SNS炎上が企業に与える深刻な影響と企業公式SNSアカウントの運用担当者の心得
SNSは企業やブランドにとって、顧客との接点を強化し、認知度を向上させる強力なツールです。
しかし、一歩間違えれば「炎上」につながり、ブランドイメージや信頼性の毀損、売上への悪影響をもたらすリスクが潜んでいます。
本記事では、SNS炎上の基本的な仕組みと、それが企業やブランドに与える影響を解説します。
さらに、企業のSNS公式アカウント運用担当者に向けて、事前準備や心構えについて詳しく解説します。
目次
1. はじめに
企業においてSNS運用が当たり前となった今、企業やブランドにとって「炎上」は決して他人事ではありません。
日々の投稿一つ一つが、ブランドイメージを大きく左右する時代です。
たとえ意図しない発信でも、誤解や批判が一気に拡散され、瞬く間に炎上へと発展するリスクを私たちは常に抱えています。
一度炎上が発生すると、その影響は想像以上に深刻な結果をもたらすことも珍しくありません。
企業への信頼は急速に低下し、製品やサービスの売上に直接的なダメージを与えるだけでなく、採用活動にも悪影響を及ぼすこともあります。
さらに、企業のリカバリーには多大なコストと長い時間が必要になり、対応に当たる広報部門、SNS運用担当者には大きな負担がのしかかります。
だからこそ、広報部門やSNS運用担当者には炎上を正しく理解し、未然に防ぐための知識と、発生時の対応力が求められています。
問題が起きてから慌てるのではなく、事前に対策を講じておくことが企業を守る最善策です。
2. SNS炎上はなぜおきる?
炎上の定義を理解する
まず、SNS炎上とは何でしょうか。
荻上チキ(2007)『ウェブ炎上―ネット群集の暴走と可能性』では、「炎上」を以下のように定義しています。
- ウェブ上の特定の対象に対して批判が殺到し、収まりがつかなさそうな状態
- 特定の話題に関する議論の盛り上がり方が尋常ではなく、多くのブログや掲示板などでバッシングが行われる状態
炎上の威力を際立たせているのは、SNS自体が持つ拡散力の高さです。 SNSが広く普及した今、この機能がより威力を発揮するようになりました。
米国の法学者サンスティーン(2001)は、ネット上の情報収集において、インターネットが同じ思考や主義を持つ者同士をつなげやすいという特徴から「集団極性化」を引き起こしやすくなる現象を「サイバーカスケード」と名付けました。
「カスケード」とは、階段状に水が流れ落ちる滝のことであり、人々がインターネット上のある一つの意見に流され、それが最終的に大きな流れとなることを「サイバーカスケード」と称しています。
かつてなら、企業の不祥事や不適切な対応は、報道機関を通じて時間をかけて広がっていました。 しかし今は、ユーザーの投稿に共感した人々がリツイートやシェアを行い、数時間で全国規模の話題になることも珍しくありません。
そのため、企業のSNS担当者は「発信内容のリスク」を常に意識して運用する必要があります。
炎上の発生パターン
炎上の発生タイミングは主に以下の二つのパターンが考えられます。
一つ目は「リアルタイムで問題が露出するケース」です。
SNS上での問題発言や行動が拡散され、掲示板で議論され、まとめサイトに複製される一次炎上が発生します。
その後、マスメディアが報道することで再度SNSで拡散され、より大規模な二次炎上へと発展します。
二つ目は「過去の問題事象が露出するケース」です。
これは以前は表面化していなかった問題が、社内告発やメディアの独自取材などを通じて明るみに出るパターンです。
デジタルタトゥーと称されるように、一度ネット上に書き込まれた情報は完全に消去することはできません。
このように、SNSでは思わぬタイミングで炎上が発生する可能性があることを常に意識しておく必要があります。
3. SNS炎上が企業に与える6つの影響
次に、SNS炎上が企業に与える6つの主要な影響を整理するとともに、実際に炎上から長期的ダメージを受けた場合の影響も紹介します。
①顧客離れ・売上減少
炎上は顧客の購買意欲に直接影響します。
顧客が企業に対して不信感を抱くと、競合他社への流出や、過激なケースでは不買運動につながることもあります。
また、不買運動の呼びかけには必ずと言ってよいほどSNSが使われます。
たとえば、SNS上で「企業が顧客のクレームを無視した」といった投稿が拡散されると、顧客満足度が低下し、売上減少に直結します。
顧客離れは、特にリピート率が重要な小売やサービス業など直接消費者向けにサービスを提供している企業にとって直ちに直面する問題です。
②従業員の士気低下・離職
炎上は社内の雰囲気にも影響を及ぼします。
従業員がSNS上で批判の矢面に立たされると、モチベーションの低下やストレスが増大し、最悪の場合、離職に至ることもあります。
従業員の士気低下は、生産性やサービス品質の低下にもつながります。
③採用活動への悪影響
炎上した企業は、採用市場でも不利になります。
優秀な人材は、ブランドイメージが悪化した企業を避ける傾向があります。
ミレニアル世代やZ世代は企業の社会的責任や倫理観を重視するため、炎上歴のある企業に対する応募意欲が低下します。
採用難は、長期的な成長戦略に大きな障壁となります。
④経営層・株主・取引先からの信頼低下
炎上は、社外のステークホルダーにも波及します。
経営層や株主は、ブランド価値の低下や株価下落を懸念し、経営陣への信頼を失う可能性があります。
また、取引先やパートナー企業も炎上した企業との関係を見直すことがあり、ビジネスチャンスの喪失につながります。
⑤法的リスクや訴訟リスク
不適切な投稿が著作権侵害や誹謗中傷、名誉棄損とみなされると、法的リスクが生じます。
たとえば、競合他社や他者の名誉を毀損する投稿は、訴訟に発展する可能性があります。
法的対応には時間とコストがかかり、企業のリソースを大きく消耗します。
⑥ブランドイメージの毀損
SNSでの炎上は、企業のブランドイメージに直接的な打撃を与えます。
不適切な投稿や顧客対応のミスが拡散された場合、数分で数千人に拡散される可能性があります。
たとえば、ブランドの価値観や倫理に反する投稿は、消費者の信頼を一瞬で失い、長期間にわたってネガティブな印象を植え付けるレッテルを貼られるリスクがあります。
一度炎上すると、信頼回復には膨大な時間と努力が必要です。
消費者の記憶に残るネガティブな印象は、マーケティングやPR施策で簡単に払拭できるものではありません。
信頼を取り戻すには、透明性のある対応と継続的な改善が求められます。 その過程では、追加のコストやリソースが必要となります。
4. SNS運用担当者は炎上に対してどのような準備ができるか?
ここからは特にSNSの企業アカウントと炎上について考えていきましょう。
SNSで企業アカウントを立ち上げ運用する大きな目的は、企業が「最も身近なブランド発信の場」を持つことです。
企業アカウントでは企業のさまざまな情報を発信する機能を持ちます。加えて、ユーザーとの対話交流を図ることも可能です。
SNSは、適切に活用すれば、貴重な顧客接点として大きな成果を生みます。
しかし、わずか”たった1つの投稿”が炎上につながり、前述のような企業にダメージを与えるリスクがあることも忘れてはなりません。
企業のSNS運用担当者(以下、SNS担当者と記します)が炎上対策として準備できることには次のようなことがあります。
炎上を未然に防ぐためにSNS担当者ができる3つの施策
1. 運用ガイドラインの整備
最初に着手すべきは、「SNS公式アカウントのガイドラインを策定し、運用すること」です。
SNS公式アカウントのガイドラインは、SNS担当者が運用する際の基本的な考え方や約束事を定めておきます。
これは、部署移動などによって運用担当者が変わっても、継続的な運用を可能にするために不可欠です。
また、運用で判断に迷った際に立ち戻る指針にもなります。
SNS公式アカウントのガイドラインには、次のような内容を盛り込むことが望まれます:
- 公式アカウントの運用目的
- 公式アカウントの運用体制
- 投稿フロー(投稿頻度、起案から投稿までのフローなど)
- 投稿ルール(表現方法(トンマナ)、リプライやフォローに対するリアクションなど)
- 心構え(利用者に敬意を払う、差別的な発言をしない、会社のブランドを背負っている自覚を持つなど)
- 禁止行動(法律の遵守(著作権、肖像権、商標権)、企業の機密情報を漏洩しない、好戦的な態度、特定の思想や宗教などを支持する発言など)
- 炎上対策の初動対応(後述します)
- 効果測定(目的に即したKPI設定、観測、結果をアカウント運用にフィードバックするプロセスなど)
ガイドラインは「作って終わり」ではありません。
内容に沿って運用し、運用状況や環境の変化に合わせて定期的に見直すことが重要です。
2. 日常的なSNSモニタリング活動
日々の運用の中で、SNS上の動きを「モニタリング」し、異変をいち早く察知する体制も欠かせません。
火種は、企業の公式アカウントだけで発生するものではありません。
幅広く視野を広げてモニタリングすることが必要です。
具体的には次のような取り組みが考えられます:
- 自社アカウントの投稿に対する反応(コメント、引用リポスト、リプライなど)をこまめにチェック
- 企業名、ブランド名、商品名などでエゴサーチを実施し、第三者の投稿を把握
- 炎上の兆しがある投稿(ネガティブな口コミ、悪意ある拡散など)を早期発見
- 業界全体のトレンドや社会情勢をウォッチし、炎上リスクとなる話題に注意する
特に注意したいのが、「小さなネガティブな兆候」を見逃さないことです。
対応が遅れると、最初は小さな指摘だったものが、瞬く間に大規模な炎上へと発展するリスクがあります。
専用ツールの導入や、モニタリング担当者の明確化も有効です。
3. 初動対応フローの事前準備
どれだけ注意しても、SNSにリスクはつきものです。
だからこそ、「万が一、炎上してしまった場合」の初動対応フローを事前に用意しておく必要があります。
「1. 運用ガイドラインの整備」でも「炎上対策の初動対応」を定めておくことを示していますが、最低限、次のようなことを決めておきましょう:
- 発覚:担当者が火種や炎上の兆しを察知したら即座に社内に報告する。このとき、具体的に誰にどのような手段で第一次報告をするかを定めておきましょう。
- 判断:担当者の判断で、どこまで対応してよいかを決めておきます。以降については、企業の危機管理担当部署が方針を決定し、関係部署に指示する運用を別途定めておく必要があります。これについては、全社的な危機管理マニュアルを整え、このような内容も明文化することが求められます。
- 共有:社内関係部署に共有します。こちらも、共有する範囲や共有方法を定めておきます。
- 記録:対応内容を時系列でこまめに記録します。以降に同様の事案が発生した場合に貴重な参考資料となります。また、対策の立案にも大いに役立ちます。
これを、何種類かのシナリオパターンを用意して、予行演習を行うことをお勧めします。
これは、運用担当者自身の準備だけでなく、第一次報告先や危機管理担当部署、情報の共有先などの方々に当事者意識を持ってもらうことにも役立ちます。
これらを実行するだけで、企業のリスクは格段に下げることができます。
5. 日常的なSNSモニタリング活動
近年のAI技術の革新的進歩により、日常的なモニタリング活動も大きく変わりつつあります。
これまで、SNSモニタリングは外部の専門業者に監視を依頼することが多く行われてきました。
このようなサービスでは、24時間365日スタッフが目視により監視を行い、あらかじめ設定された条件に該当すると、運用担当者などにその旨を報告することが一般的です。
このようなリスクモニタリング活動には、次のような課題があります:
課題1:高コスト
24時間365日目視で監視するスタッフを配置するため、この体制を維持するための人件費が必要であり、サービス利用者に利用料金として転嫁されることになります。
課題2:抽出条件が流動的
一般的に特定のキーワードをあらかじめ設定し、監視スタッフがその内容をもとにSNSを検索し、該当する投稿の有無をチェックします。
しかしながら、社会環境は刻々と変化します。企業も毎日のように新商品を発表したり、新しいプロモーションを展開することもあるでしょう。
その都度短期間でキーワードを見直すことが必要になります。
これを監視スタッフに周知・指導し続けることは、企業側にも監視スタッフ側にも大きな業務および精神的な負担になります。
課題3:対象SNSが流動的
従来は拡散力のあるSNSの代表格であるX(旧Twitter)、ネガティブな話題が発生しやすいSNSである5ちゃんねるあたりが主なモニタリング対象として設定されることが多かったですが、
今や火種が発生するSNSも大きく変わっています。
例えば、ThreadsやTikTokなど急速に利用者を増やしているSNSやGoogle MapやYahoo!ニュースのコメント欄などが炎上の発生源となるケースも珍しくありません。
職場の雰囲気や労使関係に問題がある企業であれば、転職サイトなどで内部情報を暴露されるケースも散見されます。
これらの課題を解決するには、テクノロジーの活用が不可欠です。
最新のSNS炎上監視ツールは、人力ではカバーしきれない部分を補い、効率的かつ迅速な対応を可能にします。
最新のSNS炎上監視ツールを使うメリット
炎上リスクに備えるうえで、最新のSNS炎上監視ツールを活用することには、非常に大きなメリットがあります。
特に重要なのが、以下の2つの機能です。
1. キーワード検知・アラート機能
炎上が起きるとき、多くの場合、「企業名」や「商品名」とともに、「炎上ワード」や「ネガティブワード」が急激に増加します。
最新の監視ツールでは、あらかじめ設定しておいた特定のキーワードが含まれる投稿や、ネガティブな感情を持つ投稿をリアルタイムで検知し、担当者に即座にアラートを出してくれます。
例えば、
- 自社名 × 「クレーム」
- 商品名 × 「買って後悔」
- イベント名 × 「中止」「トラブル」
こういった組み合わせを設定しておけば、通常のモニタリングでは気づきにくい小さな異変にも素早く反応できます。
また、生成AIを活用することで、日本語固有の表現揺らぎなどを考慮したセンチメント分析の精度も相当に高まってきています。
2. 炎上傾向の早期発見 → 初動対応が可能に
ツールの最大の強みは、「火種の段階」で異変を発見できることです。
例えば、投稿のトーンや感情分析を通じて炎上の兆候を早期に発見できれば、
- すぐに社内共有し、対応方針を協議
- 必要に応じて投稿の修正・削除
- 公式アカウントで早期説明・お詫び投稿
など、スピーディーな初動対応が可能です。
この「初動スピード」が、炎上の規模を大きく左右します。
後手に回るのではなく、「火が小さいうちに消す」ためにも、ツールの導入は非常に有効です。
どんな業界のSNS担当者に役立つ?
SNS炎上監視ツールは、業界を問わずすべてのSNS担当者に役立つツールですが、特に以下のような業界の方に強くおすすめします:
- 飲食・小売業界:顧客の口コミやクレームがSNSで拡散されやすく、ブランドイメージに直結します。
- エンタメ・メディア業界:キャンペーンやイベントの反響が大きく、炎上の規模も大きくなりがちです。
- 医療・化粧品業界:健康や安全に関する情報が敏感で、誤情報が拡散しやすい傾向があります。
- 教育・公共機関:信頼性が求められる分野で、炎上が社会的影響を及ぼす可能性があります。
どの業界でも、SNSは顧客との接点であり、炎上リスクは避けられません。
ツールを活用することで、リスクを最小限に抑えつつ、ブランドの信頼性を高めることができます。
SNS炎上は、「起きてから考える」では遅すぎます。
大切なのは、「起きるかもしれない」という前提で、事前に備えておくことです。
そのためには「人力だけに頼らず、テクノロジーを活用する」「炎上の兆しを見逃さず、初動対応に全力を尽くす」。 この2つが欠かせません。
まとめ
SNS運用において、炎上リスクへの備えはもはや必須です。
特にブランドや企業アカウントは、投稿内容だけでなく、ユーザーからのコメントや外部での言及も含め、常に監視体制を整えておく必要があります。
そこで重要となるのが、SNS炎上監視ツールの導入です。
ツールを活用することで、キーワード検知やネガティブな投稿の早期発見が可能となり、初動対応のスピードを大幅に高めることができます。
炎上を未然に防ぎ、万が一の際にも被害を最小限に抑えるためには、最新の監視体制を整備しておくことが担当者としての基本姿勢と言えるでしょう。
今一度、自社のリスク管理体制を見直してみてはいかがでしょうか。
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🧠 編集部の感想:
SNS炎上が企業に与える影響の深刻さを再認識しました。ブランドイメージが瞬時に損なわれるリスクがあるため、事前の対策が必須です。運用担当者は、モニタリングやガイドライン整備を通じて、未然に防ぐ意識を高めるべきです。
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