木曜日, 5月 22, 2025
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Omoinotakeインタビュー|「薬屋のひとりごと」ED担当、そして武道館へ──紅白のその先にある本音と決意 – 音楽ナタリー 特集・インタビュー



Omoinotakeインタビュー|「薬屋のひとりごと」ED担当、そして武道館へ──紅白のその先にある本音と決意 - 音楽ナタリー 特集・インタビュー

Omoinotakeのニューシングル「ひとりごと」が5月21日にリリースされた。

表題曲はテレビアニメ「薬屋のひとりごと」第2期・第2クールのエンディングテーマとして書き下ろされた1曲。繊細な転調を重ねながら、登場人物たちの揺れ動く内面が丁寧に描かれている。カップリング曲「在りか」には、バンドの目標であった「NHK紅白歌合戦」初出場を経て、改めてメンバーが“Omoinotakeらしさ”と向き合ったときの思いが率直な言葉で表現されている。

音楽ナタリーは4月中旬、ツアー真っ只中の3人にインタビュー。アニメ主題歌の制作アプローチ、13回の転調に込めた意図、「在りか」に投影された現在地と等身大の感情、さらに秋からスタートするツアーや初の武道館公演への思いまで、じっくりと語ってもらった。

取材・文 / 矢島由佳子撮影 / YURIE PEPE

──テレビアニメ「薬屋のひとりごと」第2期・第2クールのエンディングテーマ「ひとりごと」は、1曲の中で13回転調することでリスナーを驚かせています。いつもタイアップする作品からビートや曲調のインスピレーションを得て楽曲を制作されているレオ(藤井)さんですが、今回は「薬屋のひとりごと」の原作を読んで、どんな曲を作ろうと思ったのでしょうか?

藤井怜央(Vo, Key) アニメ本編のネタバレになってしまう部分は伏せるのですが、このクールでは子翠というキャラクターが二面性のある存在として描かれているので、そこを音に落とし込みたいなと思っていました。その部分を、さりげなく転調してキーを変えることで表そうと思ったところから作り始めた曲ですね。いつも作品からもらったインスピレーションをアレンジに反映させてきましたけど、ここまで具体的な形に落とし込んだことはなかったですし、「転調で表してみよう」と思いついたときからすごくやりがいを感じました。作っていて楽しかったです。

藤井怜央(Vo, Key)

──子翠の二面性を表すために、1、2回の転調でとどまるのではなく、13回も転調させる手法を取ったのはどういう発想からですか?

藤井 1人の人間である以上、どんどん変化していくし、2つの側面を持っていても、それらが混ざり合ったりすると思うんです。最初は「D♭メジャー」で始まって、そのあと「D♭マイナー」にいって、長調と短調がグルッとひっくり返ることで“表と裏”を表しているんですけど、そこからは「あっちでもないし、こっちでもない」といった様子を表現したくてこれだけ転調をしました。個人的にリスナーとしても突飛な転調があまり好きではないので、「気付いたら世界がちょっと変わっているな」というくらいの、スルッと転調するものをいつかやりたいなという思いもありました。

──「スルッと転調するもの」のほうが好きというのは、どういう理由からなんですか?

藤井 ずっと同じキーだと聴いていて安心感があるじゃないですか。それを突飛な転調によって裏切ることが苦手で。地続きでありながらちょっとだけ展開が変わるもののほうが、没入した先で世界の色がちょっとだけ変わる感覚になれるから好きなんですよね。

──歌詞は今作もエモアキ(福島)さんによるものですが、原作を読んだうえで、どんなことを思いながら書かれたのでしょう。

福島智朗(B) 第2クールは、全体を通して「哀しさ」が漂っていると感じました。その中でも「ひとりごと」は重要な場面で流れる曲ということもあって、そのシーンにはきっと「喪失」が合うのだろうと。主人公・猫猫はあまり感情を表に出さないタイプのキャラクターですけど、心の中ではこんなことを思っていたらいいなとも考えていました。

「ひとりごと」とは何か

──「薬屋のひとりごと」のテーマソングを書こうとしたとき、いろんな作品への焦点の当て方ができると思うんです。タイトルになっている「ひとりごと」の部分をストレートに切り取ったのは、どんな考えからだったんですか?

福島 過去の「薬屋のひとりごと」のテーマ曲を聴いたときに、薬についての曲を書いている人はすでにいたけど、ひとりごとに関してはまだ誰もいなかったことが、1つの理由としてありました。「日常に存在していた当たり前の会話がひとりごとになってしまった」という絵が浮かんだことがきっかけですね。花や花言葉をテーマにしてみたり、ラブソングっぽいものも書いてみたり、いろんなパターンで詞を考えてみたんですけど、「“ひとりごと”はどうだろう」と思ってからは勢いよく書けました。結果的に、このテーマにして本当によかったです。

福島智朗(B)

福島智朗(B)

──このアニメに限らず、人々の日常における「ひとりごと」に対して、エモアキさんはどんなイメージを持っていますか?

福島 「無意識なひとりごと」と「意識するひとりごと」がありますよね。「ひとりごと」というのは、その両方を含む総称だと思う。それに、口に出さずとも、みんな心の中でずっとひとりごとを言っているようなものじゃないですか。対象がいて、その人に思いを巡らせているときに出るもの。でも、どこにも届かないもの……というイメージですかね。逆に言うと、相槌だけでも会話になるんだなって思います。俺、歌詞を書いてるときはひとりごとをめちゃめちゃ言ってるなあ……歌詞なんてひとりごとみたいなものですもんね。

──でも歌詞も、誰かに届いたときに“会話”になるということですよね。編曲は、Omoinotakeの泣きメロ曲である「Blanco」「東京」「雨と喪失」を手がけてきたShingo.Sさんとの共作ですが、今作ではShingoさんとどういった部分を追求しましたか?

藤井 抽象的な言い方になるんですけど、今までShingoさんと制作した曲は「硬くてずっしりとしたアレンジ」というイメージで。ヒップホップやR&Bのループ系のトラックをよく作られているので、「華やか」「煌びやか」よりも、ドーンと重心が低いようなアレンジをされる方という印象で、「ひとりごと」もそういったサウンドにしたいなと思っていました。Shingoさんと一緒に取り組むからこそ、ある意味Nujabes的な、ピアノのフレーズのループで曲を引っ張っていく感じにしたいなと思って、それが2番のAメロ、Bメロに反映されています。あとはやっぱり「薬屋のひとりごと」からのインスピレーションでオリエンタルな雰囲気を取り入れたいと思っていて、Shingoさんに入ってもらうことで、そこにも磨きがかかりました。2番のピアノはオリエンタルなフレーズをサンプリングっぽくしたり、ピアノのハモリもオリエンタルな雰囲気の度数にしたり、裏で打楽器の音色をたくさん重ねまくったりしています。

冨田洋之進(Dr) 僕はオリエンタルな楽器が欲しくてチャイナシンバルを買いました。この曲のレコーディングの日に初めて使いましたね。スネアもすごくいい音で録れたという自負があります。

冨田洋之進(Dr)

冨田洋之進(Dr)

──ジャケットに関しても聞かせてください。期間生産限定盤には猫猫と子翠が描かれている一方、通常盤と初回生産限定盤は花がモチーフになっています。この花にはどんな意味が込められていますか?

福島 アートディレクターのフジイセイヤさんに、「友情」「協力」「ずっと離れない」という花言葉があるニリンソウをモチーフにしていただきました。通常盤のジャケットは、鏡を使った撮影でニリンソウが引き剥がされている感じを表現していただき、初回生産限定盤は片方が咲いていないようなイメージになっていますよね。

藤井 今気付いたけど、期間生産限定盤の子翠と猫猫の配置と、初回生産限定盤の咲いている花と咲いてない花の構図が……切なすぎます。

「ひとりごと」のジャケット。左から初回限定盤、通常盤、期間生産限定盤。

「ひとりごと」のジャケット。左から初回限定盤、通常盤、期間生産限定盤。

──第2クールが終わったときに改めて「ひとりごと」を聴くと、曲やジャケットから新たな意味が浮かび上がってきて、より深く心に響くものになりそうですね。

福島 そうですね。そういう作りにはできたかなと、本当に思っていますね。

結局、自分は自分のまま

──カップリング曲の「在りか」は、1月にリリースされたアルバム「Pieces」のタイトル曲の続編とも言えるような、バンドのことをまっすぐ歌った曲だと思います。これは詞と曲、どちらが先にできたものですか?

福島 詞先ですね。「Pieces」は去年書いたものだったので、改めて「今自分は何を思っているのだろう」ということを考えながら3月頃に書き出しました。

──2024年はOmoinotakeにとって「紅白歌合戦」をはじめ、これまで目標としていた場所に立つことができた1年でした。それを経て今、何を思うのかが「在りか」では歌われていると思うんですけど、3月頃はどんなことを感じていたんですか?

福島 いろんな場所に立たせてもらって、「変わったでしょう?」と言われたり、自分でも「変わるかな?」と期待したりもしたんですけど、そんなことは一切なくて。結局、自分は自分のままだし、弱いなと思う部分もどんどん増えていくし。「もっと」という欲が出てくる自分も知りました。そういうことを曲に書き残しておきたいなと思いましたね。

──12月中旬に行ったインタビューで「紅白歌合戦」の大舞台に立つ前の心境について聞いた際、「とんでもなく憧れていた場所に立たせていただいても、自分が激変することはないだろうなという予感がする」と話されていました。実際にあの舞台に立って、どんなことを思いました?

福島 実際に「紅白」の舞台に立って、もちろんまた来年も立ちたいなと思いましたし、「一度立っただけで価値観が大きく変わるような人生を送ってないわ」とも思いました。また明日は明日で苦しいなって。ここで死ぬわけではないもんなと思う。もちろんめっちゃうれしかったですけど。俺はそんな感じだったかな。

藤井 出場し続けることを目標にしているので、とにかく「何度も立ちたい」という思いがすごくはっきりしたものになりました。これからもずっと音楽を続けていく中で、もし出られない年があったら、もうとんでもなく悔しいだろうなと想像してしまいますね。家で「紅白」を見ることになっちゃったら、その年をスッキリとした気持ちで終われないだろうなと思う。

冨田 僕は年末ヘトヘトだったので、「紅白」を無事に終えたときは「これで終わるんだ」という安堵がとにかく強かったですね(笑)。

福島 「もう熱出てもいいんだ」って思ったよね(笑)。

Omoinotake

Omoinotake

──本番が終わるまでは体調管理が何より大事ですもんね……。「在りか」では、いくつもの目標を達成しても「小さな心も 悩みの数も」変わらないし、「未完成のままでいい」と歌われています。未完成でもいいと思えるのは、どうしてですか?

福島 もし、いつか迷いや不安がすべてなくなったとしたら、それは俺じゃないなとも思うので。まあそんな人はいないと思うんですけど。ずっと何かしらに憧れ続けて生きていくのが人生なのかなと思いますね。

──だからこそ、ずっと誰かが「眩しい」ように見えても、それでいいと思えたと。

福島 本当にそうですね。「いっちょ上がったね」みたいに言われることにムカついていたのもあったかもしれないです(笑)。「夢が叶った人」みたいな感じで来られると、「簡単に言うなよ」って思うというか。


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──曲の中で書かれているように、バンドの活動規模が大きくなっていくと、「守りたい人」も「踏み外せない」日々も増えていく怖さがあると想像します。エモアキさんが今「守りたい人」という言葉を使うとき、どんな人が思い浮かびますか?

福島 広い意味を持つ言葉ではあると思うんですけど、もちろんメンバーも、スタッフのみんなも、家族も含まれます。守りたい人がどんどん増えていく分、自分がもろくなっていくなあと思いますね。

──エモアキさんから「在りか」の歌詞を受け取ったとき、レオさん、ドラゲ(冨田)さんはどんなことを思ったんですか?

藤井 エモアキの今のまっすぐな思いがズドンと伝わってきました。「Pieces」はズドンと受け取った重たさをそのままバラードにしたんですけど、「ひとりごと」のカップリング曲として、重いバラードにはしたくなくて。エモアキにも「重い曲にはしたくないよね」という感覚があったので、けっこう悩みましたね。“3人の歌詞”として受け取ったので、「3人」を何かで表せないかなと思ったときに、8分の6拍子で、3拍子が基軸となる曲にしようという考えに行き着いて。この形なら「3人」の意味も出せるし、「ひとりごと」と同じCDに入る曲としても、重すぎないけど軽すぎない、いいバランスになりそうだなと思いながら作りました。

藤井怜央(Vo, Key)

藤井怜央(Vo, Key)

冨田 Omoinotakeには8分の6拍子の曲がちょこちょこあるので、ドラムを叩くうえでは「またこんな感じか」と思われないように、ほかと似すぎないようにしようと考えていました。歌詞に関しては、「Pieces」の歌詞を初めて読んだときと同じように、エモアキの言いたいことがスッと伝わってきましたね。手紙をもらっているような感覚でした。

福島 アルバム曲っぽい歌詞だよね。

藤井 そうそう。今までシングルのカップリング曲は、「バンドの強い思い」みたいな歌詞ではなく、タイアップした作品寄りのものだったと思うんです。

福島 「薬屋のひとりごと」寄りの歌詞を書くことも考えたんですけど、この気持ちを書けるのは今しかないだろうなと思って、バンドの現在地について書き残すことにしました。

福島智朗(B)

福島智朗(B)

──この歌詞にメロディを付けるとき、レオさんはどんなことを考えたんですか?

藤井 サビの「だけど それでいいや いや それがいいな」、Bメロの「僕らは何を 創れるんだろう」の歌詞を、メロディで強調させたいなと思っていました。メロディで際立たせたい歌詞を重点的に考えたかったので、「だけど それでいいや いや それがいいな」のパートから作り始めました。「僕らは何を 創れるんだろう」のフレーズも、作れば作るほどに「生みの苦しみ」を感じていることを、メロディにひと癖を出しつつ表現したいなと思っていました。「体温を 渡したい」もすごくエモアキらしい歌詞だから、このフレーズはどんな感じにしようかなと考えたり。年々、歌詞から音の雰囲気が見えてくるものをエモアキが書いてくれるようになっているので、詞先で作ることにやりがいを感じますね。

「その日までは絶対に生きていなきゃ」

──秋には、全国8カ所を巡るツアー「Omoinotake ONE MAN TOUR 2025」が開催されます。まだ先ではありますけど、どんな内容にしたいですか?

福島 アルバムをリリースしたあとのツアーと、そうではないツアー、それぞれのよさがあることを前回のツアー(「Omoinotake One Man Tour “Pieces”」)で感じました。基本的にアルバムツアーでないものは、その時点でのOmoinotakeのベストを表したセトリになると思うんです。俺たちは最高を更新し続けたいし、これから出る曲もあるので、“Omoinotakeのベスト”が秋にどうなっているのかを楽しみにしていてほしいなと思います。

冨田 1本1本、満足してもらえるライブにできたらなと思います。全会場楽しみですけど、僕たちの地元にある島根県民会館はずっとライブをやりたかった場所なので特に楽しみです。「ツアー1本目を島根県民会館でやります!」って言ったときも、地元の方々から「うれしい」「おめでとう」という反応をもらったので、楽しみにしてくれている人がたくさんいることを実感しました。

──島根県民会館は、皆さんにとって思い出がある場所なんですか?

福島 高校生のとき、コンサートスタッフのバイトをやっていて、島根県民会館にも行っていました。

冨田 僕は中学か高校のときに、島根県民会館で母親と上原ひろみさんのコンサートを観ました。めちゃくちゃいいライブでした。

冨田洋之進(Dr)

冨田洋之進(Dr)

藤井 それ、俺も行ったなあ。俺は中2までクラシックバレエをやっていたので、島根県民会館では何回も踊ったことがあります。だから会場や楽屋の光景を見たら当時のことを思い出すかなって、楽しみにしていますね。

──当時の思い出がよみがえってきそうですね。このツアーを経て、来年3月には、初の日本武道館公演の開催が決定しました。武道館に向けて、どんな気持ちですか?

冨田 めちゃくちゃ楽しみですね。母親に「武道館でライブをやることになったよ」ってちょろっと話したら、「その日までは絶対に生きていなきゃいけないね」と言ってくれて。その言葉はすごくうれしかったです。絶対に成功させたいなって思いました。

福島 「Omoinotakeが武道館公演をやってくれたらうれしい」と思ってくれている人がきっといるので、そういう人たちに恩返しの景色を見せられたらいいな……って思うかなあ。

──エモアキさんの素直な思いとしては、今、どういう感情が一番大きいんですか?

福島 「キャパすごいよな」って(笑)。がんばらなきゃなと思います。これから出す1曲1曲で、もっともっとたくさんの人を巻き込んでいかないとなって思っています。

──レオさんはいかがですか?

藤井 バンドとして1つの目標がいい位置に置いてあるなという印象です。エモアキも言ったみたいに挑戦の場になると思うので、来年3月までにリリースする曲で、もっともっと多くの人に俺たちのことを知ってもらって、好きになってもらって、武道館に足を運んでもらえたらと思います。「最高の形で当日を迎えられたらいいな」という思いが、今はすごくいいモチベーションになっています。

Omoinotake

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🧠 編集部の感想:
Omoinotakeのインタビューから、アニメのエンディング曲「ひとりごと」が持つ深い意義を感じました。13回の転調によって、キャラクターの二面性が音楽で表現されている点が特に魅力的です。また、彼らの「在りか」に対する思いを通じて、成長と変化への葛藤が共感を呼びます。武道館公演への期待も高まり、今後の活動が楽しみです。

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