情報感度の高いZ世代は、SDGsやエシカル消費への意識が高い……はず。環境問題や社会問題に対するアンテナも敏感で、日々の消費行動においても良識的な選択を心がけている。でも、現実はどうだろうか?
人材サービス企業の「株式会社RECCOO」が運営するZ世代に特化したクイックリサーチサービス「サークルアップ」が発表した最新調査によると、若者の7割が「SHEIN」や「Temu」といったファストファッションブランドの労働問題を認知。それにもかかわらず、同じく7割が利用経験あり。さらに、利用者の6割が「罪悪感を覚える」と答えている。この矛盾、どう解釈する?
©株式会社RECCOO
低価格とトレンドに抗えない誘惑
罪悪感を抱きながらも、なぜZ世代はこれらのブランドを利用するのか?同調査によれば、もっとも多い理由は「衣装として使うため」。イベントやSNS投稿を目的とした、いわば「使い捨て」アイテムとして、割り切って購入するケースが多いようだ。
「私服として着るではなく、一度だけ使う分にはちょうどいい」という声もあるように、Z世代は価格とトレンド、用途を天秤にかけ、独自の基準で消費を判断しているようだと同社は伝える。
けれど、この「割り切り」消費には、見過ごせない落とし穴が潜んでいる。
消費のSNS化?「映え」至上主義の罠
SNSの普及により、いまや誰もが気軽に発信できる時代。特にZ世代にとって、SNSは自己表現の重要な場だ。日常を彩り、個性をアピールし、仲間と共感し合うための必須ツールだからこそ、SNSでの見え方を意識した消費行動が加速しているとも考えられる。
イベントやパーティーで“映える”写真を投稿するため、手頃な価格でトレンドのアイテムを揃えたい。そんなニーズに応えるのが、SHEINやTemuのようなファストファッションブランドなのだろう。ただ、「いいね」やフォロワー数稼ぎのために、倫理的な問題に目をつぶってしまうのは、SNS時代の新たな病理とも捉えられなくもない。
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個性の表現と地球への優しさの両立
Z世代は、ファストファッションの利用を全否定しているわけではない。あくまで「割り切って」利用しているだけ。罪悪感を抱きながら消費する現状を踏まえると、エシカル消費との両立が可能な、新しい選択肢を提示する必要があるのかもしれない。
たとえば、フリマアプリや古着屋で個性を発掘したり、レンタルファッションで賢くトレンドを取り入れたり、サステナブルな素材を使ったブランドを応援したり……。SNSでの発信を通じて、エシカルな消費を仲間と共有することもできる。サステナブルな選択肢は、自己表現の幅を広げ、地球への優しさを示すパスポートにもなるはずだ。
消費は投票?未来をデザインする選択
Z世代は、幼い頃から環境問題や社会問題に触れてきた、意識の高い世代。だからこそ、罪悪感を抱きながら消費する現状に、潜在的なフラストレーションを感じているはず。
これからは、価格やトレンドだけでなく、商品が生まれる背景にあるストーリーや倫理観にも意識を向けたい。エシカルな消費は、社会をより良くする投票行動のようなもの。未来をデザインする力を、一人ひとりが持っていると信じて。
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