航空機などにおけるモバイルバッテリの扱いが厳しくなる傾向がある。また、環境省が家庭から排出されるリチウムイオン電池を全国の自治体で回収することを義務付けるよう通知するなどの動きもある。

 その一方で、USB Power Deliveryなどが浸透し、大電力供給手段としての事実上の標準として確立され、容量、入出力電力ともに増加の傾向もある。こうしたバッテリがどのくらいノートPCの駆動時間を拡張できるのかを調べてみた。

容量、入出力電力ともに大電力に対応する傾向にあるモバイルバッテリ

 まずは、モバイルバッテリの電力についてのおさらいからだ。電力は一秒間に電気ができる仕事の量を表す。単位はW(ワット)で、1時間あたりの仕事量を示すWhに換算し、電力量として示されることが多い。1時間かけて100Wの電力を使う場合の電力量は100Whとなる。

 モバイルバッテリは最近でこそ、その能力の電力換算がパッケージなどに明記されるようになってきたが、多くの場合、その容量がmAhで表記されてきた。これは1時間に流せる電流の量だ。USB Power Deliveryのように電圧が可変の場合は計算がややこしくなるので、リチウムイオン電池の定格である3.6Vを乗じておけばWhでの換算ができると考えていい。たとえば10,000mAのバッテリは36Whの電力量を蓄えられる。20,000mAならその倍の72Whといった具合だ。

 また、ノートPC内部にはバッテリが内蔵されている。製品によって異なるが50Wh前後のものが多いようだ。

 モバイルバッテリの最新製品を手元に集めてみた。

ここでのポイントは、蓄えることができる電力量(Wh)と、入力(バッテリに充電する)時の最大電力、出力(バッテリから別のデバイスに電力を供給する)時の最大電力、そして製品の重量だ。これらの値を元に重量当たりの容量も計算してみた。

 製品としては一番古いものなのだが、Owltechの72Whバッテリが群を抜いて重量当たりの容量が多い。つまり、72Whもあるのに340gしかない。ただ、古い製品ということもあり、出力は60Wで実用上十分なのに、入力が30Wというのが惜しい。入力についても60Wh程度に対応していれば、半分の時間で満充電に戻せる。だが、そうなると重量も増えそうなのが悩ましい。

 また、Motteruの36Whは入出力ともに30Wだ。容量と入出力電力ともにノートPCには荷が重そうな気もするが、バッテリそのもののモノとしてのモビリティはダントツだ。

 3番目以降はかなり新しい製品群だ。入力は65~140W、出力は揃って100Wを超える。だが、その回路のために重量が増し、重量当たりの容量的には不利な結果になっている。

優秀なノートPC内蔵バッテリの効率

 PC内蔵のバッテリへの充電事情についても考えてみる。

 多くのノートPCは弩級のゲーミングノート以外、ほとんどは60W程度の電力しか受け付けないようだ。トレンディな大電力モバイルバッテリは、一般的なモバイルノートPCにはちょっとオーバースペックなのだ。

 ただ、比較的大電力を要求するMacBook Proのような製品もある。モバイルバッテリを選ぶ時には、自分がノートPCが必要とする入出力電力、そして、自分自身が必要とする容量を考慮する必要がある。また、100Wh超の充電にはUSBケーブルも対応製品が必要なことに留意してほしい。

 たとえば、手元の軽量ノートPC、FCCLの「FMV Zero」は634gを実現した世界最軽量の14型ノートPC(以下「ムサシ」と呼ぶ)だが、その内蔵バッテリは31Whでかなり少ないが、それが軽量化に大きく貢献している。充電は60Wが上限のようだ。

 この31Whだが、手元ではコロナ禍以降、バッテリの充電制限を設定していて、80%で充電をストップするようにしている。つまり、容量が31Whあっても25Whだけを蓄えるように設定している。ユーティリティで設定する腹八分目だ。

 Outlookを起動したままにして順次届くメールを受信し、Netflixで映画を延々と再生し続けるように設定して駆動時間を測定すると、8割、つまり、25Whの電力を蓄えた内蔵バッテリでは実測で3時間50分程度の稼働となる。

 日常的な活動ではそれくらい使えれば十分なので、特に、モバイルバッテリの常時携行を必要とはしていない。8割充電をやめて、満充電すれば4時間43分使えるはずだ。

 だが、それでは足りない日もある。そんな日だけ、モバイルバッテリを頼ることにする。モバイルバッテリがあれば、どのくらい駆動時間を拡張できるのかを実証してみた。

同容量の電力でも、接続タイミングで稼働時間が変わる

 リストの中でもっとも重量あたりの容量が大きかったOwltechの72Wh製品は、60Wでの出力だ。このバッテリをノートPCに接続して駆動時間を拡張したいわけだが、気になるのは接続するタイミングだ。

 内蔵バッテリがたっぷり残っているうちから接続したほうがいいのか、内蔵バッテリが切れてから接続した方がいいのか迷う。両方を試してみた。

 約8割充電状態のムサシ本体にOwltechの72Whモバイルバッテリをフル充電して接続したところ、3時間40分後くらいにモバイルバッテリが空になり、内蔵バッテリからの供給に切り替わった。つまり、72Whを3.66時間で消費したことになる。外付けは19.7Wh、ざっくり20Whくらいの推移で消費されていく。ヘビーな処理をさせればもっと増えるだろうが、出先での軽い作業ではそんなものだ。

 そのままシャットダウンするまで放置した。5%残量になったところでスリープした。ここまで7時間30分だ。

 不思議なのは、本体だけで3時間50分も稼働した計算になることだ。

 本体内蔵バッテリは31Whで、実際の充電量はその8割で25Wh相当。なのに外付けした72Whバッテリ丸ごと全部と同じくらいの時間稼働している。外部接続と内蔵では電力を使う効率が倍以上違うようだ。こんなに違うものなのかとちょっと驚いた。これについては機種によっても異なるかもしれず、もう少し調査が必要だ。

 スリープに落ちたムサシにフル充電のバッテリをつないで充電を開始する。つないでからスリープ復帰したので計測開始時には10%近くに復帰していた。53分で80%に達して充電がストップした。外のバッテリは半分ほど残っているようなのでつじつまはあう。

 そのままバッテリをつないだままで稼働を続け、内蔵バッテリは80%をキープする。そして、2時間30分で再び外部の72Whを使い切って内蔵バッテリが減り始めた。このままだとこの先3時間50分で内蔵バッテリが尽きてスリープに入るはずだ。合計6時間20分の稼働時間となる。

 つまり、最初から外部バッテリを使えば7時間30分、空になってから外部バッテリを接続すると6時間20分。結論として最初からつないだほうが長時間運用できる。空になってからモバイルバッテリを接続すると稼働時間は約15%短くなるという結果になった。これはバッテリからバッテリへの充電が発生することによって熱などになる電力の無駄が原因だろう。まとめると、

・80%充電した内蔵バッテリでは3時間50分稼働する
・最初に72Whのモバイルバッテリを接続しておけば7時間30分(3時間40分拡張)稼働
・最初に36Whのモバイルバッテリを接続しておけば5時間35分(+1時間45分拡張)稼働
・内蔵バッテリがなくなってからモバイルバッテリを接続すると、最初から接続するよりも稼働時間が約15%減

となる。

 90WhのUGREEN製バッテリも接続して試した。こちらは12時間30分で残量5%となってスリープに入る。モバイルバッテリは7時間36分で空になり、そこから内蔵バッテリで5時間ほど稼働している。原因は分からないが駆動時間が延びた。

 また、36WhのMotteruバッテリはコンパクトで軽量なのが魅力で、最初から接続すればムサシの駆動時間を1時間46分拡張できる。30Wという小さな出力を懸念していたがほとんど影響がないようだ。なかなか健闘してくれている。内蔵バッテリが空になってから接続しても15%減の1時間30分だ。日常的な利用の保険としてはこれで十分かとも思う。

 個人的には340gの負担でムサシの駆動時間を3時間40分も拡張できるOwltechの72Whバッテリが心強い助っ人になりそうだ。Motteruにも同仕様の製品がある

 最新バッテリは液晶画面で入出力のステータスを表示するなど、便利ではあるが、そのことが重量当たりの容量に影響を与えているのが残念だ。



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