会社では、両社の技術力と顧客基盤を活かし、幅広い領域でサービスを展開する計画。具体的には、モバイルワーカー向けのスマートフォン、タブレット、ハンディターミナルに対応したソリューションや、インバウンド需要に対応したトラベラーズSIMなどのコンシューマー向けサービスが挙げられる。
さらに、IoT領域における大容量・リアルタイム通信のニーズ、例えばセキュリティカメラ、ドローン、建設現場の遠隔操作などに応えるサービス提供も検討しており、ソラコムの開発力を生かした付加価値の高いサービスを積極的に提供していく方針が示された。
提供技術としては、インフラ設備の一部ソフトウェア化・クラウド化によるサービス高度化、国内複数キャリアおよび海外プロファイルの組み合わせによるより広いカバレッジと高い冗長性の実現、カード型やチップ型に加え、通信モジュールとSIMを一体化したiSIM技術の提供、そしてモバイルワーカー向けのセキュリティサービスであるSASE(Secure Access Service Edge)のような領域での新サービス提供が検討されている。
ドルビックスコンサルティングとの連携による価値創造
今回の提携におけるもう一つの重要な要素として、丸紅のドルビックスコンサルティングの役割が挙げられた。ドルビックスは2021年に丸紅の子会社として設立され、丸紅グループ内外の顧客に対し、DXコンサルティングやITコンサルティング、データ分析などの業務を提供している。
丸紅の藤永崇志氏は、畜産をはじめとする総合商社である丸紅の幅広い事業領域において、ドルビックスが顧客の抱えるニーズや課題を発掘する役割を担うと説明した。そして、その見つけ出した課題に対して、ソラコムが持つ技術力や開発能力を組み合わせることで、IoT導入によるデータ取得に留まらず、そのデータをしっかり活用し、顧客にとっての「価値の創造」に結びつけていくことを目指す。
また、従来、ドルビックス単独では自社リソースとして全てのIoTサービスを提供することは難しかったが、ソラコムとの連携により、これまで主に国内中心であったIoTビジネスにおいて、海外でのビジネス機会も一緒に追求できる可能性が見えてきたと述べた。コンサルティング会社としての中立性を保ちつつ、両社の強みを掛け合わせることで、「なかなか今までできなかったことができていくようになる」(藤永氏)と期待を示した。
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