土曜日, 5月 24, 2025
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MVNO業界、競争と変化の波に直面――値上げ・新規参入・法改正がもたらす影響と各社の戦略 – ケータイ Watch


 MMD研究所が主催する「MVNO勉強会 第9回」が23日に開催された。勉強会にはオプテージ、イオンリテール、メルカリの3社が参加し、各社の事業概要やサービスの特徴、さらに今後の業界動向について意見を交わした。

最新市場データの示す現状

 冒頭では、携帯通信業界の2025年版最新市場データが紹介された。データによると、サブ回線の利用者が増加傾向にあり、全体の約13%を占めている。理由についてMMD研究所の吉本浩司氏は、スマートフォンを複数台所有するユーザーが増えているのだろうと話す。

MMD研究所 吉本浩司氏

 一方、メイン回線のシェアを見ると、従来のMNOブランドのシェアが減少するなか、サブブランド、MVNO、オンライン専用プランといった「格安ブランド」が着実に浸透し、シェアを拡大している状況が示された。過去10年間で、生活者・消費者の格安ブランド志向が高まり、浸透してきたという印象だとしている。

 通信費の動向にも変化が表れている。過去には通信費の大幅な下落が続いていたが、直近3年間のデータでは平均金額が再び上昇傾向に転じている。特にMNO、サブブランド、MVNOのすべてで平均金額が上昇しており、今後3年後のインフレ状況なども注目されるとした。

各社の競争戦略と特徴

 勉強会では、登壇した3社がそれぞれの競争戦略とサービスの独自性を紹介した。

 mineoは、「ファンとの共創」をサービスの根幹に据えているとオプテージの松田守弘氏が説明。サービス開始から10年で契約回線数は134万回線に達し、現在も増加中だという。

 mineo最大の特徴は、ユーザーを「ファン」と呼び、コミュニティサイト「マイネ王」を通じて直接対話を行い、サービスを共に作り上げている点。ユーザーからの意見を基に新サービスを開発し、リアル・ウェブイベントを通じてファンとのつながりを強化している。特にコミュニティ運営は新規ユーザー獲得だけでなく、継続利用にも効果を発揮しており、疑問を解決したり他ユーザーから助けてもらえる安心感が、定着率向上に繋がっているという。

 イオンモバイルは、イオングループならではの強みを活かした通信サービスを展開。イオンリテールの井原龍二氏は、料金プラン変更の容易さや、業界でも珍しい「シェアプラン」の利便性を強みとして挙げた。特にシェアプランは近年契約数を伸ばし、現在は契約全体の約4割を占めるという。

 また、全国のイオン店舗網を活用した店頭サポートも競争力のひとつとし、今後はイオングループの金融・決済サービスと連携した独自の「経済圏」を活かして強化したいと語った。契約数は順調に増加し、解約率も低下傾向にあるとのこと。

 メルカリモバイルは、今年3月4日のサービス開始以降、フリマアプリ「メルカリ」との連携を最大の武器としている。メルカリの永井美沙氏は、同社のミッション「あらゆる価値を循環させる」に基づき、日本初となる「ギガの売買」サービスを導入。余ったデータ容量(ギガ)をメルカリ上で出品・売買できる仕組みで、ユーザーの関心を集めているとした。

 23日現在は、2GB以上の取引での平均価格が39円、契約ユーザーの約2人に1人がギガの売り買いを経験しているという。今後は、メルカリユーザー向けのロイヤリティプログラムも展開し、「メルカリモバイルを使わない理由がない」と思ってもらえるようなサービスを目指す考えを示した。

業界変化への対応

 近年のMNOによる料金プランの値上げ傾向について、MVNO各社にとっては料金面での競争優位が再び強まる好機だとの見方も示された。価格競争が緩和されることで、MVNOにとって歓迎すべき側面もあるという。

 イオンリテールの井原氏は、KDDIによる既存プランの値上げについて「これまでになかった動き」とし、UQ mobileの値上げについてはMVNOを競争相手と見ていない現状への課題だと指摘。MVNOは価格競争だけでなく、それぞれの独自サービスを強化し、MNOと棲み分けていくことが重要だとした。

イオンリテール 住居余暇本部 モバイル事業部 イオンモバイル商品統括G マネージャー 井原龍二氏

 MVNO市場への新規参入企業の増加については、オプテージ・イオンリテール両社とも歓迎の意を表明。カブコム、メルカリ、JALなどの参入により、市場全体が活性化し、ユーザーにとっての選択肢が広がる点を前向きに捉えている。今後は、これまで想像もしなかった異業種からの参入も期待されている。メルカリの永井氏も、MVNOの選択肢拡大は業界にとってプラスであり、過去3年でMNO以外のシェアが伸びた傾向はさらに加速するのではないかと述べた。

メルカリ Director of Business and Marketing 永井美沙氏

 さらに、来年4月から予定されるマイナンバーカードによる本人確認厳格化の影響についても議論。ICチップ読み取り必須となることで、NFC非対応スマホ利用者のオンライン契約が難しくなり、店舗を持つMVNOには新たな強みになるとの見方が示された。一方、これに伴うシステム投資負担により、一部事業者の市場撤退も懸念されるとした。

 また、来年3月のドコモ3G回線停波は、ユーザーの端末買い替えやプラン見直しの契機となり、MVNOにとっては乗り換え需要獲得の好機と捉えられている。MNOが力を入れる衛星通信については、災害時や電波不感地帯での活用に有効だが、MVNOがどこまで関与できるかも今後の課題とされた。

 オプテージの松田氏は、mineoのコミュニティサイトで蓄積されるビッグデータをAIで分析し、ユーザーニーズに合ったサービス開発に活用していく考えも明かした。

オプテージ モバイル事業推進本部 モバイル事業戦略部長 松田守弘氏

今後の展望と期待

 最後に、各社が今後の展望を語った。メルカリモバイルは「ギガの売り買い」を軸に、市場の動向を見極めながらお得なサービス提供を続ける方針。イオンモバイルは来年の10周年を迎え、イオングループの総合力と価格優位性を活かした魅力あるサービス提供を継続する方針を示した。mineoは「やっぱりmineoがいい」と思ってもらえる存在を目指し、人生の最後まで「mineoを使ってよかった」と感じてもらえるような長期的なサービスづくりを目指すと締めくくった。





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🧠 編集部の感想:
MVNO業界は新たな競争原理と変化に直面しており、ユーザーのニーズに対する柔軟な対応が鍵となるでしょう。特に「格安ブランド」のシェア拡大や、データの売買といった独自サービスの導入が注目されます。また、今後の法改正や市場の変動が、企業戦略にどのように影響を与えるかが気になります。

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