ペンシルバニア大学の研究チームが、ドリップ式コーヒーの抽出過程における水流とコーヒー粉との相互作用を解析した結果、「豆の使用量を減らしても豊かで風味のあるコーヒーを淹れる方法」を発見したと報告しています。研究チームは、抽出効率を高めるための要素として「水流の注ぐ高さ」「水の流速」「水流の太さ」などに着目し、実験を行いました。

Pour-over coffee: Mixing by a water jet impinging on a granular bed with avalanche dynamics | Physics of Fluids | AIP Publishing
https://pubs.aip.org/aip/pof/article-abstract/37/4/043332/3342795/Pour-over-coffee-Mixing-by-a-water-jet-impinging

Coffee too weak? Try this! | EurekAlert!
https://www.eurekalert.org/news-releases/1079393

Fewer beans = great coffee if you get the pour height right – Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2025/04/the-trick-to-making-great-pour-over-coffee-with-fewer-beans/

研究チームは、透明な漏斗とシリカゲル粒子を用いたモデル系を構築し、高速カメラやレーザーを使用して水流と粉体の相互作用を詳細に観察しました。さらに、コーヒー粉の粒径分布を測定し、抽出後の液体に含まれる全溶解固形分(TDS)を分析することで、抽出効率の変化を定量的に把握しました。


その結果、コーヒー粉との混合を最大限に促し、より高い抽出率を得るためには、注ぎ口からコーヒー粉までの高さを約30cmに保つのが最適であることがわかりました。この30cmという高さは、水流に重力による適度なエネルギーを与え、水の流れを安定させることで、粉との均一な混合を促進するのに適しているとのこと。


逆に、注ぎ口からコーヒー粉までの高さが50cmを超えると、水流が空中で分裂して滴状になり、粉との接触が不均一になって抽出効率が低下することが確認されました。また、注ぐ高さが低すぎたり、注ぐ速度が遅すぎたりすると、液体が容器の注ぎ口に沿って垂れてまっすぐ注げない「ティーポット効果」によって水が注ぎにくくなり、十分な混合が行われずに粉が底に沈んでしまうこともわかりました。

ペンシルバニア大学の大学院生で論文著者の一人であるマーゴット・ヤング氏は、「水流は細くなると途中で崩れてしまい、コーヒー粉と効果的に混ざらなくなります。それを避けるためには、湯をある程度の高さから一定の流速を保って注ぐ必要があります」と述べています。

研究チームによると、この研究の背景には「気候変動の影響でコーヒー豆の栽培がますます困難になっている」という現実があるとのこと。共同研究者でペンシルバニア大学のアーノルド・マシセン助教授は、「豆の使用量を減らしながらも、同等の抽出量と風味を得られる方法を確立することは、今後のコーヒー文化にとって非常に有意義です」と語っています。


研究チームは、この研究成果がコーヒー抽出にとどまらず、滝による土壌の侵食、下水処理における曝気、ダムの基礎地盤の浸食といった、液体と粒状物質が交差するさまざまな現象の理解にも貢献する可能性があると論じました。将来的には、コーヒー粉の粒度や形状、材質の違いがどのように抽出効率に影響を与えるのかについて、さらなる研究が期待されます。

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