この記事は、Red Hatが提供する認定資格試験のチャレンジをより有意義かつ必要な準備をしやすくするための情報を掲示します。
Red Hat認定資格に関する情報は守秘義務のもと情報の取り扱いは厳密に管理されています。
そのため、この記事で取り扱う情報はあくまでもWeb上にRed Hatが公に公開しているもののみをソースとして、それらの情報をどう解釈すればいいかを解説します。
そのため、この記事は読者の合格に近づくことを狙いとしているため、合格を保証するものではないことを冒頭で強調しておきたいと思います。
今回は、Red Hatが提供する認定資格試験である ”EX200 RHCSA認定試験” をベースに、Red Hatの認定資格試験制度について解説します。
この記事でカバー”すること”と”しないこと”
- カバーすること
- Red Hat公式公開情報をベースとした情報提供
- Red Hat認定資格試験の受験前に読んでおいた方が良い資料の提供
- カバーしないこと
- 本番で出題される問題
- Red Hatが公式に公開していない情報提供
1. Red Hat認定資格とは?
Red Hatは、Red Hat Enterprise Linux(RHEL)をはじめとしたオープンソース製品を提供し、それらに対するサポートや更新を含む「サブスクリプションモデル」で知られる企業です。
Red Hat製品は世界中、そして日本国内の大手企業でも幅広く導入されており、
その技術スキルを身につけることは、エンジニアとしての市場価値を高める大きな武器となります。
Red Hatが提供する認定資格は、同社が提供する製品や機能に対する一定の知識を有していることを保証する認定制度です。
Red Hatが提供する認定資格の種類は次のページに掲載があります。
※こちらのサイトは公式情報なのですが、個人的にはサイト移動が多く感じたので手っ取り早く試験が何種類あるのかを調べたい方向けに私がGitHub上に作ったページ他こちらです。
※こちらは私が時間がある際に更新、メンテナンスをしようと思っています。
※JSONでデータを取れるようにしています。
認定資格の一部(抜粋)
{
"exam": "EX280",
"title": "Red Hat Certified Specialist in OpenShift Administration",
"rhca_candidate_for_rhce": true,
"rhca_candidate_for_rhcemd": false,
"rhca_candidate_for_rhccd": true
}
2. Red Hatの認定資格の取得方法は?
Red Hat認定資格は、資格に対する認定資格試験に合格をすれば取得可能です。
この条件は概ね主要なITベンダーの認定資格と同じです。
ちなみに筆者はRed Hat入社前にAWS, Microsoft, Dell Technologies, VMware, LPICなど様々なメーカーの認定資格を取得しています。
これらのメーカー認定資格試験と比べて、Red Hatの試験にはユニークな特徴があります。
それは、実技操作試験 という点です。
以下の図は上記ブログ内からの引用ですが、まさにRed Hat認定資格試験の特徴をよく表した図です。
殆どのベンダー認定資格試験では、単一選択肢 または複数選択肢形式の解答形式なので、問いかけが分からずとも消去法や経験に基づく勘での回答が可能です。全く問題に対する検討がつかなくとも、回答が可能です。
しかし、実技試験の場合はそうはいきません。指示された内容通りの作業、操作が求められます。
その為、単純に難しいと言うよりも、選択式での回答試験とは異なる対策が必要だと言う点は重要なポイントだと言えます。
3. 具体的な試験に対する準備
まず大前提としては、Red Hatでは有償の技術トレーニングを提供しています。数多くのトレーニングコースを設けており、各トレーニングコースには何らかの認定資格試験が対応しています。
準備1. 公式トレーニング受講
認定資格の取得要件として、トレーニングの受講は必須にはなっていません。
しかしながら、コース内で提供される操作演習は認定資格試験の合格に近づくための練習になると言えます。
認定トレーニングの中では様々なお題ごとに操作演習が用意されており、コース期間中およびコース終了日から45日間はコースに対応する演習環境へ24時間アクセスが可能です。
※一部のトレーニングコースでは45日間の延長が無いコースも存在します。
準備 2. 試験範囲の把握
多くの方から 『Red Hatの資格試験は勉強方法が分からない』 と言われます。
実は、私もRed Hatに入社する前は全く同じ疑問を持っており、試験の対策に大変苦労していました。
しかし、実際には公式サイトにしっかりと範囲についての記載はあるんです。
”EX200 RHCSA認定試験” を例に挙げ確認してみましょう。
試験の紹介ページ内には試験の内容というタブが存在し、その中には出題範囲の明記があります。いずれの認定資格試験でも同様の情報が記載されているので、必ず一読し、更にここに書かれた内容を全て出来るようにしておく事が望ましいです。
最後までしっかり読み込むことでしか得られない重要な情報もあります。
(下図はEX200の試験の内容の最後の箇所)
準備 3. 試験ごとの採点手法を理解する
実は認定資格試験ごとに採点方法が異なるということは公式ページ内に明記されています。
本項ではその記述が特に顕著な認定資格試験を何個かピックアップします。
ちなみに、本記事の主役であるEX200については以下で挙げる試験のような特筆事項はないため掲載はしませんが、
EX200以降のより高度な試験を受験する場合には以下の情報を知ってから試験に挑むことを強くお勧めします。
この実践的で実用的な試験では、Red Hat Ansible Engine を使用して現実的なタスクを実行することが求められます。与えられた複数のシステムで Ansible Engine をインストールして構成し、実際の業務で行うものと類似した標準的なシステム管理タスクを実行する必要があります。
Ansible Playbook を作成し、この Playbook を使用してシステムの特定のロールと動作を設定します。作業内容は、試験中に作成された Playbook を新たにインストールされたシステムに適用し、このシステムとサービスが指定どおりに動作するかどうかを検証することで、評価されます。
試験中に、試験の目的に関して達成すべきタスクの一覧が提供されます。ほとんどの場合、それぞれのタスクで最終的に達成すべき状態が説明されています。試験結果は、システムが指定された基準に達しているかどうかに応じて評価されます。
Red Hat 認定 OpenShift 管理者試験 – EX280の場合
この試験は、クラウド・アプリケーション・プラットフォームを設定および管理するために必要なスキルと知識を評価する実技試験です。Red Hat OpenShift Container Platform を使用して一連の設定作業や管理作業を実行し、基準を満たしているかどうかが評価されます。実技試験では、受験者は実際の業務と同様のタスクを実行する必要があります。
Red Hat 認定 OpenShift アプリケーション開発者試験 – EX288の場合
この試験は 1 つのセクションで構成され、所要時間は 3 時間です。この試験は、Red Hat OpenShift Container Platform 環境にアプリケーションをデプロイする受験者の能力を評価する実技試験です。受験者は OpenShift Container Platform DevOps 環境で想定されるタスクに類似したアプリケーションのデプロイに関連する多数のルーチンタスクを遂行し、それらのアプリケーションが特定の客観的基準を満たしているかどうかが評価されます。
準備 4. 製品ドキュメントを読み込む
”EX200 RHCSA認定試験” ページの中にはこのような一節があります。
大半の試験では、製品に付属のドキュメントを試験中に使用できます。
つまり、製品ドキュメントを使いこなせるかどうかも重要なスキルだと言えます。
Red Hatの製品ドキュメントの読み方のコツについては別の記事で紹介をしていますので、詳しくはこちらをご覧ください。
特に製品ドキュメントの中には、コマンドのサンプルや設定ファイルのサンプルなどもあるため、試験の中で回答をする際の大きな助けになる可能性があります。
日に日にテクノロジーが進化する中、あらゆる要素を暗記することは不可能に近くなってきています。
大切なことは 『すべてを暗記する』のではなく、『自分の欲しい情報はここにありそうだ』と情報を探す力を養うこと だと言えます。
準備 5. YoutubeにあるRed Hat公式の動画を見る
試験中の実際の画面の様子を閲覧できる貴重なRed Hat公式資料です。
※同社認定資格試験は情報取扱が厳密と前おいていますが、ここまでの情報を公式が出しているのは個人的には驚きです。
YouTubeは字幕および翻訳の機能もありますのでご活用いただければ日本語でも閲覧ができます。
試験中の操作のイメージを把握できるので、特に初試験を受ける方は事前に見ておくことを強くお勧め致します。
準備 6. 実操作練習環境を構築する
実操作試験ということもあり、やはり実機での操作練習はやっておくに越したことはありません。
もし所有しているPCのスペックに余裕がある場合は”仮想マシン”を使用した環境構築をすることをお勧めします。
◾️Mac上で仮想マシンとして実行されるCentOS Stream 9
仮想マシンとは、『ソフトウェアによって再現された物理的な実態を伴わない、まさにバーチャルなコンピューター』です。そのため、上図では、MacBookの中にバーチャルなコンピューターを1台作成して、その中にOS環境を所有することができます。
仮想マシンを使用するためには、”仮想化ソフトウェア”を準備する必要があります。
調べれば様々なソフトウェアが存在しますが、ここではVMware Workstation ProおよびFusionを紹介します。
こちらに有志によるわかりやすい解説記事がありましたので掲載しておきます。
【VMware Workstation ProとFusionを紹介する理由】
- Windows、Macユーザー、両者にとって無償利用が可能
(以前までは個人利用に限り無償でしたが2024年11月より商用利用でも無償利用可能) - 万が一仮想マシン上のOSで作業ミスをしてもスナップショット機能を使用すれば、任意のポイントにまで戻れる。
- Red Hat Enterprise LinuxやCentOS StreamなどのRed Hat系ディストリビューションのOSが使用可能
本プロダクトで仮想マシン内で実行可能なOSの種類は以下のURLから検索も可能です。
ちなみにこちらは私の友人のkwmt氏(元VMware Japan、現Broadcom)のポストです。
学習環境で使用するOSはどうすれば良いか?
Red Hatの認定資格試験ということもあり、当然準備をするとすればRed Hat Enterprise Linuxが良いのだろうと思われる方が多いと思います。
実際のところ、環境は近いに越したことはありません。
ここで2つほど選択肢をご紹介したいと思います。
- CentOS Streamを使用する方法
- Red Hat Enterprise Linuxを利用する方法
Red Hat Enterprise Linuxについて調べたことがある方なら、おそらく”CentOS”という単語についてもどこかで目にしたことがあるだろうと思います。
2025年7月現在では、”CentOS Stream”という名称となり、従来”CentOS”と呼ばれてきたものとは異なる存在となりました。CentOS Stream自体の登場背景やその成り立ちやRed Hat Enterprise Linuxとの関係については以下の記事が大変よくまとまっていますので、興味がある方はぜひご覧ください。
この記事ではあくまでも、Red Hat認定資格の勉強をするための環境構築の話に主軸を置きます。
それではなぜCentOS Streamを進めるかというとこれらが理由です。
- 技術的な互換性が高い
CentOS StreamはRHELに対するアップストリームであるため、ソフトウェア的な構成要素はほぼRHELである - 入手が簡単
(CentOS Streamは)アカウント作成など無しに、すぐダウンロードができる - 準備が楽
RHELを使用する場合、特にパッケージ管理コマンドでサブスクリプションが必要となる
CentOS Streamをダウンロードする場合はこちらのURLからダウンロードが可能です。
使用されているPCのプロセッサ(CPU)によりダウンロードすべきインストールイメージが異なるのでご注意ください。
ちなみにですが、RHELを使用したいという場合はRed Hatでは個人開発者の開発活動支援のために “個人開発者向けサブスクリプション” を提供しています。具体的な入手方法は当社の次の記事で紹介をしています。
よくある質問
試験は難しいですか?
よく聞かれる質問ですが、前提としては個人の経験値に依存しますと前置きしつつも、私は難しいと感じます。
ただ、この難しさはクリア不能なほど難しい訳ではなく、必要な準備があれば合格は可能だとも言えます。
対策も何もなくて一発で合格できる人は、普段から当該製品に十分触れている方くらいです。
どれくらいの勉強をすれば合格出来ますか?
概ね上の質問とセットで質問されます。私は2-3ヶ月程度で1資格のペースです。
勉強時間は夜20時-24時の間に2時間弱程度で勉強することが多いです。
ただ、家庭環境やプライベートの予定など人それぞれなので、あくまでも自分のペース次第でここは長くも短くもなります。
Red Hat認定資格試験の前に受けておくと良い資格などありますか?
これは完全に個人的な意見ではあるのですが、やはりLPICだったりLinuCは持っていると助かるとは思います。(Red Hatとして推奨している訳ではなく個人の意見です)
但し、LPICやLinuCのレベル3を持っているからといって、RHCSAが簡単に合格できるとは全く思いません。
出題で問われている言葉の意味だったり、基礎コマンドを体系的に学ぶのにLPICもLinuCも役には立つと思います。
これら2つは書籍をはじめとする資料も豊富で、まさに初学者がLinuxの世界に立つのにちょうど良い教材だとは思います。
2011年から2012年にかけて取ったLPIC(2017年に失効済み)
これを取った後に”RHCSA受けさせて欲しい”と上司に依頼するも、当時はリモート試験も無く、東京出張かつ5日間のトレーニング受講付きというので都合がつかず受けられなかったという。10年前から色々と努力してきて良かった。 pic.twitter.com/tY9u9eZGge— Yamato@Red Hat, Senior Instructor (@lab8010) October 16, 2021
認定資格試験対策の書籍などは販売されていますか?
ありません。(少なくとも日本語では)洋書も含めれば、存在はするそうです。
Red Hat Certificationチームでは、書籍の発刊などについても基本的には行う方針はなく、
公式トレーニングの教材が唯一の試験対策資料とも言えます。
ちなみにですが、オライリーラーニングには次のような教材があります。
認定資格の有効期限は?
次のサイト内の以下の文章が参考となります。Red Hatでは資格を取得後、3年間は”Active”としてその資格を取り扱います。3年が経過すると、”non-current”というステータスとなります。
有効期限内に所定の条件を満たせば有効期間の延長が可能です。
Red Hat certifications are current for 3 years. These certifications do not “expire,” or become “terminated” or “invalid,” but they can become “non-current.”
受験の方法や予約方法を知りたい
こちらの記事にまとめています。ご一読ください。もし質問があればコミュニティサイトにてご質問ください。
日本語での受験は可能ですか?
試験によって日本語化されているものとそうでないものがあります。
RHCSA試験のようなメジャーな試験は日本語化されますが、マイナーなものやハイレベルな試験は英語のみの提供となる傾向が強いです。
コミュニティサイトで質問をすれば、試験ごとの言語対応状況は回答してくれます。
なお、私が立ち上げたGitHubページでも追ってこれらの情報を提供しようと思います。
残念ながら再試験となった場合は受験費用がかかりますか?
Red Hat認定資格試験は受験形式が3種類ありますが、そのうちの2種類であれば2回目の再受験費用がかかりません。詳細はこちらの記事をご覧ください。もし質問があればコミュニティサイトにてご質問ください。(2回目)
あとがき 結局のところ…
一言で言えば、公式の試験ページがいかにしっかりと情報を提供してくれているかを多角的に知らせた記事になったように思います。
逆に言えば、これだけ公式の情報が色々と重要な情報を出しているにも関わらずそれが広まっていないということはまだまだメッセージングが足りていないのだろうと思っています。
この記事をはじめ、今後ともいろいろな方法で皆様にRed Hatの認定資格や教育についての情報をお届けできるよう尽力して参りたいと思います。
引き続きRed Hatの教育サービスをよろしくお願いいたします!
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