アメリカは中国へのAIチップの輸出を規制しており、これに対応するべくAIチップの製造で世界をリードするNVIDIAは、H100よりもスペックが劣るH20を中国向けに製造・販売しています。そんな中、中国の大手電機メーカーであるHuaweiは、NVIDIAのH100に匹敵するAIチップ「Ascend 910C」を、早ければ2025年5月にも出荷する予定であると報じられました。
Exclusive: Huawei readies new AI chip for mass shipment as China seeks Nvidia alternatives, sources say | Reuters
https://www.reuters.com/world/china/huawei-readies-new-ai-chip-mass-shipment-china-seeks-nvidia-alternatives-sources-2025-04-21/
Banned from China, NVIDIA loses ground to Huawei’s next-gen AI chip
https://interestingengineering.com/innovation/huawei-starts-mass-shipments-of-910c-ai-chip
Nvidia Stock: China’s Huawei Launches AI Chip | Investor’s Business Daily
https://www.investors.com/news/technology/nvidia-stock-china-huawei-ai-chips/
NVIDIAのAIチップであるH20は中国向けに開発・販売されているものですが、アメリカのドナルド・トランプ大統領は中国へのAIチップ輸出規制を強化する中で、「H20にもライセンス要件を課す」と発表しました。この影響で、中国ではH20に代わる代替品を見つけることが急務とされています。
NVIDIAのAIチップ「H20」の中国への販売にアメリカ政府がライセンスを要求、NVIDIAは関連経費として55億ドルを計上 – GIGAZINE
ロイターがHuaweiの内部事情に詳しい人物から入手した情報によると、同社は早ければ2025年5月にも中国の顧客向けに先進的なAIチップの「Ascend 910C」を量産・出荷する予定だそうです。さらに、一部のAscend 910Cは既に出荷されていることも明らかになっています。
情報筋によると、HuaweiのAIチップである「Ascend 910C」は、技術的に進歩したものというよりは、構造的に進化したチップで、具体的には前モデルに当たる「Ascend 910B」をふたつ合わせてひとつのパッケージに統合したものになっているとのこと。これにより、Ascend 910CはNVIDIAのH100に匹敵するパフォーマンスを実現しているそうです。
なお、Ascend 910CがNVIDIAのH100に匹敵するパフォーマンスを実現していることは、これまでにも報じられてきました。
Huaweiによると新型AIチップ「Ascend 910C」はNVIDIA H100に匹敵するらしい – GIGAZINE
Ascend 910CはAscend 910Bの2倍の計算能力とメモリ容量を持ち、多様なAIワークロードデータをサポートしており、段階的な改善も実施されているとのこと。なお、ロイターの報道に対して、Huaweiはコメントを控えています。
アメリカ政府によるAIチップ輸出規制により、HuaweiやMoore Threads、Iluvatar CoreXといった中国の半導体スタートアップはこれまでNVIDIAが独占してきた市場に参入することが可能となります。
コンサルティング会社Albright Stonebridge Groupのポール・トリオロ氏は、アメリカ政府によるNVIDIAのH20に対する輸出規制が施行されたことで、「HuaweiのAscend 910Cが中国のAIモデル開発者や推論能力の展開に選ばれるハードウェアとなるでしょう」と語りました。
情報筋によると、Huaweiは2024年末にAscend 910Cのサンプルを複数のテクノロジー企業に配布し、受注を開始したそうです。ただし、ロイターはAscend 910Cの製造をどの企業が担当しているのかまでは確認できなかったとしています。
これまでAscend 910Cの主要コンポーネントの一部は、中国の半導体ファウンドリであるSMICの7nmプロセス(N+2)技術を使用して製造されていることが報じられてきました。
なお、HuaweiのAscend 910BにTSMCが製造したチップが用いられていたことが判明したため、アメリカ商務省がTSMCに対して罰金を科す可能性が報じられていますが、Ascend 910Cの少なくとも一部もTSMC製の半導体が使用されているとロイターは報じています。
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TSMCはアメリカ政府の規制要件を順守しており、2020年9月中旬以降Huaweiに一切半導体を供給したことはないと主張していますが、同時に半導体業界におけるTSMCの役割が大きすぎるため、同社が製造する半導体の意図しない最終用途をすべて阻止することはできないとも主張しています。
なお、Huaweiは中国のファウンドリ・SMICの6nmプロセスノードを使用して製造される、900TFLOPS、メモリ帯域幅4000GB/sのAIチップ「Ascend 920」を発表したばかりです。
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