関税を巡る日米の初協議に、トランプ大統領が急遽、参戦するという異例の展開となった。「私も出席する」と、トランプ氏がSNSで表明した現地時間の4月16日朝、赤沢経済再生担当大臣は米首都ワシントンに向かう機中だった。赤沢氏は、ホワイトハウスでトランプ大統領と約50分、続けて、ベッセント財務長官らと協議。日本側は、米国の一連の関税措置を極めて遺憾とし、投資や雇用への悪影響を訴え、措置の見直しを求めた。

トランプ氏は協議の中で、米国製自動車の日本市場での販売不振に強い不満を表明した。2024年の実績によると、日本に輸出された米国ブランドの自動車はわずか2万台弱に留まる一方、北米市場では、日本製自動車が約590万台を記録した。トランプ氏は、米国ブランドの自動車が日本市場で極めて低いシェアにとどまる現状を「不公平」と厳しく非難。同時に、日本の厳格な安全基準などを非関税障壁と指摘し、米国車の市場アクセスを阻害していると主張してきた。トランプ氏は、2024年の米国の対日貿易赤字は685億ドル(約9.7兆円)に達している現状を問題視し、対日貿易赤字の解消を要求した。

トランプ氏は、在日米軍の駐留経費負担についても、日本に対する厳しい見解を示した。トランプ氏は、日本が駐留経費を十分に負担していないと幾度も指摘し、日米同盟の財政的側面における不公平を強調した。しかし、日本側は2022年度から2026年度までの5年間、年間平均2110億円を駐留経費として負担することで、既に日米間で合意に至っている。この合意にもかかわらず、トランプ氏は、日本の貢献を過小評価する姿勢を強調した。中谷防衛大臣は4月18日、ヘグセス国防長官との協議を踏まえ、「米側から具体的な要求もなければ、数字的な提示もない。関税の問題とは別個の問題である」と述べ、在日米軍の駐留経費に関する米国からの具体的な要求がないことを主張した。

赤沢氏とベッセント財務長官による交渉は、米国通商代表部(USTR)がまとめた貿易障壁報告書を基に進められ、米国側は、関税以外の制約や規制の緩和を日本側に迫った。米国は農産物の対日輸出の拡大に言及し、牛肉、コメ、魚介類、じゃがいもなどを重点品目として挙げ、これらの輸入における関税以外の障壁や規制の撤廃を要求した。赤沢氏は、「米国側には具体的な優先順位を示してほしい」と回答した。日米関税交渉の次回会合が4月中に開催される方向で調整が進んでいる。対日交渉を主導するベッセント氏は、「非関税障壁という『悪魔』を完全に取り除くには、時間を要する」と述べ、日本の非関税障壁の解消に向けた交渉に取り組む姿勢を示した。中野国土交通大臣は4月4日、「我が国の自動車基準及び認証制度は、国連の基準に完全に合致しているとの認識を持っている」と述べており、日本の現行基準が国際標準に準拠していることを強調していた。日米交渉の実施を受けて、石破総理は18日、「次回の協議において、具体的な前進が得られるよう、政府部内の検討・調整を加速するよう、直接指示を出した」と語り、日米交渉での成果に強い意欲を示した。

日米間の為替政策を巡る閣僚級協議が、4月24日にワシントンで開催される方向で調整が進んでいることが明らかになった。加藤財務大臣とベッセント財務長官が顔を合わせ、為替市場の動向や通貨政策に関する議論を行う予定。赤沢氏は18日の時点で、「米国側から為替の議論は現時点で提起されていない」と述べたうえで、米国から要請があれば、加藤財務大臣が適切に対応するとの立場を示していた。トランプ氏は3月3日、日中首脳に対し、「通貨を押し下げ続けることはできない」と警告する発言を行い、為替政策を巡る米国の強い懸念を改めて主張していた。この発言の背景には、2019年の日米貿易協定交渉で米国が、「意図的な通貨安誘導」を阻止する「為替条項」の導入を求めたが、最終的に協定に盛り込まれなかった経緯が指摘されている。

トランプ氏が、連邦準備制度(FRB)のパウエル議長の解任に言及し、金融政策を巡る対立が再び表面化した。トランプ氏は4月17日、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で、「今すぐにでも利下げすべきだ。パウエル議長の解任が一刻も早く実現してほしい」と投稿。さらに同日、記者団に「私が辞任を求めれば、彼は出て行くと思う。彼の仕事ぶりには不満だ」と述べ、強い不信感を示した。これに対し、パウエル議長は同日、シカゴでの講演で、「経済状況を慎重に見極め、データに基づく判断を行う」と述べ、FRBの独立性を強調し、政治的圧力には屈しない姿勢を改めて表明した。

一方、ベッセント財務長官は4月14日、ホワイトハウス当局者に対し、パウエル議長の解任は「金融市場の不安定化を招く危険性がある」と繰り返し警告した。市場関係者からも、FRBの独立性に対する懸念が高まっており、トランプ氏の発言が株式市場や債券市場に波乱を引き起こす可能性が指摘されている。パウエル議長は、自身の任期について、「法律上、任期中の解任は認められていない。トランプ氏から辞任を求められても応じない」と明言。2026年5月の任期満了まで職務を全うする意向を示している。トランプ氏の主張は、自身の関税政策によるインフレ圧力と経済成長の鈍化懸念が高まる中、FRBに早期の利下げを迫る狙いがあるとみられる。しかし、パウエル議長は、関税が「少なくとも一時的なインフレ上昇」を引き起こすと警告しており、「利下げのタイミングは慎重に判断される」と強調している。

★ゲスト:ジョセフ・クラフト(経済・政治アナリスト)、峯村健司(キヤノングローバル戦略研究所主任研究員)
★アンカー:末延吉正(ジャーナリスト/元テレビ朝日政治部長)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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