2025年5月3日(土・祝)パシフィコ横浜 国立大ホールで開催される『「鬼滅の刃」オーケストラコンサート ~鬼滅の奏~ 柱稽古編』。今回で5回目となるこのコンサートは、会場のスクリーンにテレビアニメ『「鬼滅の刃」柱稽古編』の映像を映し出しながら、オーケストラによる劇伴の生演奏を楽しむというもので、アニメとはまた違った感動や興奮が味わえる時間となるはずだ。
アニメイトタイムズでは、このコンサートの開催を記念して、前・後編に分けて、これまでの『~鬼滅の奏~』を振り返っていきたい。前編は、このコンサートの始まりとなった『~鬼滅の奏~』と、映画のストーリーを、オーケストラの演奏とともに辿った『~鬼滅の奏~ 無限列車編』の模様をお届けする。
2020.11.14-15 TOKYO INTERNATIONAL FORUM HALL A
隊服の背中に大きく記された「滅」の文字をスクリーンに大きく映し出しコンサートが始まる。1曲目は「鬼殺隊」。コーラスが発する「はっ!」という声が、隊の士気を高める鬨の声のように聞こえ、オーケストラによるスケールの大きい演奏が会場を震わせていく。そこから「竈門炭治郎 立志編」の物語を辿るように、音楽が奏でられていった。
慈しみを感じる家族の穏やかな日常を感じる「家族」。篠笛の音色は、炭治郎たちが住む山にしんしんと降り積もる雪に溶け込んでいくよう。その幸せな時間が一瞬で奪われる絶望を「悪夢 / 暴漢」の重厚感あるサウンドで表現。鬼になっていく禰󠄀豆子、そこに登場する柱・冨岡義勇ーー。そして冨岡と炭治郎の激突を映し出しながら演奏された「to destry the evil」は、象徴的な篠笛の音色、緊迫感を煽るドラム、迫力のコーラス、悲壮感を漂わせるストリングスの音色が、勝ち目のない戦いに挑む炭治郎たちの状況を見事に表現していた。そして「the Main theme of “Kimetsu no Yaiba”」では、旅立つ決意をし、雪の中を歩き出す炭治郎と禰󠄀豆子をスクリーンに映し出す。決して祝福された旅立ちではない、この先の未来を予感させるような重みも、音楽から感じられた。
笛の音から始まった「錆兎 / 真菰 / 浄」は、炭治郎と錆兎と真菰の修業を映し出しながら展開されていく。曲の後半は物語の切なさも相まって、音楽が心に染みこんでくる。鬼舞辻無惨と炭治郎の序盤での遭遇のシーンと共に演奏された「鬼舞辻の匂い」は、緊迫感や怖ろしさ、不気味さを、音から感じ取ることができた。オーケストラとバンドが一体となり、迫力のある演奏を聴かせた「水の呼吸発動~完全版」、禰󠄀豆子を感じさせるピアノの音、そして優しい歌声に安らぎを感じた「禰󠄀豆子~新たな希望 / 禰󠄀豆子~ずっと一緒」、そして前半最後は「大正コソコソ噂話」で、緊張を緩和して締めくくる。
ステージ後半は、民謡の要素が入った合いの手で表現した「我妻善逸~完全版」から。終始スクリーンに映し出されていた善逸の賑やかな表情が、観客の心がほぐしていく。ストリングスが響く中、エレキギターのチョーキングがうねりを上げる「嘴平伊之助~其ノ壱 / 嘴平伊之助~其ノ参」。その後は、鬼の響凱との戦いを経て、「十二鬼月 対峙」からは、クライマックスの下弦の伍 累との戦いへと移っていく。「生生流転」からはセリフ付きの映像が流れ、そこにオーケストラの演奏が重なっていく。アニメとは違い、音楽が主となるのはコンサートならではだが、劇伴がどれほど映像と密接な関わりを持っているのがわかる一幕でもあった。そして、累との決着のシーンをバックに歌われた中川奈美による「竈門炭治郎のうた」は、オーケストラの演奏も相まって、とても感動的に響いてきた。アンコールでは、「鬼滅の刃」無限列車編の主題歌「炎」を演奏し、未来へと繋げていく。
2021.9.4-5 PACIFICO YOKOHAMA NATIONAL CONVENTION HALL
再び、指揮:栗田博文、演奏:東京フィルハーモニー交響楽団のタッグで行われたオーケストラコンサート。『~鬼滅の奏~ 無限列車編』は、劇場版のストーリーをそのまま辿っていくという構成。つまり観客は、映画を追体験していくことになる。劇場版の劇伴もTVアニメ同様、フィルムスコアリングで制作されているので、映像の展開に合った音楽になっている。しかも、このコンサートのためにフルオーケストラ用にアレンジされたものを、生で聴くことができるので、その迫力は凄まじい。映像にキャラクターのセリフは付いていないが、劇場版を何度も観ていた観客は、脳内でキャラクターたちのセリフが再生されていたことだろう。
下弦の壱 魘夢によって、炭治郎が夢の中に囚われていくシーンでは、炭治郎の家族の生きている姿が描かれていくので、音楽の力もあって切なさを感じる。そして、「禰󠄀豆子の炎と覚醒 / 夢への未練」では「竈門炭治郎のうた」のメロディが登場するが、その美しいメロディを聴きながら、炭治郎の進む道が、どれだけ辛い険しいものなのかを想像し、胸が苦しくなる。
「対魘夢 戦闘開始 / 侮辱と怒り」では、バックで魘夢と炭治郎による列車の屋根での戦いが繰り広げられていく。ホルンという楽器の音から、炭治郎の真っ直ぐさや正義感を感じるということができるということで、このコンサートでのオーケストラには、通常4人のホルン奏者が6人編成されているそうだ。そのホルンの音色や、突き抜けて響くギター・ベース・ドラムのバンドサウンド、すべての音が渾然一体となった劇伴の迫力は物凄かった。その後、列車内での戦いに合わせた「列車の変貌 / 触手~霹靂一閃 六連 / 孤軍奮闘~煉獄の目覚め」は、場面が切り替わるたびに、いろいろな楽器が主役になっていく。魘夢を打ち倒す「連撃~碧羅の天~列車横転」も圧巻で、映像に合わせた臨場感ある音楽が、強い没入感を与えてくれた。
休憩を挟んだ後半は、煉獄杏寿郎と上限の参 猗窩座の戦いが繰り広げられていく。魘夢との死闘を経てからの、上弦の鬼の襲撃による絶望感。猗窩座と対峙した緊迫感や恐怖感を、ノイジーなエレキギターと女性のボーカルで表現していく。猗窩座の猛攻に対抗する煉獄の気高き戦いを表した「炎柱・煉獄杏寿郎」のオーケストラサウンドは、彼の正義感を表しているかのようだった。そして「瑠火の言葉~決着」では、ピアノで母との思い出を表現し、後半はコーラスを重ね、一気に壮大になっていく。続く「炭治郎の叫び」で再び流れてくる「竈門炭治郎のうた」のモチーフは、どんな苦難があっても、その都度くじけまいとする炭治郎の想いを表しているよう。「煉獄の最期」「煉獄の訃報」の悲しさと喪失感……音楽はどのような感情にも寄り添うことができるのだと感じた。主題歌「炎」の演奏まで、劇場版を1本まるまる体感できるコンサートだった。
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