NYT『アメリカでiPhoneを作ることは可能か？』spumoni

Tripp Mickle, The New York Times, 2025/5/23

トランプ大統領は金曜日、アップルに対して攻勢を強め、「iPhoneをアメリカで製造するか、海外製のiPhoneには少なくとも25％の関税を払え」という最後通告を突きつけた。

この発言は、テクノロジー大手のサプライチェーンを米国に戻そうとする10年にわたる取り組みの最新の一手である。トランプ氏は2016年の初出馬時から「アップルに、他国じゃなくてこの国でコンピュータやらを作らせる」と公約していた。

だが、アップルは米国での製造ではなく、中国からインド、ベトナム、タイなどアジア各国への移転を進めてきた。現在、iPhoneの製造はほぼすべてアメリカ国外で行われており、約80％はいまだに中国製と推定される。

アメリカでiPhoneを作ることは可能か？

可能ではある。だが非常に高くつき、困難を伴い、価格は2倍以上の2,000ドル超になると、調査会社TechInsightsのアナリスト、ウェイン・ラム氏は語る。アップルは新しい機械を購入し、中国よりも多くの自動化に依存せざるを得ない。なぜなら米国の労働人口は遥かに少ないからだ。

ラム氏はこう断言する。「現実離れしている。短期的には経済的に実行不能だ」

製造を米国に移す利点も多少はある。たとえば、輸送に伴う環境負荷の削減などだと、かつてアップルの製造設計マネージャーだったマシュー・ムーア氏は述べる。だが、その利点はコストや実現困難さに比べれば微々たるものである。

なぜアップルは米国生産を始めていないのか？

サプライチェーンの専門家によれば、2025年時点でiPhone生産を米国に移すのは愚策だという。iPhoneはすでに約20年の歴史を持ち、アップルの幹部は今後10年でiPhoneは新しいAI端末に取って代わられるかもしれないと述べている。つまり、今莫大な投資をしても回収できない恐れがあるとラム氏は警告する。

ラム氏いわく「iPhone 29が登場するとは思えない」。代わりにアップルは、Vision ProなどのAR製品で自らiPhoneを置き換えようとしている。

またアップルは過去にも米国での製造で苦い経験をしている。2013年にMacデスクトップを米国で組み立て始めたが、交代要員が来る前に従業員がラインを離れるなどトラブルが続出した。また、特注の小さなネジを大量に製造できる業者を見つけるのにも苦労した。

中国にあってアメリカにないものは？

小さな手、膨大で季節的な労働力、そして何百万ものエンジニアである。

中国の若い女性は指が小さく、小さな部品やネジを取り付ける作業において非常に器用で、iPhone製造において価値ある存在だという。アップルが最近行った分析によれば、アメリカでは同等のスキルを持つ人材が見つからなかったという（関係者による匿名証言）。

また、中国には毎年何百万人もの労働者が季節労働のために国内移動する文化がある。彼らは夏から春節（旧正月）までの数か月間だけ働くため、企業は通年での賃金を支払わずに済む。彼らはサプライヤーに近接した工場の寮に住み、サッカー場より長い組立ラインで作業する。

中国には「金型エンジニア」だけでもサッカー場を何面も埋めるほどの人材がいる。対して、米国では部屋一杯にも満たないと、2017年にクックCEOは語っていた。

ムーア氏は言う。「こうした工場は、何千人ものエンジニアを擁する複雑な組織だ。簡単に移設できるものではない」

なぜアップルはインドで生産を始めたのか？

アップルがインドでのiPhone生産を加速させたのは、中国からの輸入にかかる現地税を回避するためだ。当時、インドは中国に次ぐ世界第2位のスマートフォン市場として急成長しており、現地生産なしには価格競争力を保てなかった。

インドは20年前の中国のような状況にあり、膨大なエンジニア人材を抱え、工場への補助金も提供している。そのため、アップルの負担は抑えられている。

インド生産の拡大で、アップルは中国依存を減らしているのか？

実のところ、あまり変わっていない。

iPhoneのディスプレイやFace IDモジュールなど、重要な複雑部品の多くはいまだに中国で製造されている。これらは「サブアセンブリ」と呼ばれる中間工程を経て、インドに運ばれ、最終的にレゴブロックのように組み立てられる。

その結果、製品には「インド組立（assembled in India）」と表示できるが、実際には多くの工程が中国で行われている。

こうしてアップルは米国の関税を回避しているが、中国への依存は依然として強いままである。