物価高騰が続く昨今、生活費の圧迫は深刻な問題。特に自立したばかりのZ世代にとって、住居費は大きな負担となっている。限られた予算の中で、いかに快適な暮らしを実現するかは喫緊の課題と言える。
賃貸住宅へのリアルな不満
一般社団法人「住宅改良開発公社」が、千葉大学大学院国際学術研究院に調査研究を委託し、全国41市の賃貸住宅に入居しているZ世代1,500人に、住生活の実態、意識、要望などをたずねるアンケートを実施。Z世代の住まいの実態に迫る興味深い調査結果を提示している。
同調査によると、「冬寒い」(32.9%)、「隣の音が聞こえる」(24.5%)、「収納が狭い」(24.0%)といった不満が上位を占めた。
©一般財団法人 住宅改良開発公社
食と住:賃貸住宅の新たなニーズ
また、注目すべきは、「料理がしにくい」(23.7%)という声も多い点。Z世代の34.5%が「毎日料理をする」と回答、週2~3回を含めると約6割が自炊派という結果も出ている。料理への関心は高いものの、現状の賃貸住宅ではそのニーズが満たされていないZ世代が多いという現状が浮き彫りになった。
さらに、「食事サービス」(12.9%)を求める声が最も高く、共用部分に欲しい施設の第5位に「カフェ」(25.1%)がランクインするなど、「食」への関心の高さが改めて確認できる結果となった。
これらのデータから、Z世代の賃貸住宅選びにおける新たな視点が見えてくる。従来の重視点であった間取りや家賃だけでなく、「食」を中心としたライフスタイルとの相性がより重要になっているという点だ。
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未来の住まい:所有か、それとも自由か
「賃貸は仮の住まいで、いつかは住宅を所有したいか」という質問に対し、Z世代の約半数(「かなり当てはまる」21.1%、「ある程度当てはまる」26.4%)と回答。希望する住まいの形態は「戸建て」(37.5%)がもっとも多く、希望面積は「30平米~60平米未満」(34.4%)が最多となっている。
いっぽう、住宅の規模については、4割強が「10世帯未満」(43.9%)の小規模住宅を希望、約半数が「将来的に一人暮らしが理想」と回答した。
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自分らしい空間:Z世代が求める条件
一見、矛盾するようにも見えるこれらの希望──所有への憧れを抱きつつ、現状では小規模で一人暮らしができる賃貸住宅を求めるZ世代。
この二面性は、彼らが「自分らしさ」を大切にしているからこそ生まれたものと言えるだろう。周囲の音や収納スペースの不足といった制約からの解放、自分のペースで生活できる空間、そして自炊を満喫できる環境。これらがZ世代にとっての理想の賃貸住宅ということが調査結果からうかがい知ることができる。
Z世代にとって、賃貸住宅選びは、単なる「住む場所」探しではないようだ。それは、自分らしいライフスタイルを実現するための重要な選択。食へのこだわりやコミュニティへの意識、将来設計など、さまざまな要素を考慮に入れながら、最適な住まいを見つける必要性をみているようだ。
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