「microSD Express」対応のメモリーカードが話題になっている。きっかけは4月に発表されたコンシューマーゲーム機「Nintendo Switch 2」(以下Switch 2)が外部ストレージとしてmicroSD Expressを採用したことだろう。
SD Express/microSD Expressは、2018年にSD Associationが発表した「SD 7.0」(microSDは7.1)で初めて定義された規格であり、その最大の特徴は従来のSDピンインターフェースにPCIeレーンを追加し、NVMeをサポートしたことだ。規格上の最高転送速度はPCIe 3.0を1レーン使った場合に985MB/秒、PCIe 4.0を2レーン使った場合の最高速度は3,940MB/秒に達する。これにともない端子部の形状にも変更が加えられた(ただしメディア側での下位互換は確保している)。
SD Express/microSD Expressともに一般家庭向けの対応機器は現状ほとんどなく、一般流通しているメディアも数少ない。LexarやSanDiskからmicroSD Expressが出ているくらいで、SD Expressでは発売すらされていない。
改めてデジタルカメラの採用状況に目を向けると、ほとんどの現行機種で対応しているメモリーカードはCFexpressかUHS-IIまでのSDHC/SDXCカードが主流。特に8Kを超える動画記録や高速連写性能を謳うモデルはすでにCFexpressに対応している例が多く見られる。今後、SD Expressへの対応が進むのかは不明だ。
というのもCFexpressにはSDフォームファクタにサイズ的に近い、CFexpress Type A規格が存在し、すでにソニーのミラーレスカメラで普及を見ている。中大型のカメラにはCFexpress Type B、小型のカメラ向けにはCFexpress Type Aという棲み分けがすでにできているのが現状だ。
一方、microSDメモリーカードは主にアクションカメラやドローンで採用されており、ここにmicroSD Expressが入り込む余地はあるかもしれない。ただし採用されているmicroSDメモリーカードは(UHS-II製品があるにもかかわらず)UHS-Iどまりであり、いまのところmicroSD Expressが持つ転送速度は必要とされていないようだ。
いまmicroSD Expressが注目されているのは、Switch 2が見慣れぬメモリーカードにのみ対応すると明言していることによるのではないだろうか。Switch 2では4K/60fp、WQHDおよびFHD/120fps(テーブルモード、携帯モードは最大FHD)の映像出力に対応したことで、追加ストレージとしてより高速な記録メディアが必要になった。任天堂は特に言及していないが、「microSDカード」という大きなくくりでは対応しきれなくなったというのが実際のところだと考えられる。
ちなみにSD Expressは2023年のSD 9.1で最低150~600MB/sの転送速度を保証する4段階のスピードクラスを定義している。今後対応製品が市場に出た際に製品ラベルやパッケージに記載されるようになるだろう。
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