🔸 ざっくり内容:
2025年9月10日、ANYCOLORが発表した2026年4月期第1四半期決算によれば、売上高は157億円(前年比112.1%増)、営業利益は70億円(157.6%増)で、営業利益率は44.4%に達しました。これは、エンターテインメント企業として極めて高収益な結果です。2026年の売上目標は500~520億円、営業利益は205~215億円で、上方修正されています。
### VTuberビジネスの成功要因
ANYCOLORの成長の鍵は「拡大より深化」に見られ、コマースとイベントでの成長が顕著です。四半期の売上の約65%がグッズ販売に由来し、ファンの熱量を活用しています。特に、「にじさんじ WORLD TOUR 2025」のような大規模イベントの成功が影響を与えています。これにより、ファンは商品を“買いたいタイミング”で購入しやすくなっており、年間190施策で約4,900SKUの商品展開が行われています。
### 精鋭化するVTuber戦略
売上が増加している中でも新規VTuberのデビュー数は減少。2023年度は31名から2024年度には12名に絞り、その後若干の増加がありました。ANYCOLORは「VTuber1人あたりの売上最大化」を狙っており、既存のVTuberを強化しています。この結果、VTuber1人あたりの年間売上は約1.5倍に増加しています。
### ファンの熱量を経済に変える仕組み
ANYCOLORのビジネスモデルは「ファンの熱量を経済活動に転換する仕組み」で成り立っています。これは、ライブストリーミング、コマース、イベント、プロモーションの4本柱から構成され、各活動が相互に関連しています。在庫リスクを低減するため、需要が確定してから商品を製造する「熱量ドリブン型サプライチェーン」を導入し、高収益を実現しています。
### 制作内製化による利益向上
ANYCOLORは自社内での制作を進める「制作内製化」にも力を入れており、新スタジオを開設することでコスト削減と品質向上を両立させています。これにより、外部に依存せずにコンテンツ制作が可能となります。
### 分散型IPモデルの採用
VTuberに依存するリスクを避けるため、ANYCOLORはファン層を拡大。売上の80%は100人以上のVTuberから得ており、複数のVTuberが収益を支える構造になっています。これにより、タレントの卒業がブランド全体に大きな影響を及ぼさないようにしています。
### キャッシュリッチ企業へ
ANYCOLORは年々増加する営業キャッシュフロー(112億円)を活用し、株主還元や新しいスタジオへの投資などを行っています。2026年度からは配当性向30%以上を目指し、企業としての安定した成長を狙っています。
### 新たなエンターテインメント経済圏の構築
ANYCOLORは単なるコンテンツ企業ではなく、ファンの感情を経済にする仕組みをデザインする企業として成長しています。「VTuberを増やさない」方針は、ファン体験の質を向上させるためのものです。同社が掲げる企業ミッション「魔法のような、新体験を。」は、その方向性を象徴しています。
ANYCOLORは、バーチャルとリアルの境界を溶かし、エンターテインメントの未来を形にする企業として注目されています。
🧠 編集部の見解:
この記事に触れることで、VTuber企業であるANYCOLORが示す新たなビジネスモデルやその成功要因について考えさせられることが多いです。
まず、ANYCOLORが「拡大より深化」を採用している点は興味深いですね。新しいVTuberのデビュー数を減らし、既存のVTuberに焦点を当てることで、彼らのファン体験を深める戦略は明確で、質を重視しています。これにより、ファンの熱量を最大化し、結果的に収益も上昇しています。
さらに、「ライブストリーミング」と「コマース」が組み合わさることで、ファンが意欲的に商品を購入する仕組みが整っています。特に、体験やイベントが収益の大きな柱であり、ファンとの直接的なつながりを感じさせる要素が強いことが、成功のカギとなっているのでしょう。
ここで面白いのは、ANYCOLORの「熱量ドリブン型サプライチェーン」というモデルです。在庫リスクを極力抑え、ファンのニーズを確実に捉えることで、高収益を実現しています。このアプローチは、商品企画のスピード感や柔軟性を持つ企業にとって非常に有効です。
また、スタジオの内製化も注目すべきポイントです。これにより、外注費を削減しつつ、自社のクリエイティブクオリティを高めることが可能です。エンタメ業界は特にクリエイティブな要素が重要なので、こうした取り組みは他社との差別化にもつながるでしょう。
社会的な影響としては、「VTuber」文化のさらなる浸透と、リアル経済との結びつきが挙げられます。VTuberのライブイベントや商品が増加することで、彼らを支持する経済圏が形成され、ファンは「推し活」を通じて自らの価値観を経済的行動に変換しています。これは、特に若い世代において新しい消費のスタイルを生み出していると言えるでしょう。
最後に、ANYCOLORの進化は、エンターテインメント業界における未来のビジョンを示す一例として、今後の動向に注目が集まります。彼らが実現している「感情を経済に変える仕組み」は、他の業界や企業にも示唆を与えるものになるかもしれません。
- この内容のキーワードは「エンタメ経済圏」です。
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