12日の日本市場では円が対ドルで一時146円台前半に下落。週末に貿易協議を行った米国と中国が著しい進展があったと発表したことで、投資家のリスク選好姿勢が強まり、円が売られている。債券は下落し、株式は日経平均株価が小幅高。
関税引き上げの応酬を続けてきた米国と中国はスイスで開かれた2日間の協議を終え、「著しい進展」があったと発表した。中国の何立峰副首相は今後の協議に向けた枠組みを設けることで両国が一致したと述べ、ベッセント米財務長官は詳細をスイス時間12日に明らかにすると話した。
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関税を巡る米中対立が緩和に向かうとの期待から、円相場は一時146円28銭と4月10日以来の安値を付けた。
SBIリクイディティ・マーケットの上田真理人金融市場調査部長は、米中協議の詳細がまだ見えないのでこの程度の反応だとし、「内容によってはもう少しドルの上値をトライする可能性はある」と語った。ただ、「いわゆる同盟国との交渉がどうなっているのか、基準が全く分からない」と言い、関税による米国経済の先行き懸念も踏まえると「146円台は少し行き過ぎ」との見方を示した。
国内為替・債券・株式相場の動き-午前10時59分現在 |
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外国為替
円相場は下落。関税を巡る米中対立が緩和するとの期待から円売り・ドル買いが優勢だ。
関西みらい銀行の石田武ストラテジストは、市場は米中が関税率引き下げで合意したわけではないと冷静に受け止めている感じもあるとした上で、先週の米英合意も含め「緩和方向の動きで、4月上旬の悲観的ムードから持ち直していくのは間違いない」と述べた。
一方で、日本銀行の企業短期経済観測調査(短観)で企業の想定レートだった147円台が近づくと「ドル・円の上値は重くなる印象」だとし、「146円を超えたところではいったんドルの戻り売りが出やすい」と話した。
債券
債券は下落。米中貿易協議を受けて投資家のリスク選好姿勢が強まり、売りが優勢だ。
三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは、米中貿易協議により円安が進み、債券に売り圧力がかかっていると指摘。もっとも、今後発表される協議の詳細が「英国のように中身があまりないと過度に楽観ムードにならない可能性がある」と話す。
市場では、財務省が13日に実施する30年国債入札に対する警戒感が強い。30年債を皮切りに4週連続で超長期債の入札が予定されている。
稲留氏は超長期債について「財政拡大懸念がくすぶり金利上昇リスクが高い」とした上で、入札に向けた調整売りで利回り上昇が進んでも、「買いが入りづらい」とみている。
株式
株式は上げ幅を縮小し、TOPIXが下落に転じる場面がある。米中の貿易戦争を巡る緊張緩和への期待から買いが先行した後、TOPIXは前週末までの11連騰による短期的な過熱感が警戒され、利益確定売りが出ている。
金利上昇で銀行や証券といった金融株が買われ、円安を受けて電機や機械などの輸出関連株も高い。半面、トランプ米大統領が処方薬の価格を引き下げる大統領令に署名する意向を表明し、第一三共や中外製薬など医薬品株が軒並み安。
大和アセットマネジメントの富樫賢介チーフストラテジストは、「米中貿易交渉への期待から既に上げてきたこともあり、円安が進んだ割にTOPIXの上げは小幅」と指摘。今週は米消費者物価指数(CPI)の発表も控え、「徐々に様子見となりやすい」と言う。
この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。