金曜日, 5月 30, 2025
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M&Aキャピタルパートナーズ(6080)徹底解剖:急成長の裏にある「死角」と「真の投資価値」を探るHR7

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記事概要

この記事は、M&Aキャピタルパートナーズ株式会社(MACP)の2025年9月期第20期中間半期報告書に基づき、同社の成長の背景、ビジネスモデル、財務状況、リスク要因、今後の見通しを分析しています。特に、日本のM&A市場が活況であり、中小企業の後継者問題が深刻化している中、MACPがどのように成長機会を捉えているのかに焦点を当てています。

要約ポイント

  • M&A市場の現状: 日本のM&A市場は活況で、特に中小企業における後継者不在問題が深刻化。政府も中小企業のM&Aを推進。
  • MACPの事業概要: 中堅・中小企業に特化したM&A仲介業務を主力事業とし、着実に業績を拡大中。
  • 業績の好調さ: 2025年9月期の業績は、売上高11466百万円(前年同比58.2%増)、営業利益4234百万円(154.3%増)。
  • 財務状況: 自己資本比率82.9%と高く、無借金経営を維持。キャッシュフローも堅調。
  • ビジネスモデル: 主に成功報酬型で、成約件数と平均単価の増加が収益の主要ドライバーに。
  • 競争優位性: 高度な専門性を持つコンサルタント陣、独自のソーシングルート、顧客本位の報酬体系がそれぞれ競争優位性を形成。
  • 今後の展望: M&A市場の成長に支えられたさらに高い成長が期待される。

M&Aキャピタルパートナーズ(6080)徹底解剖:急成長の裏にある「死角」と「真の投資価値」を探るHR7

HR7

本記事は、M&Aキャピタルパートナーズ株式会社(以下、MACPまたは同社)の2025年9月期第20期中間半期報告書(2025年5月15日提出、以下「本報告書」)および最新の公開情報に基づき、同社の今後の見通しと投資妙味について多角的に分析することを目的としています。対象読者としては、MACPへの投資を検討している個人投資家、機関投資家、M&A業界に関心のあるビジネスパーソン、さらには同社の事業内容や将来性について深く理解したいと考えている全ての方々を想定しています。本記事が、読者の皆様の投資判断や情報収集の一助となれば幸いです。

1.2. M&A市場の活況と事業承継問題の深刻化

近年、日本のM&A市場は活況を呈しています。背景には、グローバル化の進展に伴う企業の競争力強化の必要性、事業ポートフォリオの再編、スタートアップ企業によるイグジット戦略の多様化など、様々な要因があります。中でも特に深刻な社会問題として顕在化しているのが、中小企業における後継者不在問題です。経営者の高齢化が進む一方で、親族内承継や従業員承継が困難なケースが増加しており、第三者への事業承継、すなわちM&Aが有力な解決策として注目されています。政府もこの問題を重視し、「中小M&Aガイドライン」の策定やM&A支援機関登録制度の導入など、中小企業のM&Aを後押しする施策を推進しています。このような市場環境は、M&A仲介を専門とする企業にとって大きな事業機会をもたらしています。

1.3. M&Aキャピタルパートナーズの注目ポイント

MACPは、中堅・中小企業のM&A仲介を主力事業とする独立系のM&Aブティックファームです。2005年の設立以来、着実に業績を拡大し、2013年には東証マザーズ(当時)に上場、その後東証一部(現プライム市場)へと市場変更を果たしています。同社の強みは、専門性の高いコンサルタント陣による質の高いサービス提供、独自の案件ソーシング力、そして近年特に注力している大型案件への対応力にあります。本報告書によれば、2025年9月期中間期においても、売上高、各利益項目ともに前年同期比で大幅な増益を達成しており、その成長モメンタムは依然として強力です。本記事では、同社のビジネスモデル、財務状況、市場環境、成長戦略、リスク要因などを詳細に分析し、今後の持続的な成長可能性と、投資対象としての魅力を深掘りしていきます。

2. 企業概要とビジネスモデル

2.1. 会社概要と沿革

2.1.1. 設立と上場

M&Aキャピタルパートナーズ株式会社は、中村悟氏(現 代表取締役社長)によって2005年10月に設立されました。設立当初より、中堅・中小企業の事業承継M&Aに特化したサービスを提供し、多くの企業の存続と発展に貢献してきました。着実な実績を積み重ね、2013年11月には東京証券取引所マザーズ市場に上場、さらに2014年12月には東京証券取引所市場第一部(現 プライム市場)へ市場変更を果たし、社会的な信用度と知名度を高めてきました。本報告書提出時点(2025年5月15日)での本店所在地は東京都中央区八重洲二丁目2番1号です。

2.1.2. 経営理念とビジョン

MACPは、「クライアントの最善のために行動する」「最高のM&Aをより多くの企業へ」といった顧客第一主義を徹底した経営理念を掲げていると推察されます(具体的な経営理念は本報告書には明記されていませんが、一般的な企業姿勢として)。ビジョンとしては、M&Aを通じて企業の存続と発展を支援し、日本経済の活性化に貢献することを目指していると考えられます。特に、後継者問題を抱える中堅・中小企業にとって、信頼できるパートナーとして最適なM&Aソリューションを提供することを使命としているでしょう。

2.2. 事業内容

2.2.1. M&A仲介事業の概要

MACPの主力事業は、中堅・中小企業を主な対象としたM&A仲介業務です。具体的には、株式譲渡、事業譲渡、合併、会社分割など、様々なスキームのM&Aにおいて、譲渡企業(売り手)と譲受企業(買い手)のマッチングから、交渉、契約締結、クロージングに至るまでの一連のプロセスを専門家としてサポートします。同社は、譲渡企業と譲受企業の双方とアドバイザリー契約を締結し、中立的な立場で双方の利益を最大化するディールを目指す「仲介」モデルを採用しています。

2.2.2. サービスフローと特徴

MACPのサービスフローは、一般的に以下のようになります。

  1. 相談受付・初期分析: 譲渡を検討する企業からの相談を受け、企業の状況やオーナーの意向をヒアリングし、M&Aの可能性や課題を分析します。

  2. アドバイザリー契約締結: 正式にM&A仲介業務を受託するための契約を締結します。

  3. 企業評価・資料作成: 譲渡企業の企業価値を算定し、譲受候補企業へ提示するための企業概要書(IM:インフォメーション・メモランダム)等を作成します。

  4. 譲受候補企業の探索・選定: MACPのネットワークやデータベースを活用し、最適な譲受候補企業を探索・選定します。

  5. トップ面談・条件交渉: 譲渡企業と譲受候補企業の経営者同士の面談を設定し、双方の意向を確認しながら、譲渡価格やその他の条件について交渉を進めます。

  6. 基本合意締結: 主要な譲渡条件について合意に至った段階で、基本合意書を締結します。

  7. デューデリジェンス(DD)対応: 譲受企業による譲渡企業の詳細な調査(財務・法務・ビジネスDDなど)をサポートします。

  8. 最終契約締結: DDの結果を踏まえ、最終的な譲渡条件を確定し、株式譲渡契約(SPA)などの最終契約を締結します。

  9. クロージング: 契約に基づき、株式や事業の譲渡、対価の支払いが行われ、M&Aが完了します。

  10. PMI(Post Merger Integration)支援(必要に応じて): M&A成立後の統合プロセスを円滑に進めるためのアドバイスや支援を行う場合もあります(本格的なPMIコンサルティングは、現状では限定的と推察されます)。

MACPの特徴としては、各ディールに専任のコンサルタントがアサインされ、初期相談からクロージングまで一貫して担当する体制や、豊富な経験と専門知識に基づく質の高いアドバイスが挙げられます。

2.2.3. ターゲット顧客層

MACPの主なターゲット顧客層は、事業承継問題を抱える中堅・中小企業のオーナー経営者です。特に、売上高数億円から数百億円規模の企業で、後継者不在により事業の将来に不安を感じているものの、自社の価値を正当に評価してくれる相手先を見つけることが困難な企業などが中心となります。また、成長戦略の一環としてM&Aによる事業拡大を目指す企業(譲受側)も重要な顧客となります。

2.3. ビジネスモデルと収益構造

2.3.1. 成功報酬型の収益モデル

MACPの収益は、主にM&Aが成約した際に受け取る成功報酬です。一般的に、着手金や月額リテイナーフィーは低く抑えるか無料とし、M&Aが成立した場合に、譲渡価格や移動総資産などをベースに一定の料率(レーマン方式など)で算出される成功報酬を、譲渡企業と譲受企業双方から受領するモデルを採用しています。この成功報酬型のモデルは、顧客にとって初期費用負担が少ないというメリットがある一方、M&Aが成約しなければ収益が得られないというリスクも伴います。しかし、成約時の報酬額が大きいため、高い収益性を実現することが可能です。

2.3.2. 収益ドライバー

MACPの収益を左右する主なドライバーは以下の通りです。

  • 成約件数: M&Aの成約件数が増加すれば、それに比例して収益も増加します。

  • 平均成約単価: 一件あたりのM&Aの規模(譲渡価格)が大きくなれば、成功報酬額も増加します。MACPは近年、大型案件の獲得に注力しており、平均単価の上昇が業績拡大に寄与しています(本報告書 P.3)。

  • コンサルタント数と生産性: 優秀なコンサルタントの数が増え、かつ一人当たりの成約件数や単価(生産性)が向上すれば、全体の収益も拡大します。

  • 案件ソーシング力: どれだけ多くのM&A案件を発掘できるかが、成約件数の前提となります。

2.4. 強みと競争優位性

2.4.1. 専門性の高いコンサルタント陣

MACPは、公認会計士、税理士、金融機関出身者など、M&Aやファイナンスに関する高度な専門知識と豊富な実務経験を持つコンサルタントを多数擁しています。これらの専門家が、複雑なM&Aプロセスを的確にナビゲートし、顧客にとって最適なソリューションを提供できることが大きな強みです。本報告書 P.3には「定期的かつ多頻度な教育機会を設け、ガイドラインの適切な理解を含むM&Aに必要な専門知識の獲得のための教育を徹底」とあり、人材育成にも力を入れていることが窺えます。

2.4.2. 独自のソーシングルートと情報網

MACPは、長年の事業活動を通じて構築してきた独自のネットワークや、金融機関、会計事務所、弁護士事務所などとの連携により、幅広い案件情報を収集しています。また、ダイレクトマーケティングやセミナー開催など、積極的な情報発信を通じて、潜在的な顧客との接点を拡大しています。

2.4.3. 大型案件への対応力

近年、MACPは特に中規模から大規模なM&A案件の取り扱いに注力しています。本報告書 P.3によれば、「大型案件が多数成約したことで平均成約単価が上昇し、売上高の押し上げ要因となった」とあり、手数料総額が1億円以上の案件が前年同期の15件から31件へと大幅に増加しています(P.4)。これは、同社の専門性や実績が評価され、より複雑で大規模なディールを任されるようになってきていることを示唆しています。

2.4.4. 顧客本位の報酬体系

本報告書 P.3には「売り手と買い手で同様の報酬体系とする顧客本位の報酬体系」と言及があり、顧客にとって透明性が高く、納得感のある報酬体系を志向していることが強みの一つと考えられます。これは、中小M&Aガイドラインの趣旨にも合致するものです。

2.5. グループ会社(株式会社レコフ、株式会社レコフデータ)の役割

MACPは、株式会社レコフおよび株式会社レコフデータというグループ会社を擁しています。

  • 株式会社レコフ: 日本のM&A業界の草分け的存在であり、主に大企業やクロスボーダー案件に関する豊富な実績とノウハウを有しています。MACPグループに加わることで、より広範な顧客層への対応や、大型案件における協業などが期待されます。本報告書 P.4の成約件数内訳にもレコフの実績が記載されています。

  • 株式会社レコフデータ: M&Aに関するデータベースの提供や市場分析レポートの発行などを行っています。本報告書 P.3のマーケット状況分析においても、「当社のグループ会社である(株)レコフデータが集計し公表している統計データによると」という記述があり、グループ全体の市場分析能力向上に貢献しています。

これらのグループ会社との連携により、MACPは案件ソーシング力の強化、クロスボーダー案件への対応、情報収集・分析能力の向上など、多方面でのシナジー効果を追求しています。

サマリー:企業概要とビジネスモデル

MACPは、事業承継ニーズを抱える中堅・中小企業をメインターゲットとしたM&A仲介のリーディングカンパニーです。専門性の高いコンサルタントによる質の高いサービス、独自の案件ソーシング力、そして大型案件への対応力を強みとし、成功報酬型のビジネスモデルで高い収益性を実現しています。レコフグループとの連携により、さらなる事業領域の拡大と競争力強化を図っています。

3. 直近業績と財務分析

3.1. 第20期中間連結会計期間(2024年10月1日~2025年3月31日)業績概要

本報告書によれば、MACPの第20期中間連結会計期間は、極めて好調な業績となりました。主要な経営指標は以下の通りです(P.2)。

3.1.1. 連結経営成績

  • 売上高: 11,466百万円(前年同期比 58.2%増)

  • 営業利益: 4,234百万円(前年同期比 154.3%増)

  • 経常利益: 4,251百万円(前年同期比 154.9%増)

  • 親会社株主に帰属する中間純利益: 2,877百万円(前年同期比 158.5%増)

売上高は前年同期比で4,219百万円の大幅な増加となりました。この主な要因として、本報告書 P.3には「大型案件が多数成約したことで平均成約単価が上昇し、売上高の押し上げ要因となったことによるものです」と記載されています。実際に、手数料総額が1億円以上の案件数は、前年同期の15件から当期は31件へと倍増しており(P.4 MACP単体では14件→31件)、これが全体の売上高を大きく牽引したことが明確に示されています。

売上高の大幅な増加に伴い、各利益項目も飛躍的に伸びています。営業利益は、前年同期比2,569百万円増の4,234百万円となりました。売上原価は賞与及び賞与引当金繰入額の増加などにより前年同期比44.2%増の4,109百万円、販売費及び一般管理費は租税公課、広告宣伝費、支払手数料、通信費の増加などにより前年同期比14.3%増の3,122百万円となりましたが(P.3)、売上高の伸びがこれらのコスト増を大きく上回り、大幅な増益を達成しています。

経常利益、親会社株主に帰属する中間純利益も同様に、前年同期比で150%を超える極めて高い成長率を示しています。

3.1.2. 財政状態

2025年3月31日現在の中間連結貸借対照表(P.15-16)の概要は以下の通りです。

  • 総資産: 49,083百万円(前連結会計年度末比 1,943百万円増)

  • 純資産: 41,231百万円(前連結会計年度末比 821百万円増)

  • 自己資本比率: 82.9%(前連結会計年度末 84.7%)

流動資産は43,639百万円となり、前連結会計年度末と比較して2,947百万円増加しました。これは主に、現金及び預金が3,723百万円増加したことによるものです(P.4)。
固定資産は5,444百万円で、1,003百万円減少しました。主な要因は、投資有価証券が時価の下落により1,237百万円減少したこと、のれん及び商標権の償却、繰延税金資産の増加などです(P.4)。

流動負債は6,747百万円となり、前連結会計年度末と比較して1,144百万円増加しました。これは主に、未払法人税等が1,017百万円増加したことによるものです(P.4)。業績好調に伴い納税額が増加していることが背景にあると考えられます。
固定負債は1,104百万円で、23百万円減少しました。これは主に役員賞与引当金が減少したことによります(P.4)。

純資産は41,231百万円となり、前連結会計年度末と比較して821百万円増加しました。主な要因は、親会社株主に帰属する中間純利益の計上により利益剰余金が2,877百万円増加した一方、投資有価証券の時価下落によりその他有価証券評価差額金が849百万円減少し、配当金の支払いにより利益剰余金が1,270百万円減少したことなどです(P.5)。
自己資本比率は82.9%と依然として非常に高い水準を維持しており、財務の健全性は極めて高いと言えます。

3.1.3. キャッシュ・フローの状況

当中間連結会計期間における各キャッシュ・フローの状況は以下の通りです(P.19、P.5)。

  • 営業活動によるキャッシュ・フロー: 4,910百万円の収入(前年同期は217百万円の収入)

  • 投資活動によるキャッシュ・フロー: 46百万円の支出(前年同期は50百万円の支出)

  • 財務活動によるキャッシュ・フロー: 1,140百万円の支出(前年同期は1,269百万円の支出)

  • 現金及び現金同等物の中間期末残高: 38,870百万円(前連結会計年度末比 3,723百万円増)

営業活動によるキャッシュ・フローは、前年同期から4,693百万円増加し、4,910百万円の収入となりました。これは主として、税金等調整前中間純利益4,412百万円の計上、売上債権の減少862百万円などによるものです。法人税等の支払いが625百万円あったものの、大幅な収入超過となりました。本業で力強くキャッシュを生み出している状況が明確に示されています。

投資活動によるキャッシュ・フローは46百万円の支出となりました。主な内訳は、有形固定資産の取得による支出27百万円などです。前年同期と比較して大きな変動はありません。

財務活動によるキャッシュ・フローは1,140百万円の支出となりました。これは主として、配当金の支払額1,269百万円によるものです。

3.2. 収益性分析

3.2.1. 売上高総利益率、営業利益率、経常利益率の推移

  • 売上高総利益率: (売上高 – 売上原価) / 売上高

    • 当中間期: (11,466 – 4,109) / 11,466 = 64.1%

    • 前年同期: (7,247 – 2,850) / 7,247 = 60.7%
      売上総利益率は前年同期から3.4ポイント改善しています。これは、売上高の伸び率(58.2%)が売上原価の伸び率(44.2%)を上回ったためであり、特に大型案件の増加による単価上昇が利益率改善に寄与したと考えられます。

  • 営業利益率: 営業利益 / 売上高

    • 当中間期: 4,234 / 11,466 = 36.9%

    • 前年同期: 1,665 / 7,247 = 23.0%
      営業利益率は前年同期から13.9ポイントと大幅に改善しています。これは、売上総利益率の改善に加え、販管費の伸び率(14.3%)が売上高の伸び率(58.2%)を大きく下回ったことによるものです。極めて高い収益効率を示しています。

  • 経常利益率: 経常利益 / 売上高

    • 当中間期: 4,251 / 11,466 = 37.1%

    • 前年同期: 1,668 / 7,247 = 23.0%
      経常利益率も営業利益率とほぼ同様の改善を見せています。営業外収益・費用は限定的です。

3.2.2. ROE(自己資本利益率)、ROA(総資産利益率)

  • ROE(年間換算): (親会社株主に帰属する中間純利益 × 2) / ((期首自己資本 + 期末自己資本) / 2)

    • 期首自己資本(純資産 – 新株予約権 – 非支配株主持分): 40,409,755千円 – 462,532千円 = 39,947,223千円

    • 期末自己資本: 41,231,409千円 – 526,339千円 = 40,705,070千円

    • 平均自己資本: (39,947,223 + 40,705,070) / 2 = 40,326,146.5千円

    • ROE = (2,877,126千円 × 2) / 40,326,146.5千円 ≒ 14.3%
      ROEは14.3%と、資本効率も良好な水準です。

  • ROA(年間換算): (経常利益 × 2) / ((期首総資産 + 期末総資産) / 2)

    • 期首総資産: 47,139,913千円

    • 期末総資産: 49,083,462千円

    • 平均総資産: (47,139,913 + 49,083,462) / 2 = 48,111,687.5千円

    • ROA = (4,251,605千円 × 2) / 48,111,687.5千円 ≒ 17.7%
      ROAも17.7%と高い水準であり、総資産を効率的に活用して利益を生み出していることがわかります。

3.3. 成長性分析

3.3.1. 売上高成長率、利益成長率

前述の通り、当中間期の売上高成長率は58.2%、営業利益成長率は154.3%、経常利益成長率は154.9%、親会社株主に帰属する中間純利益成長率は158.5%と、いずれも極めて高い成長を示しています。

3.3.2. 成約件数と平均単価の推移

本報告書 P.4の「成約件数」に関するデータは、同社の成長ドライバーを理解する上で非常に重要です。

  • M&A成約件数(グループ全体): 114件(前年同期 96件、+18件、+18.8%)
    グループ全体でも成約件数は堅調に増加しています。

  • M&A成約件数(MACP単体): 107件(前年同期 88件、+19件、+21.6%)
    単体での件数増がグループ全体の伸びを牽引しています。

  • M&A成約件数(レコフ): 7件(前年同期 8件、-1件、-12.5%)
    レコフの件数は微減となりましたが、もともと大型案件中心で件数ベースの変動は起こりやすいと考えられます。

最も注目すべきは、手数料総額1億円以上の大型案件の件数です。

  • グループ全体:

    • 1億円以上の件数: 31件(前年同期 15件、+16件、+106.7%)

    • 1億円未満の件数: 83件(前年同期 81件、+2件、+2.5%)

  • MACP単体:

    • 1億円以上の件数: 31件(前年同期 14件、+17件、+121.4%)

    • 1億円未満の件数: 76件(前年同期 74件、+2件、+2.7%)

  • レコフ:

    • 1億円以上の件数: 0件(前年同期 1件、-1件)

    • 1億円未満の件数: 7件(前年同期 7件、±0件)

このデータから、MACP単体における手数料1億円以上の大型案件が前年同期の14件から31件へと倍以上に増加したことが、当中間期の売上高および利益の大幅な伸長の最大の要因であることが明確にわかります。平均単価の上昇が著しいことを示しています。

3.4. 安全性分析

3.4.1. 自己資本比率

自己資本比率は82.9%(P.16)と極めて高い水準です。これは、総資産の大部分を自己資本で賄っていることを意味し、財務基盤が非常に安定していることを示しています。

3.4.2. 流動比率、当座比率

  • 流動比率: 流動資産 / 流動負債

    • 43,639百万円 / 6,747百万円 ≒ 646.8%
      短期的な支払い能力を示す流動比率も600%を超えており、全く問題ありません。

  • 当座比率: 当座資産 / 流動負債 (当座資産 = 現金及び預金 + 売掛金)

    • (42,870 + 307)百万円 / 6,747百万円 ≒ 639.9%
      より換金性の高い資産で見た当座比率も非常に高く、短期的な安全性は万全です。

3.4.3. 有利子負債の状況

貸借対照表(P.15)を見る限り、短期借入金や長期借入金、社債といった有利子負債は見当たりません。無借金経営であり、財務リスクは極めて低いと言えます。

3.5. 販管費の分析

3.5.1. 販管費の主な内訳と増減要因

販売費及び一般管理費の合計は3,122百万円で、前年同期の2,731百万円から391百万円(14.3%)増加しました(P.17)。
本報告書 P.20には、販管費の主要な費目として以下のものが挙げられています(金額は前年同期→当中間期)。

  • 広告宣伝費: 630百万円 → 748百万円 (+118百万円)

  • 役員報酬: 90百万円 → 116百万円 (+26百万円)

  • 給料手当: 169百万円 → 193百万円 (+24百万円)

  • 賞与: 79百万円 → 84百万円 (+5百万円)

  • 賞与引当金繰入額: 12百万円 → 19百万円 (+7百万円)

  • 役員賞与引当金繰入額: 5百万円 → 22百万円 (+17百万円)

  • 採用費: 98百万円 → 118百万円 (+20百万円)

  • 地代家賃: 556百万円 → 560百万円 (+4百万円)

  • 支払手数料: 321百万円 → 396百万円 (+75百万円)

  • 減価償却費: 165百万円 → 153百万円 (-12百万円)

  • 支払報酬: 91百万円 → 106百万円 (+15百万円)

広告宣伝費や採用費、支払手数料が増加しており、事業拡大に向けた積極的な投資や活動量の増加が背景にあると推察されます。また、業績好調に伴い役員報酬や賞与関連費用も増加しています。しかし、売上高の伸び(58.2%)と比較すると販管費の伸び(14.3%)は抑制されており、営業レバレッジが効いている状況です。

3.5.2. 広告宣伝費、人件費(賞与含む)の動向

広告宣伝費は前年同期比18.7%増、採用費は20.4%増となっており、ブランド認知度向上や人材獲得に向けた投資を継続していることがわかります。給料手当、賞与、引当金など人件費関連も増加傾向にありますが、これはコンサルタントの増員や業績連動部分の増加によるものと考えられます。

3.6. セグメント情報(M&A関連サービス事業の単一セグメント)

本報告書 P.23によれば、MACPグループの事業セグメントは「M&A関連サービス事業及びこれらの付随業務の単一セグメントであるため、記載を省略」しています。これは、同社グループの事業がM&A仲介とその関連業務に集中していることを示しています。

サマリー:直近業績と財務分析

MACPの2025年9月期中間期は、大型案件の成約件数増加とそれに伴う平均単価の��昇により、売上高・各利益ともに前年同期比で大幅な増収増益を達成しました。収益性は飛躍的に向上し、ROE、ROAも良好な水準です。財務基盤は自己資本比率82.9%、実質無借金と極めて健全であり、安全性に懸念はありません。販管費は増加しているものの、売上高の伸びがそれを大きく上回り、高い営業レバレッジ効果を発揮しています。全体として、成長性と収益性、安全性のバランスが取れた、非常に力強い業績内容と言えます。

4. 市場環境と競合ポジショニング

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