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STP分析は市場という群衆に意味を与えるか?加々本裕樹⌇TV局のデジタル請負人

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概要

この記事では、マーケティングにおけるSTP分析(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)の重要性について説明されています。著者は、すべての人に向けた商品は幻想であり、顧客を個人として捉えるべきだと述べています。STP分析を通じて「意味の差異」を生み出すことで、ターゲットに響く力強いメッセージを伝えることの必要性を強調しています。マーケティングは「選別と排除の技術」であり、「選ばない勇気」が成功への鍵であると結論づけています。

要約(箇条書き)

  • マーケティングの誤解:すべての人に売ろうとすることは幻想。
  • 顧客は個人であり、声が届くのは特定の対象に対してのみ。
  • STP分析の三要素:
    • セグメンテーション:市場の細分化。不要な顧客を排除するプロセス。
    • ターゲティング:狙う顧客の決定。数字ではなく物語が重要。
    • ポジショニング:自社の立ち位置を確立する。機能差異ではなく意味の差異を打ち出す。
  • 実例:地方のクラフトビールメーカーがSTP分析を活用した成功事例。
  • ペルソナを具体化することにより、マーケティング戦略が具体的になる。
  • 課題:ターゲットを狭めすぎるリスク、曖昧な商品ができる可能性。
  • STP分析は「選別と排除の技術」として機能。
  • 次回は「5フォース分析」について触れる予定。

STP分析は市場という群衆に意味を与えるか?加々本裕樹⌇TV局のデジタル請負人

加々本裕樹⌇TV局のデジタル請負人

2025年6月7日 05:03

 マーケティングにおいて最大の誤解は、「すべての人に売ろうとすること」だ。誰にでも使える商品、誰にでも喜ばれるサービス――それは理想ではなく幻想である。
 顧客は“市場”ではなく“個人”であり、彼らの頭の中には無数の選択肢とノイズが渦巻いている。その中では、「あなたにだけ語りかける声」だけが届く。

 この“声の輪郭”を明確にするために生まれたのが、「STP分析」である。

  • Segmentationセグメンテーション(市場の細分化)

  • Targetingターゲティング(狙う顧客の決定)

  • Positioningポジショニング(自社の立ち位置の構築)

 この三つの作業は、マーケティングにおける“戦略の心臓部”だ。現代マーケティングの父と称されるフィリップ・コトラーが1969年に提唱し、その後の実務戦略に組み込まれていった。

 STPの本質は、「すべてを捨てる」ことにある。
 セグメンテーションとは、顧客を性別・年齢・職業・所得などで分類するという意味ではない。むしろ、分類したあとに「関わらない人たちを決める」というプロセスに近い
 都市部在住の30代女性をターゲットにすると決めた瞬間、地方の60代男性を“切り捨てる”覚悟が必要になる。

 そのうえで、〈Targeting〉狙う顧客の決定という“的を絞る”作業に移る。
 ここでもっとも重要なのは、「数字」ではなく「物語」だ。 たとえば、ある美容系サブスクが「20代女性」ではなく「残業帰りにコンビニでスイーツを買うOL」をターゲットにした場合、広告コピーは激変する。“肌がキレイになる”という機能訴求ではなく、“一日がんばった自分に”という感情訴求が中心になる。

 このようにターゲティングとは、“誰に刺すか”ではなく、“どんな物語で巻き込むか”という問いなのだ。

 そして、いよいよ〈Positioning〉自社の立ち位置の構築だ。
 これは戦場の中で、どの旗を掲げるかの選択だ。似たような商品が林立する中で、顧客の頭の中に「ここがあなたの場所です」と空間を確保する必要がある。そのためには、単に機能的差異を打ち出すだけでは足りない。必要なのは、“意味の差異”である。

 アップルは「スペックで世界最高」とは言わない。彼らがユーザーに与えるのは、「洗練された自己像」だ。これは機能ではなく、アイデンティティの提供である。つまり、ポジショニングとは“商品”ではなく“人間の自意識”に働きかける戦略だ。

 ここでひとつ、STPの活用事例を紹介しよう。とある地方のクラフトビールメーカーが直面していた問題は、「地元客には売れるが、それ以上に広がらない」という限界だった。そこで彼らは、

  • S:ビール愛好家 vs ライト層、アウトドア好き vs 家飲み派

  • T:「登山後の一杯を最高にするクラフトビール愛好家」

  • P:「飲む瞬間だけ、山頂に戻れるような余韻」

 というSTPを構築し、キャンプ用品店とのコラボや、パッケージに登山ルートの風景写真を採用した。結果、都市部の登山サークルでSNS拡散が起こり、都心のセレクトショップから声がかかった。分析によって生まれたのは、商品ではなく“シーン”だった。STP分析が、機能を物語に変換した瞬間である。

 STPを考えるときには架空のペルソナに“名前と生活”を与えること。 「30代女性」ではなく、「田中彩、34歳、池袋の外資系IT勤務、月に2回はサウナに行く」とできる限り具体化する。

 こうすることで、広告コピーや商品パッケージの設計が驚くほど具体的になる。

 もちろん、STPにはリスクもある。
 ターゲットを狭めすぎれば、市場の成長余地を自ら閉ざす。
 ポジショニングを誤れば、競合と同質化してしまう。 だが、最大の問題は、『誰にも刺さらない曖昧な商品』をつくってしまう可能性があることだ。

 だからと言って万人に向けた言葉は、誰にも届かない。

 マーケティングとは「選別と排除の技術」である。
 『選ばない勇気』がなければ、『選ばれる理由』は生まれない。
 
STP分析とは、あらゆる顧客を断ち切り、「たった一人」のために商品を磨く作業なのだ。

 次回は「5フォース分析」。
 STPで自分のポジションを見つけたあと、そのポジションに“どれだけの敵がいるか”を読むフレームワークだ。市場は戦場だ。敵の数と武器を数えずして、勝てると思うのは幻想でしかない。おそらく。

加々本裕樹⌇TV局のデジタル請負人

経営者/投資家/講演/プロポーザル方式等事業者選定委員/行政メンター/上級SNSエキスパート/NLPマスター/実践心理学/ファシリテーター/マーケッター/企業研修講師/スタートアップ支援/京都をつなげる30人/宣伝広報塾/イベントプロデュース/F.I.R.E済/アニメの宣伝担当



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