はじめに
2025/6/2から Snowflake 最大の年次イベント「Snowflake Summit 2025」が開催されます!私も現地サンフランシスコに行きますので、是非みなさまにお会いできれば嬉しいです!そして今回はいつもの生成 AI や Streamlit ではなくデータコラボレーションのアップデートについてお届けさせていただきます。
Snowflake はあらゆるパターンのデータアーキテクチャに対応するプラットフォームを提供しており、データメッシュ (Data Mesh) というデータを各組織が責任を持って管理し、他の組織がそのデータを発見・活用できるという世界観を実現することも可能なプラットフォームとなっています。しかしデータメッシュを実現するためには技術的なハードルだけではなく、組織間の調整やアクセス管理などの運用面での課題が多く、多くの企業が実現に苦労しているのが現実です。
そんな中、Snowflake の Organization Listing に 承認ワークフロー機能 が追加されました!この機能により、企業内でのデータ共有がより手軽かつセキュアに行えるようになり、データメッシュや企業内データカタログを Snowflake 上で簡単に実現できるようになりました。
今回はこの Organization Listing の承認ワークフロー機能について、実際の価値やデータカタログとしての側面、そして簡単な操作方法まで含めてご紹介していきます。
Organization Listing と Internal Marketplace の関係
まず最初に、Organization Listing と Internal Marketplace の関係について整理しておきましょう。この関係を理解することで、今回の承認ワークフロー機能の価値がより明確になります。
Organization Listing とは
Organization Listing は、Snowflake 組織内でデータプロダクトを安全に共有するための仕組みです。データプロバイダーが作成・管理するリスティング (データ共有の単位) のことを指します。
Internal Marketplace とは
Internal Marketplace は、組織内での共有された Organization Listing が一元的に表示されるプラットフォームで、以下の特徴があります:
- 組織内限定: 公開の Snowflake Marketplace と類似しているが、組織内専用
- データカタログ機能: 組織内で利用可能なデータプロダクトを集約・整理
- セキュアなアクセス管理: アカウントターゲティングとロールベースアクセス制御 (RBAC) による管理
- セルフサービス型発見: 外部マーケットプレイスをナビゲートすることなく、内部リソースを発見・活用可能
表裏一体の関係
要素 | 説明 | 役割 |
---|---|---|
Organization Listing | 組織内で共有されるデータプロダクト(コンテンツ) | データプロバイダーが作成・管理する共有単位 |
Internal Marketplace | Organization Listing が表示されるプラットフォーム(場所) | データ消費者がリスティングを発見・アクセスする場所 |
つまり、Organization Listing が「コンテンツ」で、Internal Marketplace が「それを表示・管理するプラットフォーム」 という表裏一体の関係にあります。
承認ワークフロー機能の概要
今回追加された承認ワークフロー機能は、Organization Listing へのアクセス管理を大幅に簡素化する機能です。従来は手動でアクセス権限を設定する必要がありましたが、この機能により以下のようなワークフローが実現できます:
1. リクエストベースのアクセス管理
- データ消費者 (Consumer) がデータにアクセスしたい場合、Snowsight からワンクリックでアクセス要求を送信
- データ提供者 (Provider) は要求を受け取り、承認・拒否を判断
- 承認されると自動的にアクセス権限が付与される
2. 2つの承認方式
承認方式 | 特徴 | 適用ケース |
---|---|---|
Snowflake 内での管理 | Snowsight 上で完結する承認フロー | 迅速な承認が必要な場合 |
外部での管理 | メールや URL での承認フロー | 既存の承認プロセスと連携したい場合 |
3. 柔軟なアクセス制御設定
- 全組織アクセス: 組織内の誰でもアクセス可能
- 選択されたアカウント・ロールのみ: 指定したアカウントやロールのみアクセス可能
- 承認制: 事前承認なしには誰もアクセスできない (デフォルト)
データメッシュの世界観を実現する価値
この承認ワークフロー機能が持つ真の価値は、データメッシュの理念を現実的に実装できることにあります。
1. データの分散所有の促進
従来のデータウェアハウス的なアプローチでは、IT 部門やデータ管理部門が全てのデータを一元管理していることが多かったと思います。しかし、Organization Listing により:
- 各部署が自分たちのデータの責任を持つ ことができる
- データドメインエキスパートがデータ提供者として機能 する
- データの品質と意味について最も理解している人がデータを管理 する
2. セルフサービス型データ発見
承認ワークフロー機能により:
- データ消費者が能動的にデータを発見 できる
- IT 部門やデータ管理部門を介さずに直接データ提供者とやり取り できる
- データカタログとしての機能 を果たし、組織全体のデータ資産が可視化される
3. ガバナンスとアジリティの両立
これまで「ガバナンス強化」と「データ活用の迅速化」は相反するものとされがちでしたが:
- 承認フローによりガバナンスを維持 しつつ
- Snowsight 上での簡単な操作でアクセス要求が可能 になり
- データ活用までの時間を大幅に短縮 できる
実際の操作の簡単さ
承認ワークフロー機能の大きな魅力の一つは、その 操作の簡単さ です。Snowsight ベースで完結する UI により、技術者でなくても直感的に操作できます。
データ提供者側の操作
- Provider Studio で Organization Listing を作成
- Access control セクションで承認ワークフローを設定
- 承認方式の選択 (Snowflake 内 or 外部)
- 承認者の指定 (メールアドレスまたはロール)
- 公開 してリスティング完了
Provider Studio においてアクセス制御の設定を行う
「検出を許可」欄の「リクエスト承認フローの設定」をクリック
「Snowflake でリクエストを管理」を選ぶことでマネージドの承認ワークフローが設定される
あとは必要な設定を行い、右上の「公開」を押すことで Organization Listing が公開される
データ消費者側の操作
- Internal Marketplace でデータを検索・発見
- Request access ボタンをクリック
- アクセス理由の入力 と送信
- 承認通知の受信 後、即座にアクセス開始
Internal Marketplace で組織内で公開されたリストを探し、アクセスリクエストを行う
リクエストの理由を添えてリクエストを送信する
承認者側の操作
- メール通知の受信 または Snowsight での確認
- Internal Requests ページで要求詳細を確認
- 承認・拒否の判断 をワンクリックで実行
- 自動的にアクセス権限が付与 される
リクエストは管理者にメールで通知される
Provider Studio で現在のリクエストを一覧で確認できる
承認理由を添えて承認すると、消費者側でリストが使えるようになる
これらの操作は全て GUI ベース で完結し、SQL の知識も不要 です。これにより、データエンジニアでなくてもデータの共有と活用が可能になります。
具体的なビジネスシナリオ例
シナリオ1: マーケティング部門とセールス部門の連携
背景: マーケティング部門が持つリード情報をセールス部門が活用したい
- マーケティング部門 が Organization Listing でリードデータを公開
- セールス部門 が Internal Marketplace でデータを発見
- アクセス要求を送信 し、マーケティング部門が承認
- リアルタイムでセールス活動に活用 開始
シナリオ2: 財務部門とビジネス部門のレポーティング
背景: 各ビジネス部門が財務データを使った独自分析を行いたい
- 財務部門 が承認制で財務データを Organization Listing に公開
- 各ビジネス部門 が必要に応じてアクセス要求
- 財務部門が適切性を判断 して承認・拒否
- コンプライアンスを保ちつつデータ活用 が実現
シナリオ3: データサイエンスチームとビジネスチームの協働
背景: データサイエンスチームの分析結果をビジネスチームが活用したい
- データサイエンスチーム が分析結果を Organization Listing で共有
- ビジネスチーム が関連するデータセットを発見
- 迅速な承認プロセス により即座にアクセス
- データドリブンな意思決定 が加速
従来の課題と解決策
従来の課題 | Organization Listing の解決策 |
---|---|
データの存在が分からない | Internal Marketplace での一元的なデータカタログ |
アクセス申請プロセスが煩雑 | Snowsight でのワンクリック申請 |
承認に時間がかかる | 自動化された承認ワークフロー |
セキュリティリスクが心配 | 承認制とロールベースアクセス制御 |
データ品質が分からない | データ提供者による説明とメタデータ |
Organization Listing の詳細機能
なお、Organization Listing の基本的な機能や詳細な設定方法については、まつば~らさん が素晴らしい記事を書いてくださっているので、そちらを参照していただければと思います:
最後に
Snowflake の Organization Listing 承認ワークフロー機能は、データメッシュの理念を現実的に実装できるゲームチェンジャー だと感じています。
特に以下の点で、これまでの企業内データ共有の課題を根本的に解決してくれます:
- 技術的ハードルの大幅な低減: GUI ベースの直感的な操作
- ガバナンスとアジリティの両立: 承認フローによる適切な制御
- 組織横断的なデータ活用の促進: アカウント境界を越えた簡単なデータ共有
- データカタログとしての機能: 組織全体のデータ資産の可視化
これまで「理想論」とされがちだったデータメッシュの世界観が、Snowflake 上では 現実的に、そして簡単に 実現できるようになりました。データ活用を組織全体で加速させたい企業にとって、間違いなく価値の高い機能だと思います。
ぜひ皆様の組織でも、この機能を活用してデータドリブンな組織文化の構築を進めていただければ幸いです!
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