金曜日, 5月 9, 2025
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『DEATH STRANDING 2』のスタッフは小島監督のオーダーにどのように応え、ゲームを構築していったか?新川洋司氏をはじめとするキーパーソンが語る


『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』の開発スタッフによるトークセッションが開催され、制作現場の第一線に立つ4名のキーパーソンが登壇した。

前作『DEATH STRANDING』の「配送」という独自のゲーム性を受け継ぎつつ、動的に変化する自然環境や強化された戦闘要素など、数々の新たな挑戦が盛り込まれている。この記事では、レベルデザイン、グラフィック表現、ゲームエンジン、メカデザインといった各分野のキーパーソンに、その開発背景を詳しく聞いた。

登場したのは下記の4人だ。

吉池博明 – リードレベルデザイナー

地形、難易度、自然環境の調整を担当。

内田貴之 – テクニカルアートディレクター、リードエンバイロメントアーティスト、キャラクターやメカ、環境のビジュアルをゲーム内への実装を担当。

酒本海旗男 – チーフテクノロジーオフィサー、テクニカルディレクター、DECIMAエンジン、プログラムを担当。

新川洋司 – アートディレクター、キャラクター&メカデザイン

キャラクターやメカのデザインの原画を担当。

セッションでは、配達や戦闘などのゲームシステムからはじまり、フォトリアルなグラフィック、そして新川氏によるキャラクターとメカのデザインについて触れられている。本稿では、その模様を振り返りながら、クリエイターたちが語る開発の裏話と、作品を支える創造性に触れていこう。

自然環境と戦闘に対するプレイヤーの選択を重視したゲームシステム

――前作からの地続きのゲーム性を踏襲しつつ、細かな部分が大きく進化しています。今回はどのような狙いでシステムを構築されたのでしょうか?

吉池氏(以下、敬称略):前作では「A地点からB地点へ配送する」というゲーム性をベースに、自然地形が脅威になったり、「ミュール」と呼ばれる敵に荷物を奪われたり、その困難をいかに乗り越えて荷物を届けるかが焦点でした。今作では小島監督から「戦闘要素を強化したい」というオーダーをいただき、それに加えてユーザーさんの反応や自分なりに強化したいことを考えたとき、「ルート選択の楽しさ」をより深めるつもりで考えていきました。

今までプレイヤーは「いかに逃げるか」というゲームデザインの中心があったのですが、ステルスで潜り抜けるか、コンバットで撃破して進むか、あるいは険しい地形を越えて敵を回避するか、この3つが状況で選べるように設計しています。「選択」をキーワードに見た目や装備のカスタマイズがあり、プレイヤーの自由な計画に基づいて、どのように荷物を届けるのかというシステムが構築されています。

ゲーム開始後には、さまざまな自然現象や時間経過によるアクシデントが発生し、スタミナやライフに影響を与えますので、そんなときは自分のスキルやツールを駆使して乗り切っていく。逆に行き詰まった際には他プレイヤーからのソーシャル・ストランド・システム経由の助けといった楽しみがあるので、自分のそのときの状況と選択でゴールを目指すように構築されています。

――センサー類などボタン配置が前作から一部変わっているのはなぜでしょうか?

吉池:小島監督から「戦闘要素を強化したい」というオーダーがあり、ゲームデザインの変更に合わせて操作系を最適化しました。プレイヤーが直感的に操作できるよう、キーアサインを見直しています。

戦闘が重視のゲームだとレスポンスが大事ですが、本作のゲーム性だと荷物の挙動も大事。このふたつを同居させるのは大きな課題でした。なんとかチューニングできたかなとは思うんですけど、監督は「戦闘やステルスにより特化したプレイアクションを入れたい」という話でしたので、バックパックを降ろして荷物の影響を受けない状態も作ってほしいとのことでしたので、より選択肢が増えて楽しんでもらえたらいいなと思っています。

――PS4向けからPS5向けに移行して、大きく変わった点は何でしょうか。

本:方向性自体は前作から変わっていませんが、ゲームの変化として大きいのは読み込み時間の短縮です。数秒レベルになったことで、ローディングを意識させずにストーリーへ没入できるようになりました。

――4段階の難易度はどのように調整し、各モードはどのようなプレイヤーに向いていますか。

吉池:「ノーマル」は小島監督が最も遊んでほしいチューニングになっています。監督自身が何周もして、細かく指示しています。より物語を楽しみたい方には「ストーリーモード」、ストーリーを楽しみたいけど、ゲームも軽く楽しみたい方には「カジュアル」をおすすめします。ガチでゲームを楽しみたいなら、最高難易度の「ブルータル」を用意しています。開発のメンバーも人によっては大変な難易度になっています。これは依頼をこなすことで能力アップにつながる「配達人グレード」の評価効率がもっとも高く、速くサムを成長させたいプレイヤーに向いています。

――自然現象と地形変化が大きく進化しましたが、レベルデザインにはどのような工夫や挑戦がありましたか。

吉池:本作のテーマは選択が楽しいゲームにしようというのがありましたので、動的に環境が変化していくことが重要でした。「時間帯」もその一貫ですし、とにかくいろんなことが起きてほしいので自然災害も実装しました。増水も前作からやりたかった要素ではあるんですけど、本作からなんとか実現できましたね。砂嵐に関しては、視界が悪くなるだけでは面白くなくて、「それに巻き込まれるかもしれない」、「だから移動したい」と思うことのほうが面白いと思います。監督もそれに乗ってくれましたので、砂嵐も実際に発生して、それが移動して、消えていくという流れになっています。最初のシーンでも砂嵐を避けることはできて、プレイヤーひとりひとりが違う体験ができるようなデザインを意識しました。

――複雑な地形が多い中、プレイヤーが迷いながらも自力で解決策を見いだせるようにするため、プレイしやすさの面ではどのような点に注力されましたか?

吉池:どちらかというとプレイテストをしていただいた方ががんばってくれたという感じが大きいですね。もちろん最初に設計してはいるんですが、「ここで詰まる」、「ここは分かりにくい」というところは地道にひとつひとつ潰していきました。

あと今回、地域ごとのキャラクターを深掘りしようと思いました。彼らはどういうことに困って、サムにどういうことをしてほしいのか、それをイメージしながらミッションや荷物の内容を決めました。サムの動機付けのセッティングは、少しこだわっている点ですね。

よりフォトリアルになったグラフィックとロケーション

――本格的に次世代機専用タイトルとなった本作ですが、グラフィック面ではどのような進化を目指されましたか?

内田:まずストーリーが主軸になるので、キャラクター表現に関しては、前作よりもクオリティを上げようとしていて、主要キャラクターに関しては、前作の3Dスキャンをしていたものを4Dスキャンで実施しました。筋肉の動きや表情の自然な変形(デフォーメーション)がもっとも強化した部分かと思います。これによってストーリーでキャラクターが演技しているときに、前作よりも感情に訴えかけるのではないかと思います。

ライティングが、オープンワールドに昼夜変化を取り入れたことで、リアリティを追及する意味で基礎研究をする期間を最後までやっていました。プリレンダではなく、精密なリアルタイムシミュレーションは難しいので、どこまでフィジカルライティングで残すのか、緻密に問題点を洗い出して、その一番出ている成果がゲーム開始するときの風景シーンで、あそこが実写のリファレンスを見ながら突き詰めた結果かと思います。

――前作からよりフォトリアルに近づけた秘訣を教えてください。

酒本:リアルに求められる部分はほぼ確立してきていて、そのなかでどの情報をどれくらいの精度で持つか、どういう手段で持つか、というところに落ち着いてくるかなと思っています。そのうえで、リアルタイムで動かさなければいけないゲームなので、すべてを最高クオリティで手段を取れるわけではありません。そこで、『DEATH STRANDING 2』の世界観で必要な要素が出てきたときに、どの要素をどの密度で表現するのが一番絵的に美味しいかを選択していき、さらにそれをアーティストのほうで細かくコントロールしてもらうことで、結果的に今のクオリティが出せているのかなと思います。

前作でも一部アーティストがシェーダーを作っていたのですが、今回はシェーダーを各アーティストが作れるようにして、計算の根っこの部分はエンジニアが担当し、あまりにも物理現象から離れすぎないラインは守りつつ、アーティストのこだわりをより発揮できる体制にしたことで、各々のこだわりが組み合わさり、現状のクオリティを実現できていると思っています。

――さまざまな土地を行き交う本作において、その世界観の違いを描くうえで、どういったこだわりを持って取り組みましたか?

内田:まず意識としては、本作は戦闘要素を強めてはいるものの、荷物の配送がテーマですので、風景の移り変わりやバリエーション数がユーザー体験の面白さに直結することは、監督も「2」の開発の冒頭でも強くおっしゃられていました。前作以上のバリエーションを出すことは意識していたところです。

今回、メキシコやオーストラリアというロケーション設定は、監督が描きたいストーリーに基づいて選ばれたもので、そのもとに「その中のどこを描くか」はアートディレクターの新川と、私にバトンが渡されているんですね。具体的な場所はアートチームが詰めなくてはいけないところで、当時はコロナ禍で、1年半ほどリモート主体の取材が続きました。

メキシコやオーストラリアで、Googleマップによる予備調査をしつつ、現地コーディネーターにGoProでロケハンをしてもらって、そのロケハン動画をもとに追加取材をしてもらうという三段構えで取材を行いました。それらの要素をリモートで共有して、ユーザーが自然を踏破する際に「体感」を得られるロケーションを選んだうえで、新川とタールが侵食したデス・ストランディングの世界観をオーストラリアに反映して、ただの観光地ではない「デスストのなかのオーストラリア」はこだわりを持って取り組んだ部分です。

新川氏に「DHVマゼラン」などのデザインを聞く

――「DHVマゼラン」をはじめ、前作にはないメカやガジェットが多数登場しますが、いずれも独創性に富んでいます。どのようなコンセプトでデザインされ、小島監督からはどのようなイメージを指示されましたか?

新川:いつもそうなんですけど、毎回、新しさを求められるのは大きな挑戦ですね。たとえば「ゴーストメック」という敵キャラクターは、どういった背景でデザインされているのかとか、バックグラウンド込みでのコンセプトデザインを非常に重要視してデザインしています。

今回、登場した「DHVマゼラン」も、実は前作の段階から「巨大なトレーラーに乗って移動する」というコンセプト案が一時期あったんですが、今回は前作で叶わなかったそのアイデアを改めて取り入れ、実装しています。ストーリーやゲームデザインを含めると、こうした「タール潜行艇」みたいな乗り物のほうがいいんじゃないかと、監督からオーダーをもらいデザインしています。

タール潜行艇のコンセプトを立ち上げる際には、ゲーム内でのリアリティをどう見せられるかという部分と、プレイヤーがインタラクションしたときに、どのようなフィードバックが返ってくるかというコンセプトデザインを重要視しています。現実にあったらどうか? というよりかは、ゲーム内とプレイヤーのインタラクションにおいて、どのようにリアルに見せられるかをいつも心がけてコンセプトデザインしています。

監督からの「タール潜行艇」というキーワードから、もっと潜水艦っぽいイメージを想定していたんですが、監督にラフを見せたら、考えていたものがあったみたいで、これでいいやと。どこかで見たことあるデザインで「メタルギアかな?」と思いつつ、トレーラーにもあった合体シーンができたりとか、ゲームを作っていく過程で生まれたメカですね。いろんな作用が起こって、不思議なデザインにできたかなと思ってます。

後部につけた四角いカーゴボックスは、BTを捕獲する設定があったのでそれを取り入れて、クレーンが可動してBTをカーゴに入れる、そういうギミックを盛り込むことで、船でありながらいろんな表情を持つデザインに仕上げています。

――武器も非常に個性的ですが、デザイン上のこだわりは何でしょうか?

新川:これも前作から引き続いて、荷物を運ぶゲームなので、武器も「荷物のひとつ」として捉える必要がある。持てば重さとしてのしかかってきて、何を持っていくかもゲームの選択肢として機能する。武器なんだけど、実際に折りたためて運べるようになって、実際のコンセプトデザインでも、リアルにこだわっていて、機構的にもほぼ嘘がないし、実際に作れば折りたためる。CGだと容積とか嘘を付けれるんですけど、ちゃんと破綻しないようにデザインしています。

――成長したルーがとにかく可愛かったです。

新川:ほかのキャラクターは俳優さんをスキャンして、動きも俳優さんが動いていますが、ルーは赤ちゃんなので、スキャンもモーションキャプチャーも使えず、最終的にはすべて手作業で作られているキャラクターです。これも今までのノウハウがあるからできたと思いますし、とにかくルーが可愛くないとストーリーが展開していきませんので、可愛くできたというのはすごくよかったですね。

――フラジャイルの「手」はいかがでしょうか

新川:これも監督からオーダーがあって、「フラジャイルに手に付けたい」、「首につけたいね」というメッセージが急に送られてきました(笑)。前作にあった「フラジャイル・エクスプレス」の手の骨のデザインがあったので、その柄を書いたらいいのかなと模様として書いて提出したんですけど、監督は「違う」と。

次にメッセージできたのが監督が描いたフラジャイルの絵で、(演じた)レアさんの顔が描いてあって、手が描いてあった。そこからそのままキャラクターデザインにして落とし込みました。やっぱり監督の発想はななめ上をいっている。そのへんをどう咀嚼していくのかは毎回面白いし、難しいところですね。

――ありがとうございました。

『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』についてもっと詳しく知りたい人は、本作を30時間プレイした感想や、小島秀夫監督へのインタビューもチェックしよう。

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