スポーツのパフォーマンスは「感情」に強く左右されるという指摘、心を無にして集中する方法とは？ – GIGAZINE

興奮や喜び、不安や悲しみといった感情は、スポーツのパフォーマンスを阻害する可能性があると、スポーツ心理学者のデビッド・ユーデルフ氏が解説しています。ユーデルフ氏によると、スポーツの世界ではコントロールできない要素に向き合う必要があり、コントロールが難しい感情を受け入れることが重要であるそうです。

How Excitement and Joy Can Disrupt Athletic Performance | Psychology Today
https://www.psychologytoday.com/us/blog/sport-between-the-ears/202504/how-excitement-and-joy-can-disrupt-athletic-performance

スポーツなどに没頭している人は、しばしば極端な集中状態を経験することがあります。「ゾーン」と呼ばれるこの状態には、プレッシャーが極限に達する特定の状況下で重要な成果が目前に迫っている時に発生する「クラッチ」、プレッシャーから解放された状態で目新しさや探求を求めて高いパフォーマンスを発揮する「フロー」の2種類があると考えられています。

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逆に、しばしばパフォーマンスに悪い影響を与えるものが「感情」です。ユーデルフ氏によると、快い感情でも不快な感情でも、スポーツのパフォーマンスを阻害する可能性があるとのこと。いら立ちや不安、悲しみといったマイナスの感情は、破壊的な性質や後に対処不可能な行動を引き起こす可能性があり、問題となります。一方で興奮や幸福と行ったプラスの感情も、心身共に興奮状態にしてリズムを崩してしまうなど、パフォーマンスに響く場合があります。

そのため、ユーデルフ氏は「感情的な無関心」を育むことが重要だと説いています。3回の全米タイトルを獲得した伝説の大学フットボールコーチであるトム・オズボーン氏は、チームが勝った際の反応として「試合が終わってフィールドから歩き出す時に勝利を祝います。ロッカールームに着く頃には、もう終わりです」と語っており、勝利の喜びすらすぐに落ち着かせるテクニックを語っています。ユーデルフ氏は「ホームランを打ったり、大きな試合に勝ったりすると、興奮するのは当然ですが、その感情にとらわれて継続的な成果と成功を目指す意志を弱めてはいけません。スポーツにおける興奮や喜びは、スポーツ体験の一部であり良いものですが、試合中や試合の合間には、束の間のものでなければなりません。そうでなければ、それらは邪魔になってしまいます」と述べています。

臨床心理学とスポーツ心理学における非常に効果的なアプローチとして、「受容とコミットメントに基づくトレーニング(ACT)」というものがあります。これは、「感情をコントロールすることはできないため、それを受け入れるべき」ということを前提に、排除せず受け入れた感情に心を開いて許容することで、目標や集中力を純粋に保つというアプローチです。

快い感情も不快な感情も、無関心でいることを実践することで、自分が何をしているかに集中できるようになります。しかし、これは簡単に達成できるものではなく、習得するには広範囲にわたる訓練と実践が必要で、困難なプロセスとなることもあります。ユーデルフ氏は感情的な無関心を実践する方法として、「自分の感情状態とそれに対する反応を自覚することから始まります。感情を受け入れること、感情的に無関心になることを実践すると、冷静さを保つ能力が高まります」と説明しています。