危険を顧みない熱意と努力が随所に感じられる作品だ。カメラワークはダイナミックで、実際に車が激しく衝突し、巻き上がる土煙や破片が、スクリーンに飛び込んでくるかのような臨場感は、近年のCGに頼り切った作品とは一線を画す。特に大胆に建物に突っ込むクラッシュシーンは、物理的な衝撃と破壊の美学を見事に捉えているとはいえる。しかし、その圧倒的な実写アクションの輝きを曇らせているのが、残念ながら一貫性に欠けるVFXのクオリティだ。ボアアップされたエンジンルームや、前後入れ替えのエンジンレイアウトといった、メカニカルな見せ場におけるVFXは残念ながら不自然さが残る。実写部分の熱さと精巧さとのギャップが大きく、映像のリアリティを一気に引き下げてしまう。優れた技術を持つカーチェイスアクションチームとの仕事をしているのに、肝心な部分でのVFXの粗さが目立ち、結果としてもったいないという拭えない印象を残す一作目だった。続く二作目はカーチェイスシーンは大幅に「減量」され、そのアクションの密度と規模は著しく低下した。残されたチェイスシーンに関しても、相変わらず現実離れした〈ハリツキ―並み〉の運転技術は高いが、残念ながら魅せ方は並みの技術というしかない。そして本作。バイクチェイスのスピード感や、複雑な動きを伴う追跡劇の技術は高い、意気込みは確かに感じられる。しかし、残念ながら過去作から続く、非常に重要な数カットにおいて、またしても不自然な合成に頼ってしまっている。実写で可能な部分まで安易にVFXに逃げているように見え、そのたびに没入感が削がれるのは極めて残念だ。予算・スケジュールの都合によるものかもしれないが、シリーズを通してここぞという時のVFXの粗さが、作品のポテンシャルを最大限に引き出すことを妨げている。
結果として、三作目もまた、もったいないという印象を拭い去れない。
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