世界各国の先頭バッターとして注目される中始まった、日米の関税交渉。トランプ政権が突き付けてきた要求の具体的な中身が明らかになってきました。日本はどう対応していけばよいのでしょうか。(4月19日OA「サタデーステーション」)

■米中高まる緊張 関税以外でも火花

トランプ政権が新設したウェブサイト。タイトルには、「COVID19の本当の起源」とあります。新型コロナウイルスの発生源は、中国・武漢の研究所から流出したとホワイトハウスは主張しているのです。

中国に対し圧力を強めるトランプ政権。

CNNキャスター(18日)
「アメリカ政府は、中国との貿易にさらなるコストを追加するようです」

アメリカ政府は、中国で造られた船などがアメリカに寄港する場合、手数料を徴収する方針を発表。両国の新たな火種となりそうです。

19日、北京では世界初の人型ロボットのマラソン大会が開かれました。人間が付き添いながら約21キロ走ります。

中国メディアによると、人型ロボット産業は、中国が世界シェアの半分を占めていると言います。ただ、部品などアメリカにも頼らざるを得ない現状もあるそうです。

■対米関税125%発動  中国市民への影響は

その中国は今、アメリカからの輸入品に対する関税を125%に引き上げています。国民の生活にどのような影響があるのでしょうか?サタデーステーションは上海を取材しました。

上海にある飲食店「CHAR CHAR BISTRO」は、アメリカ産牛肉のステーキを売りにしています。

「CHAR CHAR BISTRO」オーナー フランク・リンさん
「(アメリカ産は)香りが濃厚で、私個人的には輸入品の中で1番だと思います」

中国では6番目の輸入量のアメリカ産牛肉。

報告・尾崎文康(ANN上海支局長)
「こちらのアメリカ産ステーキは日本円で1万円ほどなんですが、単純に125%上乗せすると2万2000円を超えてしまいます」

「CHAR CHAR BISTRO」オーナー フランク・リンさん
「アルゼンチン産を使っても(アメリカ産のような)香りを出すことができないが、アメリカ産牛肉を諦めるしかない。もう(他国産への切り替えに向けた)調整を始めている」

アルゼンチン産は3700円とお手頃です。他店舗へ牛肉の卸販売もしているため、影響は計り知れません。

「CHAR CHAR BISTRO」オーナー フランク・リンさん
「アメリカにとっても中国にとってもメリットがない。貿易戦争が終結することを信じている」

中国政府は、関税以外にも様々な対抗措置を取っています。アメリカ映画の輸入量を適度に減らすと中国国家映画局は発表。中国は、世界第2位の映画市場で、アメリカの映画産業に打撃を与える狙いと見られます。

上海市民
「私たち中国人はやはりアメリカの良い映画を見たいと思う」
「(アメリカ映画の上映は)当然減るでしょうね。政策と国際関係を考えれば」

さらにアメリカメディアによると、中国政府は、国内の航空会社にボーイング社の航空機の追加納入を受けないように指示したといい、実際、アモイ航空は返却したそうです。

習近平国家主席は今週、東南アジア各国を訪問し、経済連携の強化や相互関税に抵抗することを呼びかけました。

その一方でトランプ氏は…

トランプ大統領(17日)
「中国は合意ができるだろう。みんなとも合意をする。もしできなくても目標を設定してそれに従ってやっていけばいい」

この先一カ月ほどで全ての国と関税交渉を終えることができると語ったトランプ大統領。

世界の中で交渉の先頭にたったのは日本でしたが、19日、2回目の日米交渉に向けて石破総理大臣と赤沢経済再生担当大臣が協議しました。

赤沢経済再生担当大臣(19日)
「全体としてお互いに納得できるかということをやりながらwinwinの環境を作っていく」

■トランプ氏の要求は?交渉の内幕明らかに

1回目の交渉はどのような内容だったのでしょうか?その裏側が新たにわかりました。

アメリカ側が求めてきたのは、自動車の安全基準や牛肉の検疫など、日本に輸出する際の障壁を取り除くことでした。中でも、トランプ氏は自動車に強い関心を示していたと言い、「もっとアメリカの車を輸入せよ」と訴えたそうです。

赤沢大臣は、どのように向き合っていたのでしょうか?その一端も明らかになってきました。

赤沢経済再生担当大臣(18日に出演した自民党YouTube番組で)
「彼(トランプ大統領)が自分の言葉で話しておられるやつは間違いなく関心が高い。私のお見受けするところ、手元に事務方が用意したのか小さなこれぐらいのサイズのメモが置いてあって」

交渉時の写真を見ると、確かに小さなメモ用紙のようなものがあります。

「それに目を落としながら『これも言っておかなきゃな』っていう感じで言うやつは関心がきっと高くない事項だと思うんで。そういうところも重要な情報ですので」

■“攻めと守り”トランプ流の交渉術

そもそも、トランプ氏が交渉の場に現れるのは、突然決まったことでした。そのトランプ氏の思惑、見えてきた巧みな交渉術について拓殖大学の佐藤教授は。

拓殖大学 佐藤丙午教授
「赤沢さんを厚遇して帰すことによって、今度は赤沢さんが国内で大きな権威を持ちます。つまりトランプ大統領とサシで話をして、トランプ大統領が求めていることを直に聞いてきたのは自分だけなんだという政治的な立場を持ちます。日本国内には日米交渉のこれまでの過去の経緯を十分に熟知した人たちが何人もいますので、日本国内におけるタフネゴシエーター(手強い交渉相手)の立場を弱めるという側面もあったと思います。アメリカが主導して交渉をこの後進めることができる」

一方、2018年に事務方トップとして第一次トランプ政権との貿易交渉にあたった渋谷教授は、ある人物に注目しました。

関西学院大学 渋谷和久教授
「彼女は日本でいえば官房長官なので、官房長官は忙しすぎていちいち個別の政策会議には出ない。そういう意味ではちょっと気になった」

大統領首席補佐官を務める、スーザン・ワイルズ氏。大統領選挙戦では選挙対策本部長を務めました。トランプ大統領の言動を巧みに修正させる「猛獣使い」と称される、側近中の側近です。

「世界中が見てるわけですよ。この関税協議をアメリカが交渉相手をどう扱うのか。トランプさんが本当にキレたらスーザン・ワイルズさんが鎮めないとダメだという、そういう意味での保険だったのかもしれません」

今回の交渉でアメリカ側が輸出を増やしたい農産品についてもわかってきて、肉やコメ、魚介類やジャガイモなどの具体例を挙げました。

「これもただ言ってるだけだと思います。例えば、乳製品が入っていませんでしたけど『乳製品はいらないか?』と聞くと、『そんなことはない』っていう話になる。これは例示であって、とってつけたような要望をとりあえず聞いて、次に日本が提案して、『あなたが要望していることよりもこの日本の提案の方がよっぽどドランプ大統領が求めていることに効果的じゃないか』と説明をすればいいんじゃないかと思います」

■そもそも”思いやり予算”とは?

高島彩キャスター
「トランプ関税をめぐる日米の交渉についてまとめます」

板倉朋希アナウンサー
「新たに分かったことは、アメリカ側からの要求として日本の自動車の安全基準を見直すことや牛肉の検疫など、日本に輸出する際の障壁や制約を取り除くよう求めていること。さらに、コメや魚介類、ジャガイモなどの農産物についても、輸出を増やすことも求めています。これ以外にもトランプ大統領が、在日米軍の駐留経費、いわゆる”思いやり予算”を増やすよう求めたことも分かっています」

高島彩キャスター
「柳澤さん、この“思いやり予算”、そもそも関税とは関係ない話を何でここで出してくるのかという疑問もありますが、“思いやり予算”は改めてどういうものなのでしょうか?」

ジャーナリスト柳澤秀夫氏
「1978年、当時円高ドル安だったんですね、それで在日アメリカ軍の負担が増えたのでそれを軽減するために当時の金丸防衛庁長官が国会で“思いやり”という表現を使ったんです。以来“思いやり予算”というふうな言い方になってきてるんですが、内訳は基地の従業員の経費の一部を負担したり光熱費といったものなんですが、最初は62億円、それが現在は2000億円を超えているんです。5年間で1兆円を超えているんですよ」

高島彩キャスター
「これだけ払い続けている“思いやり予算”をさらに増やさないといけないのでしょうか?」

ジャーナリスト柳澤秀夫氏
「その必要はないんですよね、本当はね。日米間の取り決めでは原則的にはアメリカ側が駐留経費を負担することになっているので日本側は基地の土地の賃貸料といったものを負担することになっているんですけど、基本はアメリカが負担することになっているんです」

高島彩キャスター
「ということはこれだけ払い続ける必要はないということですよね?」

ジャーナリスト柳沢秀夫氏
「ところが今回の貿易を巡る関税交渉で切り離して考えればいいんですけど、それがトランプ大統領に通じるかどうかは別問題だということで、これまでもそうだったんですが、日本側としては防衛装備品をアメリカから調達するような形でアメリカ側からの要求をうまくかわしていこうということになるような感じなんですね」

高島彩キャスター
「(日本とアメリカは)対等の立場にいるわけですよね?どうして差がついてしまうといいますか、交渉のときに日本が下に入ってしまうんでしょうかね」

ジャーナリスト柳澤秀夫氏
「日本としてはアメリカの核の傘に入って、それで守ってもらっているという部分があって、今回もトランプ大統領がアメリカは日本を守らなければいけないけれども、日本はアメリカを守る必要はない、これは不公平だ、という言い方をされると、まあそういう言い方された時にはこういった貿易交渉でもそこを絡めてこられると、なかなか日本側としても要求をかわしにくいという側面はあるんですよね」

高島彩キャスター
「トランプ大統領を相手にどこまで正論が通じるのかというところではありますけれども、日本としては焦ることなく堂々と自国の主張をしてほしいなと思います」 (C) CABLE NEWS NETWORK 2025
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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