2025年5月9日(金)・10日(土)にパシフィコ横浜 国立大ホールにて開催された、May’nさんのライブ「SANKYO presents May’n 20th Anniversary Concert Gratz from MACROSS F」の公式レポートが到着!
本ライブは、May’nさんが歌声を通して命を吹き込んできた、『マクロスF』シェリル・ノームと、自身のアーティストとしての歩みを軸に展開。初日は“シェリル・ノーム”として、2日目は“May’n”としてパフォーマンスし、2日間で40曲以上を披露しました。
DAY1「With you -Sheryl On Stage-」公式レポート
May’nはステージを通して、いつだって目の前の君に特別なライブを届けてきた。その特別をさらに更新してみせたのが、2025年5月9日(金)、10日(土)、パシフィコ横浜 国立大ホールにて開催された「SANKYO presents May’n 20th Anniversary Concert Gratz from MACROSS F」。May’nが歌声を通して命を吹き込んできた、アニメ『マクロスF』のヒロインであるシェリル・ノームと、自身のアーティストとしての歩みを軸に展開された、20周年を記念するメモリアルなライブである。
それぞれ「With you -Sheryl On Stage-」「With you -May’n Space」と題し、初日は“シェリル・ノーム”として、2日目は“May’n”としてのステージを披露。両日ともに『マクロスF』および関連企業が全面協力。キービジュアルはキャラクターデザイン・江端里沙氏の描きおろしで、会場にはシェリルとMay’nの歩みを感じさせる展示も用意されていた。
ステージでは2日間に渡り40曲以上を披露。また、 今秋、9年ぶりのシンフォニックコンサート May’n 20th Anniversary Symphonic Concert「TWENTY Around for You」を開催することの他、ベスト・アルバムのリリース、来年の全国ツアーなど、これからに向けた新たな情報を発表した。本稿では奇跡のような2日間を振り返っていく。
超がつくほどの満員御礼で迎えた2日間。初日「With you -Sheryl On Stage-」の幕開けを導いたのは、シェリルのマネージャーであるグレイス・オコナー役・井上喜久子の声。「準備はいい?」とそれぞれのセクションに確認した上で「私の育てたフェアリー9──いいえ、シェリル。銀河の妖精・シェリル・ノーム。あなたの歌で、パシフィコ横浜を、銀河を震わせなさい!」とシェリルをステージに送り出した。一方、モニターのオープニングVTRには西暦2009年からカウントアップが始まり2059年に。いよいよ第25次新マクロス級移民船団マクロス・フロンティアのアイランド横浜に、マクロス・ギャラクシー船団出身のトップシンガー、シェリル・ノームがコンサートのために来艦する。
TEAM ONGAKUSHITSU( Gt.田口慎二/Gt.外園一馬/Key.大嵜慶子/Bs.浅倉高昭/Dr.早川誠一郎)の重低音に乗せてはじまったのは、「Welcome To My Fanclub’s Night!」。アニメーションを背景にステージ場の2階から登場したMay’nは、強烈な存在感とともに“超高速ロマンティック”をあなたに届け、その場を支配していく。続く2曲目「禁断のエリクシア」では、孤高のシェリルを体現するかのように、階段をゆっくりと降りていく。May’nダンサーズ、もとい、“遺伝子ダンサーズ”のもみ、YOUのふたりが妖しく艶やかに絡み合い、深く濃密な世界観を立ち上げていった。
この日は「May’n」ではなく「シェリル」の声が客席から上がっていたことも感慨深い。その声を聞きながら、改めて観客を見つめた最初のMC。
「シェリルの歌を担当しています、May’nです! 今回“With you”というタイトルで2日間コンサートを開催させていただきます。私自身がデビュー20周年を迎えます。その20年間、なによりも、ライブ、コンサートを大切にしながら歩んできました。自分自身のコンサートでもシェリル・ノームの歌を大切に歌わせていただいてきましたが、改めて今回20年のありがとうを伝えるコンサートにしたいなと思ったとき、もっともっと、シェリルの曲を今まで以上に届けたいと思い、-Sheryl On Stage-という1日を開催させていただくことになりました!」と経緯を説明。
そして「もしかしたら“見切れ席だからあんまり見えないな”って思ってる方もいらっしゃるかもしれません。でも、私は絶対に、あなたのところまで歌を届ける自信があります。私の姿から目を離さないでください。もし見えなかったとしても、エネルギーだけは必ずこっちに届けてください。私は誰ひとり、置いてきぼりにしないことを、ここで誓います。精一杯シェリルとして生き抜きます、よろしくおねがいします!」と力強く指切りし、「射手座☆午後九時Don’t be late」へ。〈持ってけ〉でシンガロングが響く中、もうひとりのシェリル・遠藤綾(CV担当)が〈私の歌を聴けー!〉〈もっとー!〉〈ラストー!〉の声で観客をアジテート。May’nのボーカルがシームレスに遠藤の声を受け止め、まさに“ふたりでひとつ”のシェリル・ノームがそこに立っているような臨場感を生み出していく。
三者三様のシェリルの曲でにぎわせた中盤戦。シェリルの軍服を彷彿させる帽子を飛ばすと「What ‘bout my star?」で天真爛漫なかわいらしい表情を覗かせつつ、ワイパーや手拍子で一体感を生み出していく。続いての「ゴ~~ジャス」では帽子やサングラスのアイテムを活かしながら、妖艶でショウアップされた空間を演出。そのアウトロから「ユニバーサル・バニー」へとつながる音源の流れを“再現”してみせると、モニターにはライブシーンが流れ、観客から思わず歓声と拳が上がる。さらに挑発するかのように「pink monsoon」。ピンク色のスモークがステージを包む中、May’nは髪を指に絡ませながら、声と表情で唯一無二の歌姫・シェリル・ノームそのものとなっていく。“演じる”でも“描き出す”でもなく、まるでそこに“存在している”かのように、シェリルの魂が、May’nの歌に宿っていたことが印象的だった。
「やっぱりライブって楽しいよね」と切り出しつつ「いつも以上に緊張している」と汗を拭いながら打ち明けるMay’n。「ライブがはじまってから、今ここに来て“どうしよう”と思っています。いつもだったら私はここで“待って、まだ汗拭きたいから”とか言うんですけど、シェリルだったら……と思うと……(笑)」と、“素の自分”と“シェリル”の境界を意識しながら笑う。
「シェリルとしてのステージの表現は毎回すごくこだわっているのですが、シェリルのいちファンとして、“シェリルのこういうステージを見たいな”“きっとこの時、こういう思いだったんじゃないかな”“描かれていないけど、実はきっとこういうシーンがあったんじゃないのかな”とか、ファンとしての想いも今日の-Sheryl On Stage-には込めています。次にお届けする曲も、今日だけの気持ちで歌わせていただければと」
ここからはしっとりとしたアコースティックブロック。「会えないとき」をピアノ伴奏でゆっくりと歌いだすと、ステージモニターに紙飛行機、淡い色調の早乙女アルトの姿が次々と映し出され、彼のさまざまな表情が静かに浮かんでは消える。そこから「天使になっちゃった」、「ふなのり」、そして「リーベ~幻の光」と、May’n自身、時に泣きそうになりながらも、シェリルの複雑な感情、アルトへの想いを掬い上げていく。その姿に、観客もまた静かに息を呑んだ。アコースティックブロックを終えると、May’nは一度バックステージへ。
するとはじまったのは、シェリルとグレイスの会話劇。「ところでシェリル、各セクションとの連携はどう?」「さすがはあなたが集めたスタッフね。全セクションが最高の仕事をしてくれているわ。それにあたしに全力でぶつかってきてくれる、パシフィコ横浜の観客もサイコーだわ!」──と今回のライブの舞台裏を覗き見るかのようなやりとりが繰り広げられた。
「あたしは歌うことで、自分のすべてをぶつけるの。それに、ここまで応えてくれる観客なんて、めったにいないんだからね!あとはあたし、シェリル・ノームが命を込めて歌うだけよ。グレイス、そこで見てなさい。このままでも最高のライブだけど、もっともっと、横浜を、銀河を震わせてくるわよ」「生きてるって思えるのは歌っているときだけ。今日も最後まで、ファンのために、私自身のために歌うわ。だって私はシェリル。シェリル・ノームよ」。そう覚悟を決めたように決意をあらわにすると、スモークがゆるやかに流れる中、白い衣装に着替えたMay’nがステージへ。
〈みんなが私のことを妖精と呼ぶ わたしはそれに応える 〉という言葉からはじまる「妖精」を披露する。続くロックナンバー「イゾラド」では、 歌詞に合わせて背面のスクリーンにノイズがかった映像エフェクトが走る演出が。さらに「インフィニティ」「永遠」で、“君”への想いをまっすぐ、そしてドラマティックに届けたかと思うと、『劇場版マクロスF~イツワリノウタヒメ~』の劇中ライブ映像を背景に「オベリスク」を歌唱。終始高ぶっていた観客の鼓動が、ここにきてさらに上昇するのが伝わってくる。May’nは一歩も引かない鋭い視線を客席に送りながら、圧倒的な気迫で歌い上げてみせた。
さらに、ここからがすごかった。場内の照明がふっと落ち、会場が静寂に包まれると、一本のスポットライトがステージ中央に射し込む。「ノーザンクロス」のはじまりをアカペラで歌うMay’n。声が少し震える中、泣きそうになる気持ちを、想いのすべてを、声にして届けていく。その姿を見た観客からはすすり泣く声が。そんな静かな空間に〈 好きだったよ〉の声が響くと、バンドが一斉に加勢。同時にステージから火柱が噴き上がった。客席では歓声を上げる人、拳を突き上げる人、静かに涙をこぼす人……それぞれの“熱狂”が場内に渦巻いていく。
さらに続けて、シェリル・ノーム starring May’n、ランカ・リー=中島愛による「サクリファイス」を。だがこの夜に響いたのは、May’nひとりによる“祈り”のようなバージョン。モニターに緑の蝶がふわりと舞う。徐々に聴こえてくるランカの声に耳を澄ませるように、May’nが右耳にそっと手を添え、まぶたを閉じた。その「サクリファイス」を経て、モニターに映し出されたのは、シェリルが大切にし続けてきたフォールドクォーツのイヤリングのセット。そのイヤリングを見つめたあと、暗闇の中へ歩き出すMay’n。気付けばふわっとしたレーシーな長袖の衣装に着替えていた。ここから描かれたのは、“May’nが考える未来のシェリル・ノーム”の姿だ。
モニターに映るMay’nの手が小刻みに震えている。しっかりと握りしめたイヤリングを、彼女は左耳にそっと、まるで想いをなぞるように大切に身に着ける。深く息を吸ってはじまったのは「ダイアモンド クレバス」。観客一人ひとりに思い浮かべた景色があったと思う。毎回さまざまな情景を見せてくれる曲だが、この日はいつもとはまた違う世界を打ち出してみせた。
シェリルコールに応え、ライブTをアレンジした衣装に着替えて再び登場したMay’nは、「イヤリングを返してもらいました」と小さく笑い、泣きそうな表情を見せる。そして「ライブはいつも緊張するんですけど、今回は1週間くらい前からずーっと緊張してて。でも、なんでこんなに緊張してるのかなって考えたときに思ったんです。これは“私ひとりのステージじゃない”からだなって」。今回のライブに協力してくれた関係者への感謝を伝えて「どうしてもグレイスの声が入れたくて、井上喜久子さんにもご協力いただきました。そして、もちろん! シェリル・ノームは、遠藤綾さんがいてくれなきゃ生きていけません。遠藤綾さんにも愛をいただき、お届けさせていただきました」と伝えた。
改めてこれまでの軌跡にも触れる。「2005年に15歳でデビューして、2007年に『マクロスF』に出会いました。2008年の放送より前に、17歳、18歳の頃にはもう“シェリル・ノーム”と出会っていたんです。そこから気づけば17年以上、こうして“シェリル”と共に音楽を届けさせていただいています。私のアーティストとしてのキャリア、“メイン☆ストリート”は、この『マクロスF』と、シェリルとともに始まりました。その20年を大事に想いながら今日、“Sheryl On Stage”という形でこの20周年ライブができたことを、本当に幸せに思います。明日は“May’n Space”というタイトルでステージに立ちますが、この2日間を通して、“20年間ありがとう”、そして“これからもよろしく”という想いをしっかりと伝えたい。そんな気持ちで──2059年まで歌い続けるつもりで、今日ここに立っています」と宣言。
まだまだメイン☆ストリートは続く。期待を込めた歓喜の声が響く中で、シンフォニックコンサートや全国ツアーを行うこと、ベストアルバムをリリースすることなど、新しいプロジェクトを続々と発表。さらなる歓声が沸き上がった。
最後に披露されたのは、ハッピーなエネルギーに満ちた「ギラギラサマー(^ω^)ノ」。May’nの合図でダンサーたちもステージに登場し、にぎやかにステージを彩る。さらにバンドメンバーも続々と前に出てきて、楽器を持ったままステージ上を練り歩き、客席ではウェーブが。最後の決めポーズも含めて、ホール全体が笑顔に包まれた。
シェリルの楽曲すべてを歌い切ったMay’nが「これからも、シェリルは私の歌で、生かし続けることを誓います!」と叫べば、もうひとりの“シェリル”の遠藤綾の声が呼応する。「あたしはステージで、これからも歌い続けるわ! これからも一緒に、歌ってくれる?」。そして笑顔で「これからも私は、あなたと、シェリルと、歌い続けます!」と、これからも“With you”であることを高らかに伝えたのだった。
ライブ後にダンサー、バンドメンバーを改めて紹介し、観客に(文字通り)一人ひとりと目を合わせ“ありがとう”を伝えたMay’n。というのも、彼女にとって“目を合わせてライブを終える”ことは恒例行事。この広い会場でもそれをやってのけて見せ、“あなた”とコミュニケーションを楽しんだのだった。
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