
モノを所有する喜びから、必要な時に必要なものを利用するスマートな消費へ。
価値観の多様化とともに、消費スタイルも大きく変化している。その流れを加速させているのが「レンタルエコノミー」の台頭だ。洋服から家電、工具まで、あらゆるものがレンタルできるようになり、所有という概念そのものが見直されつつある。
「WIRED」が、先月紹介した記事によると、Tシャツやスピーカーなどのレンタルで、年間なんと最大3万6000ドルを稼ぐ若者もいるという。
服のレンタルで気軽に収入UP
新しい副業のかたち
衣類や日用品を貸し出せるレンタルアプリ「Pickle」は、クローゼットに眠っている服を収益化できるプラットフォーム。100ドルの「ゴールドバーグ」のヘアバンドから、購入価格898ドルの「カルト・ガイア」のドレスまで、20万点以上のアイテムが登録されている。
ターゲットはミレニアル世代とZ世代。CEO兼共同創業者のBrian McMahon氏は、大学生との提携を「このモデルにとって完璧なエコシステム」と表現している。
注目すべきは、ロサンゼルス、ニューヨーク、マイアミで展開されているPickleの宅配サービスだ。衣類版の「DoorDash」とMcMahon氏が形容するように、必要なアイテムを必要な時に手軽にレンタルできる利便性の良さがZ世代を中心に人気となった。とくに週末は需要が高いらしく、予定が入ると「必要なものを借りなきゃ」と考えるユーザーが多いようだ。
所有から「利用」へ
シェアリングエコノミーの進化と消費トレンド
ニューヨーク大学・スターン経営学部教授で、『 The Sharing Economy』の著者でもあるArun Sundararajan氏によれば、衣類や家庭用品のレンタルプラットフォームが登場したのは、2011年から2013年の間だそう。これは、自動車や住宅のレンタルサービスが普及し始めた時期と重なる。
しかし、同氏によると、これらのプラットフォームは、自動車や住宅のレンタル、あるいは配車サービス「Uber」や「Lyft(リフト)」のように、多額のベンチャーキャピタルを惹きつけることはできなかったという。その理由は、「自動車や住宅のレンタルプラットフォームほど大きな収益が見込めないため」だとSundararajan氏は分析する。
しかしPickleの成長は目覚ましい。同社によれば、月間アクティブユーザー数は前年比で3倍に増加し、25年3月には1200万ドルの資金調達にも成功している。Sundararajan氏は、これらのアプリの普及は、所有への執着の衰退と、より責任ある消費へのシフトを象徴するものだと指摘した。
レンタルという選択
ミニマリズムとサステナビリティを両立
環境問題への意識が高まり、ミニマリズムがトレンドとなる現代において、「レンタル」という選択肢は、地球にも財布にも優しい消費行動と言えるのかもしれない。必要な時に必要なものを借りることで資源の無駄遣いを減らせるいっぽうで、不用品を貸し出すことで新たな収入源を確保できる。まさに一石二鳥。
たとえば、結婚式などの特別なイベントに一度しか着ないドレスや、旅行用スーツケース。これらをレンタルすれば費用を抑えつつ、特別な体験を得ることができる。DIYに必要な工具や、キャンプなどのアウトドア用品も同様だ。レンタルを活用すれば、保管スペースの確保やメンテナンスの手間も省けるというメリットも。
そう考えると、現代におけるレンタルは、単なる“節約術”ではなく、環境に配慮し、賢く消費する新しいライフスタイルと言えよう。
所有から利用へと消費の価値観が変化するなか、クローゼットに眠ったアイテムを宝箱に変えるか否か。アナタにもそのチャンスはあるはずだ。
Views: 0