TikTokで話題の「原始人美容法」。専門家が警鐘を鳴らすその実態と正しいスキンケア

10ステップもの念入りなスキンケアを行う人がいる一方で、洗顔料と保湿剤だけのシンプルなケアを好む人もいる。

そして今、TikTokを中心に「原始人美容法（Caveman Method）」なるものが注目を集めているのをご存知だろうか。これは、顔を洗わず、保湿もせず、水さえも使わないという、究極の「何もしない」スキンケア法だ。

この過激なトレンドに対し、インターネット上では賛否両論が巻き起こり、皮膚科医からは懸念の声が上がっている。

「何もしない」ことで肌本来の力を取り戻す？原始人美容法の理論

TikTokで拡散されている原始人美容法の支持者たちは、「何もしない」ことで肌が自らバリア機能を修復すると主張する。

「数千年前の原始人のように肌を放っておけば、自然に治癒するという考え方だ」と、認定皮膚科医でありMedpak Solutionsのシニアコンサルタントを務める Stephanie Taylor医師はHer Campusの取材に語っている。「現代のスキンケア製品が肌を傷つけていると信じ、何もしない方が肌は健康になると考える人々がいる」とのことだ。

25年以上の経験を持つスキンケア専門家の Janis Covey医師も、強力なスキンケア製品から肌を休ませることには一定の利点があると認める。

「過度な洗顔や刺激の強い製品を避けることで、肌が自然な保護バリアを再構築できるという利点がうたわれている」と彼女は言う。「また、肌本来の油分を取り除かないことで、肌が時間の経過とともにより効果的に自身の油分生成を調整し始めるという潜在的な利点もある」と付け加える。

専門家が指摘する危険性「何もしない」ことの落とし穴

しかし、この方法を極端に推し進め、水でのすすぎや優しい洗顔さえも省略してしまうことには、大きな問題が潜んでいると専門家たちは警鐘を鳴らす。

Taylor医師は、「顔を洗わないと、汚れ、汗、皮脂、そして細菌が蓄積する。このトレンドを実行すると、肌の状態やニキビが悪化する可能性がある。さらに、日焼け止めを塗らないことも極めて危険だ」と指摘する。

Covey医師もこれに同意し、「多くの人が、ニキビや毛穴の詰まりといった一般的な肌の悩みの悪化を経験する。定期的な洗顔をしないと、汚れ、汗、そして環境汚染物質が肌の表面に蓄積し、感染症を引き起こしたり、既存の肌状態を悪化させたりする可能性がある」と述べる。

つまり、肌のバリア機能を高めるつもりが、かえって肌トラブルを招く危険性があるというわけだ。

スキンケアを「休む」ための正しい方法とは
専門家からのアドバイス

では、もし本当にスキンケア製品が肌に負担をかけていると感じ、肌を休ませたいと思った場合、どうすれば良いのだろうか。

専門家たちは、より安全な方法を提案している。Taylor医師は、「肌を休ませたいからといって、必ずしも全てをやめる必要はない。マイルドな洗顔料と基本的な保湿剤だけでも十分に効果がある。そして、常に日焼け止めを塗ること。これが肌を守るナンバーワンの方法だ」とアドバイスする。

スキンケアを中断している間は、肌の状態を注意深く観察することも重要だ。「肌が過度に脂っぽくなったり、かゆみが出たり、吹き出物が出たりしたら、それは肌を清潔にする必要があるというサインだ」とTaylor医師は言う。

「そして、皮膚科医に相談することも忘れないでほしい。私たちはそのためにいるのだから」と、専門家への相談を促している。

Covey医師はさらに、「毛穴の詰まりを最小限に抑えるためにノーメイクで過ごし、枕カバーを頻繁に交換し、細菌の付着を減らすために顔を触らないようにすること」を推奨する。これらのアドバイスは、肌への負担を減らしつつ、清潔さを保つための具体的な方法を示している。

TikTokで話題の「原始人美容法」は、一見すると魅力的に聞こえるかもしれないが、皮膚の健康を考えると非常に極端なアプローチであると言わざるを得ない。

肌本来の力を信じることは大切だが、現代社会の環境汚染や紫外線の影響を考えると、適切な洗顔と保湿、そして日焼け止めによる保護は、健康な肌を維持するために不可欠な要素である。

もしスキンケアに疑問を感じたり、肌トラブルに悩んだりした場合は、自己流の極端な方法に頼るのではなく、皮膚科医などの専門家に相談し、自身に合った正しいケア方法を見つけることが賢明だろう。本稿で参照した情報は、Her Campusの記事に基づいている。