はじめまして、ますみです!
株式会社Galirage(ガリレージ)という「生成AIに特化して、システム開発・アドバイザリー支援・研修支援をしているIT企業」で、代表をしております^^
- AgentKitとは、「構築・デプロイ・最適化」までを一気通貫で開発できるフルスタックのツールキットです。
- Responses API を基盤としており、3要素(Agent Builder / ChatKit / Connector Registry)から構成されます。
- Agent Builderは、ノーコードのビジュアルキャンバスで、11種類のノードにより条件分岐・ループ・ガードレール・外部連携まで表現可能です。
- ChatKitは、自社のプロダクトに埋め込むことができるUIキットです。
- Connector Registryは、Dropbox/Google Drive/SharePoint/Teams等を一元管理し、ChatGPTとAPI横断で再利用可能です(現状、一部Enterprise/Eduにベータ展開)。
- Copilot Studioは、トリガー/標準コネクタ/多チャネルが強みとする一方で、AgentKitはワークフロー表現力・評価最適化などが強みです。
2025年10月6日、OpenAI社は開発者向けカンファレンス「OpenAI DevDay 2025」にて、エージェント開発のための完全なツールセット「AgentKit」を発表しました 🎉
本記事では、AgentKitの主要コンポーネント(Agent Builder、ChatKit、Connector Registry)の詳細、実装方法、そして他のツールとの比較について徹底解説します。
OpenAI DevDay 2025は、他にもたくさんワクワク発表がされたため、気になる方はぜひ下記の記事をご参照ください👍
また、生成AIの基礎知識について先に学んでおきたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
AgentKitは、「開発者がエージェントを構築・デプロイ・最適化するためのフルスタックのツールキット」です。
一定のシステム思考が必要とされますが、非エンジニア(いわゆる市民開発者)にも使用できるツールであるというのが私の所感です。
これまで、エージェント開発には複雑なオーケストレーション、外部接続、評価パイプラインなどの様々なツールを組み合わせる必要がありました。
しかし、AgentKitの登場により、開発者は視覚的にワークフローを設計し、なおかつ一般的なチャットボットのUI構築をより迅速に組み込めるようになります。
ちなみに、AgentKitは、この「Responses API」という「簡単にAIエージェントの構築をすることができるAPI(従来のChat Completions APIとAssistants APIを統合したAPI)」をベースに構築されています。
AgentKitは、3つの主要コンポーネントで構成されています。
- Agent Builder
- ChatKit
- Connector Registry
それぞれのコンポーネントについて、詳しく解説します。
Agent Builderとは?
Agent Builderとは、「マルチステップのAIエージェントのワークフローを視覚的に構築するためのノーコードツール」です。
ドラッグアンドドロップでノードを配置し、ロジックを組み立てます。
様々な外部ツールと接続したり、OpenAI純正のガードレールの設定をしたりできます。
プレビュー実行機能、評価機能、完全なバージョン管理機能に対応しており、反復開発に最適です。
空のキャンバスから始めることも、事前構築されたテンプレートから始めることもできます。
事例として、Ramp社では、Agent Builderを使用して、空白のキャンバスからバイヤーエージェントをわずか数時間で構築しました。
「視覚的なキャンバスにより、プロダクト、法務、エンジニアリングが同じページに留まり、反復サイクルが70%短縮されました」とコメントしています。
Agent Builderの基本機能
Agent Builderでは、ワークフローを構築するために、次の4カテゴリー・11ノードが用意されています。
Coreノード
- Agent:エージェントの指示、ツール、モデル設定を定義します。各エージェントは明確な役割を持ちます。
- End:ワークフローの終了点を定義します。構造化されたJSON出力形式を指定できます。
- Note:ワークフローに関するコメントや説明を追加します。実際の処理には影響しません。
Toolsノード
- File search:OpenAIプラットフォームで作成したベクトルストアからデータを取得します。
- Guardrails:PII、ジェイルブレイク、ハルシネーションなどの望ましくない入力を監視します。
- MCP:サードパーティツールやサービスを呼び出します。Gmail、Zapierなどと連携できます。
Logicノード
- If / else:条件ロジックを追加します。CEL(Common Expression Language)でカスタム条件を作成できます。
- While:カスタム条件でループします。CELで条件を作成できます。
- User approval:エンドユーザーの承認を求めます。エージェントが作成した内容を人間がレビューできます。
Dataノード
- Transform:出力を変形します(例:オブジェクト→配列)。スキーマに合わせた型の強制に便利です。
- Set state:ワークフロー全体で使用するグローバル変数を定義します。
ChatKitとは?
ChatKitとは、「Agent Builderで作成したAIエージェントを自分たちのプロダクト内に埋め込むためのツールキット」です。
ストリーミング、スレッド管理、モデルの思考過程の表示など、複雑なUI実装を簡単に行えます。
アプリやWebサイトに埋め込むことができ、テーマやブランドに合わせてカスタマイズすることもできます。
ChatKitのアーキテクチャ
ChatKitのセットアップは、次の3つのステップで構成されています。
- Agent BuilderによるAIエージェントの作成:OpenAIのサーバー上にホストされる「AIエージェント(ワークフロー)」を作成します。
- 開発者サーバーのセットアップ:開発者のサーバー(Developer server)で、OpenAI APIを呼び出してセッショントークン(ChatKitフロントエンドがエージェントワークフローに接続するために使用)を生成します。
- ChatKit UIの統合:開発者のクライアント(Developer client integration)に、ChatKit UIを組み込みます。CDNスクリプトを読み込み、カスタム要素を配置するだけで、チャットUIが表示されます。
Connector Registryとは?
Connector Registryとは、「OpenAI製品全体でデータとツールの接続を管理する一元的な管理できる機能」です。
ChatGPTとAPI全体でデータソースを統合し、管理者が複数のワークスペースや組織にわたって管理できます。
利用可能なコネクタ
Connector Registryには、次のコネクタが含まれています。
- 事前構築コネクタ:Dropbox、Google Drive、SharePoint、Microsoft Teamsなど
- サードパーティMCP:Model Context Protocol(MCP)に対応したサードパーティサービス
現在、一部のChatGPT EnterpriseおよびEduのお客様などにのみベータ版として展開されています。
ここでは、Agent Builderを使用して簡単なエージェントを構築する方法を解説します。
今回は、ホームページへの組み込みを目的とした会社説明エージェントを例に、開発手順を紹介します。
会社紹介PDFを用いて、訪問者からの質問に自動で回答するエージェントを作成します。
ステップ1:Agent Builderへのアクセス
まず、Agent Builderにアクセスします。
以下のサイトにアクセスすると、次のような画面が表示されます。
「Create」ボタンをクリックして、新しいワークフローの作成を開始します。
ステップ2:新しいワークフローの作成
「Create」ボタンをクリックすると、次のような画面が表示されます。
ここでは、空白のキャンバスから始めることも、テンプレートから始めることもできます。
今回は、シンプルなエージェントを作成するため、基本的なテンプレートを使用します。
ステップ3:Agentノードの設定
Agentノードをクリックして、エージェントの名前と指示文を設定します。
- エージェント名:会社説明エージェント
- 指示文:あなたは、Galirageという会社についての質問を回答するエージェントです。
この設定により、エージェントがGalirageに関する質問に特化した回答を提供するようになります。
ステップ4:File Searchツールの追加
「Tools」のプラスボタンをクリックして、「File Search」を選択します。
File Searchツールを有効にすることで、アップロードしたPDFファイルからエージェントが情報を検索(RAG)できるようになります。
RAGについて、より詳しく知りたい方は、下記のZenn本をご参照ください◎
ステップ5:PDFファイルのアップロード
「Upload」ボタンをクリックして、会社紹介PDFをアップロードします。
アップロードしたPDFファイルが、エージェントのナレッジベースとして使用されます。
ステップ6:ファイルのアタッチ
アップロードしたPDFファイルを、エージェントにアタッチします。
「Attach」ボタンをクリックすることで、エージェントがこのファイルを参照できるようになります。
ステップ7:プレビュー実行
「Preview」ボタンをクリックして、エージェントを試しに実行します。
ここで、実際に質問を入力して、エージェントが正しく回答するかを確認できます。
実際のプレビュー画面にて、「Galirageとは?」と質問を入力して、送信してみます。
すると、エージェントが検索が必要だと判断して、検索(RAG)を開始し、回答文を作成してくれます。
このように、アップロードしたPDFファイルから情報を検索し、適切な回答を生成することができます。
ステップ8:ワークフローの公開
エージェントの動作に満足したら、「Publish」ボタンをクリックして公開します。
公開することで、このワークフローを本番環境で使用できるようになります。
ステップ9:デプロイ方法の選択
公開が完了すると、次のように「ChatKit」と「Agent SDK」の2種類のデプロイ方法から選択できます。
- ChatKit:UIコンポーネントとして簡単に埋め込む(推奨)
- Agent SDK:SDKによるカスタマイズされた実装
これで、簡単な会社説明エージェントが完成しました!
簡易的な会社説明エージェントに機能を追加して、より実用的なエージェントを構築する方法を解説します。
ここでは、Galirageに関する質問以外を拒否する機能を追加します。
これにより、ホームページなどに一般公開した際に、ユーザーから意図しない使われ方をされた時に回答拒否することで、APIの利用料を抑えることができます。
ステップ1:Endノードの追加
まず、挙動における違いはないのですが、「End」のノードを末尾につけましょう。
Endノードを追加することで、ワークフローの終了点を明確に定義できます。
また、少し凝った出力形式(JSON)を指定することができるようになります。
JSON形式で出力することで、構造化されたデータとして扱いやすくなります。
ステップ2:タスク判別エージェントの追加
ここからは、Galirageの会社説明以外の質問をされた時に、回答を断る設定をしていきます。
新しいAgentを最初と2番目のノードの間に入れて、次の設定を行います。
- Name(名前):タスク判別
- Instruction(指示文):Galirageについての質問をしているかをBooleanで判別してください。
そして、「Add Schema」をクリックして、出力をTRUEかFALSEで出てくるようにします。
ステップ3:Boolean変数の作成
「is_about_galirage」という変数を作成して、説明文に「Galirageについての質問かどうかを示す真偽値」を入力します。
この変数により、質問がGalirageに関連しているかどうかを判定できます。
ステップ4:If/elseノードの追加
「If / else」のノードを追加して、「タスク判別」と「会社説明エージェント」の間に挿入してください。
そして、「is_about_galirage」がTrueだとしたら、「会社説明エージェント」に繋ぐように設定をします。
条件式は「input.output_parsed.is_about_galirage == true」となります。
ステップ5:回答拒否のTransformノード追加
「Transform」というノードを追加して、「output_text」のキーとして、次の文字列に出力が上書きされるように設定します。
"大変恐れ入りますが、Galirageという会社に関する質問しか受け付けていないため、ご回答することができません。"
また、このノードの名前は、「回答拒否」と設定します。
このノードは、Galirage以外の質問に対して固定の拒否メッセージを返します。
ステップ6:プレビューでの動作確認(拒否パターン)
「Preview」を開き、「生成AIとはなんですか?」と聞いてみます。
すると、タスク判別の結果、Galirageと関係ない質問だと判定をされて、回答拒否をしてくれるようになりました。
こうすることで、意図しない使われ方をした時に、回答拒否をすることで、APIの利用料を抑えることができます。
ステップ7:プレビューでの動作確認(成功パターン)
念の為、Galirageと関係ある質問をしたときの挙動も確認しましょう。
「Galirageとは?」と質問をします。
会社説明エージェントが動いていることがわかります。
このように、LLMによって、判別することを「LLM-as-a-Judge」と呼びます。
LLM-as-a-Judgeは、エージェントが適切なタスクを実行するための判断を行う重要な技術です。
Agent Builderで作成したワークフローを、ChatKitを使用してデプロイする方法を解説します。
ChatKitとは?
ChatKitは、OpenAIが提供する埋め込み型チャットUIです。
Agent Builderで作成したAIエージェント(ワークフロー)を、自社のプロダクト(ウェブサイトなど)に簡単に組み込めるウィジェットです。
必要なファイルとその役割
ChatKitを実装するには、バックエンドとフロントエンドの両方にコードを仕込む必要があります。
そのため、今回は、PythonファイルとTypeScriptファイルで説明します。
- Python (.py):サーバー側でChatKitセッション作成とクライアントシークレット発行を担当します。
- TypeScript (.ts):フロントエンド側でチャットUIを表示します。
ファイル構造
次のようなファイル構造(最小構成)で作っていきます。。
/openai-chatkit-quick-start/
├── backend/
│ ├── .venv/ # Python仮想環境
│ ├── server.py # FastAPIサーバー
│ └── requirements.txt # Python依存関係
├── frontend/
│ ├── src/
│ │ └── main.ts # エントリーポイント
│ ├── index.html # HTMLテンプレート
│ ├── package.json # npm依存関係
│ ├── tsconfig.json # TypeScript設定
│ └── vite.config.ts # Vite設定
├── .env.example # 環境変数のサンプル
└── README.md
ソースコードは、下記のリポジトリに公開しているため、もしもよろしければ、ご活用ください。
ChatKitの動作フロー
ChatKitは、次の5つのステップで動作します。
- ユーザーがチャットを開く
- フロントエンドがバックエンド(
/api/chatkit/session
)を呼ぶ - バックエンドがOpenAI APIでセッション作成し、
client_secret
を返す - フロントエンドが
client_secret
でChatKitを初期化 - チャットが指定されたワークフローIDに接続
このフローにより、セキュアかつスムーズなチャット体験を実現できます。
ChatKitのメリット
ChatKitを使用すると、次のメリットがあります。
- 迅速なデプロイ:ワークフローIDを貼り付けるだけで、すぐにデプロイできる
- ホスティング不要:OpenAIがバックエンドをホスティング・スケーリング
- カスタマイズ可能:テーマやブランドに合わせてUIをカスタマイズできる
- メンテナンス不要:OpenAIがバックエンドの更新やメンテナンスを実施
ChatKitの実装手順
先述した説明と一部重複しますが、ChatKitを実装するステップは、次の通りです。
ステップ1:Agent BuilderによるAIエージェントの作成
Agent Builderを使用して、マルチステップのAIエージェント(ワークフロー)を設計します。
ワークフローIDが発行されるため、これをフロントエンドに埋め込むチャットで使用します。
埋め込まれたチャットは、作成したAIエージェント(ワークフロー)をバックエンドとして指します。
ステップ2:サーバーでクライアントシークレットを生成(バックエンド)
サーバー側で、次のようにクライアントシークレットを生成します。
このコードスニペットは、FastAPIサービスを立ち上げ、OpenAI Python SDKを使用して新しいChatKitセッションを作成し、クライアントシークレットを返します。
セッションのクライアントシークレットを返します。
from fastapi import FastAPI
from fastapi.middleware.cors import CORSMiddleware
from openai import OpenAI
import os
from dotenv import load_dotenv
load_dotenv()
app = FastAPI()
app.add_middleware(
CORSMiddleware,
allow_origins=["http://localhost:5173", "http://localhost:3000"],
allow_credentials=True,
allow_methods=["*"],
allow_headers=["*"],
)
openai_client = OpenAI(api_key=os.environ.get("OPENAI_API_KEY"))
@app.post("/api/chatkit/session")
def create_chatkit_session():
"""ChatKitセッションを作成し、client_secretを返す"""
session = openai_client.chatkit.sessions.create(
workflow={"id":"wf_xxx"},
user="default-user"
)
return {"client_secret":session.client_secret}
クライアントシークレットは、ChatKitフロントエンドがチャットセッションを開いたり更新したりするために使用する認証情報です。
保存する必要はなく、すぐにChatKitクライアントライブラリに渡します。
必要な依存関係は、requirements.txt
に記載します。
requirements.txt
fastapi==0.115.0
uvicorn[standard]==0.32.0
openai==1.58.1
python-dotenv==1.0.1
ステップ3:HTMLでChatKitスクリプトを読み込む(フロントエンド)
index.html
ファイルで、ChatKitのCDNスクリプトを読み込むようにします。
index.html
DOCTYPE html>
html lang="ja">
head>
meta charset="UTF-8">
meta name="viewport" content="width=device-width, initial-scale=1.0">
title>ChatKit Demotitle>
script
src="https://cdn.platform.openai.com/deployments/chatkit/chatkit.js"
async
>script>
head>
body>
div class="container">
h1>ChatKit Demoh1>
openai-chatkit id="my-chat">openai-chatkit>
div>
script type="module" src="/src/main.ts">script>
body>
html>
カスタム要素を使用することで、ChatKitのUIを表示します。
ステップ4:TypeScriptでChatKitを初期化(フロントエンド)
main.ts
ファイルで、バックエンドからセッショントークンを取得し、ChatKitを初期化するようにします。
main.ts
async function getChatKitSessionToken():Promisestring> {
const response = await fetch("http://localhost:8000/api/chatkit/session", {
method:"POST",
headers:{
"Content-Type":"application/json",
},
});
const { client_secret } = await response.json();
return client_secret;
}
async function initializeChatKit() {
const chatkit = document.getElementById('my-chat') as any;
if (!chatkit) {
console.error('ChatKit element not found');
return;
}
chatkit.setOptions({
api:{
async getClientSecret(currentClientSecret:string | null) {
if (!currentClientSecret) {
const clientSecret = await getChatKitSessionToken();
return clientSecret;
}
const clientSecret = await getChatKitSessionToken();
return clientSecret;
}
},
});
}
if (document.readyState === 'loading') {
document.addEventListener('DOMContentLoaded', initializeChatKit);
} else {
initializeChatKit();
}
この実装により、フロントエンドがバックエンドからclient_secret
を取得し、ChatKitを初期化するようにします。
ステップ5:npm依存関係のインストール(フロントエンド)
フロントエンド開発に必要な依存関係をインストールするようにします。
package.json
は次のようになります。
package.json
{
"name":"chatkit-frontend",
"version":"1.0.0",
"type":"module",
"scripts":{
"dev":"vite",
"build":"vite build",
"preview":"vite preview"
},
"dependencies":{},
"devDependencies":{
"typescript":"^5.7.2",
"vite":"^6.0.5"
}
}
プロジェクトディレクトリで、次のコマンドを実行します。
ステップ6:バックエンドサーバーの起動(バックエンド)
バックエンドディレクトリで、FastAPIサーバーを起動するようにします。
cd backend
.venv/bin/uvicorn server:app --reload --port 8000
サーバーがhttp://localhost:8000
で起動します。
ステップ7:フロントエンドサーバーの起動(フロントエンド)
別のターミナルで、フロントエンドディレクトリで開発サーバーを起動するようにします。
開発サーバーがhttp://localhost:5173
で起動します。
ステップ8:アプリケーションのテスト
ブラウザでhttp://localhost:5173
にアクセスすると、ChatKitのチャットUIが表示され、Agent Builderで作成したAIエージェント(ワークフフロー)と会話できます。
このように、ChatKitを使用することで、わずかなコードでAIエージェント(ワークフロー)をWebサイトに統合できます。
ステップ9:カスタマイズと反復
より詳細なカスタマイズ方法については、OpenAIの公式ドキュメントを参照してください。
ChatKit と Agent SDKの使い分け
次の表は、ChatKitとAgent SDKの使い分けの目安です。
項目 | ChatKit | Agent SDK |
---|---|---|
デプロイ方法 | ワークフローIDを埋め込む | コードをエクスポートして実行 |
ホスティング | OpenAIが管理 | 独自のインフラで管理 |
カスタマイズ性 | UIのカスタマイズ可能 | コードレベルでカスタマイズ可能 |
メンテナンス | OpenAIが実施 | 自社で実施 |
推奨ユースケース | 迅速なデプロイ・マネージドな運用 | 完全な制御 |
OpenAIのAgentKitと、Microsoft社のCopilot Studioは、どちらもAIエージェント(もしくはワークフロー)を構築するためのプラットフォームです。
しかし、両者には大きな違いがあります。
ここでは、AgentKitとCopilot Studioの詳細な比較を行います。
機能比較
次の表は、AgentKitとCopilot Studioの主要機能を比較したものです。
機能 | AgentKit | Copilot Studio |
---|---|---|
ノーコードによるAIエージェント構築 | ◎ 可能(システムプロンプトや使用可能なツールなど) | ◎ 可能(システムプロンプトや使用可能なツールなど) |
カスタマイズされた挙動制御 | ◎ ノードとエッジのドラッグ&ドロップによるグラフ型のビジュアルツールでワークフロー構築可能(DifyのようなUI / UX)(条件分岐、ループ処理を完全サポート) | ○ ワークフローによる挙動を制御が可能(一方で、AgentKitほど柔軟ではない) |
ウェブ検索ツール | ◎ Web検索ツールを標準提供(細かいカスタマイズが可能) | ○ Web検索ツールを標準提供(AgentKitほど細かいカスタマイズはできない) |
コードインタープリターツール | ◎ Code Interpreterツール標準対応 | ◎ Code Interpreterツール標準対応 |
ナレッジ登録 / RAG | ○ アップロードしたファイルへの検索機能(MCPによる外部検索も可能) | ◎ 豊富なナレッジソース(Web、SharePoint、ファイル等)との標準連携(MCPによる外部検索も可能) |
対応しているコネクタ数 | ○ MCPによる連携可能 | ◎ 豊富な標準コネクタ群あり。また、MCPによる連携も可能 |
他AIエージェントの呼び出し | ◎ 複数AIエージェントをワークフローのなかで作成および接続可能 | ◎ AIエージェント間呼び出し可能 |
トリガー設定 | △ 基本的にチャット開始処理のみ(Agent SDKによるカスタマイズされたトリガーは可能) | ◎ 豊富なトリガー設定(スケジュール、イベント等) |
データ分析機能 | ○ 入出力ログの分析可能(Log)、詳細なトレースの分析可能(Evaluation) | ◎ 入出力ログの分析可能(活動)、詳細なトレースの分析可能(活動マップ)、利用料の分析可能(分析) |
評価機能 | ◎ 高度な評価機能(LLM-as-a-Judge)を提供 | ○ 簡易的な評価機能を提供 |
展開チャネル数 | ◎ ChatGPTの公式埋め込みUI(ChatKit)、SDK(Agent SDK)に対応 | ◎ Teams、Web、モバイルアプリなど多チャネル対応 |
課金形態 | ◎ モデルの利用量に応じた従量課金 | ○ 実行回数に基づく従量課金(パック形式もあり) |
総合評価
AgentKitは、高度なAIエージェントを構築および評価・最適化することを得意としています。
ノードベースのビジュアルエディタにより、複雑な条件分岐やループ処理を含むAIエージェントを柔軟に設計できます。
エンジニア向けに設計されており、コードレベルでのカスタマイズも可能です。
一方、Copilot Studioは、トリガー設定、コネクタ数、チャネル展開などが豊富に用意されています。
非エンジニアに向けて使いやすく設計されており、ビジネスユーザーでも簡単にAIエージェントを構築できます。
Microsoftエコシステムとの統合が強力で、Teams、Power Platform、SharePointなどとシームレスに連携できます。
ツール選定基準
AgentKitを選ぶべき場合:
- OpenAIのプラットフォームを活用したい場合
- 高度なAIエージェント(ワークフロー)制御が必要な場合
- 条件分岐やループ処理を含む複雑なロジックを実装したい場合
- AIエージェント(ワークフロー)の評価と最適化を重視したい場合
Copilot Studioを選ぶべき場合:
- Microsoftエコシステムを活用したい場合(Teams、Power Platformなどへの展開を重視する場合)
- 非エンジニアがAIエージェント(ワークフロー)を構築したい場合
- 豊富な標準コネクタを活用したい場合
- スケジュールやイベントベースのトリガーが必要な場合
AgentKitを使用して、すでに多くの企業が成果を上げています。
企業名 | 事例内容 |
---|---|
Ramp社 | バイヤーエージェントを構築 |
LY Corporation社 | ワークアシスタントエージェントを構築 |
Canva社 | Canva Developersコミュニティ向けのサポートエージェントを構築 |
HubSpot社 | カスタマーサポートエージェントを提供 |
ChatKitは、すべての開発者に一般提供されています。
(Agent Builderはベータ版で利用可能です。)
これらのツールはすべて、標準のAPIモデル料金に含まれています。
※ Connector Registryのみ、一部のChatGPT EnterpriseおよびEduのお客様にのみ展開されています。
-
Q. AgentKitの主要コンポーネントは?
- A. Agent Builder(視覚的ワークフロー作成)、ChatKit(埋め込みチャットUI)、Connector Registry(データ/ツール接続の一元管理)の3つです。
-
Q. 会社紹介PDFを使ったRAGエージェントはどう作る?
- A. Agent Builderでエージェントを作成 → File Searchツールを有効化 → PDFをUploadしてAttach → Previewで動作確認 → Publishで実装できます。
-
Q. ChatKitとAgent SDKはどちらを使うべき?
- A. 最速で埋め込み・マネージド運用ならChatKit(ワークフローIDと
client_secret
で即利用)を使い、コードレベルでの完全制御や独自インフラが必要ならAgent SDKが適しています。
- A. 最速で埋め込み・マネージド運用ならChatKit(ワークフローIDと
-
Q. セキュリティや誤用対策はできる?
- A. GuardrailsノードでPIIやジェイルブレイク等を監視可能です。さらに、LLM-as-a-Judgeでテーマ外質問を拒否し、API費用の抑制にも役立ちます。
-
Q. Copilot StudioとAgentKitの違いは?
- A. Copilot Studioはトリガー/標準コネクタ/多チャネルが強みとする一方で、AgentKitはワークフロー表現力・評価最適化などが強みです。
-
Q. 提供状況と料金は?
- A. ChatKitは一般提供、Agent Builderはベータ。Connector Registryは一部のChatGPT Enterprise/Eduにベータで提供しています。また、いずれも標準のAPIモデル料金に含まれ、追加のツール料は不要です。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました!
この記事を通して、少しでもあなたの学びに役立てば幸いです!
宣伝:もしもよかったらご覧ください^^
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これからの未来において「変わらない知識」を見極めて、生成AIの業界において、読まれ続ける「バイブル」となる本をまとめ上げました。
かなり自信のある一冊なため、もしもよろしければ、ご一読いただけますと幸いです^^
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