アトラスの看板RPG「真・女神転生」シリーズの派生作品の1つである「デビルサマナー」シリーズ。「真・女神転生デビルサマナー」からはじまり「デビルサマナー ソウルハッカーズ」へと続き、2006年にPS2用タイトルとして「デビルサマナー 葛葉ライドウ 対 超力兵団(以下、超力兵団)」がリリースされた。

 現代や近未来を舞台にしているシリーズのなかで、本作は架空の大正二十年を舞台にしているのが特徴。バトルシステムもオーソドックスなコマンドバトルからアクションバトルへと変化した、まさに変革的なタイトルである。ファンからは好評を得ながらも、2008年にリリースされた「デビルサマナー 葛葉ライドウ 対 アバドン王(以下、アバドン王)」以降、ライドウ関連のシリーズは止まっていた。

 シリーズの展開を長年熱望され続けていたなか、ついに先日「超力兵団」のHDリマスター版となる「RAIDOU Remastered: 超力兵団奇譚」がプレイステーション 5/プレイステーション 4/Xbox Series X|S/Nintendo Switch 2/Nintendo Switch/PC(Steam)で6月19日にリリースされることが発表された。

 今回弊誌では「RAIDOU Remastered: 超力兵団奇譚」を発売に先駆けてプレイする機会を得られた。結論を先に言っておくと“本作は良い意味でオリジナル版とは別物”といえるほど進化した内容となっているので、本作の基本となるゲーム性と生まれ変わったポイントをお伝えしよう。

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悪魔×大正浪漫×探偵もの――魅力的な要素を悪魔合体させた唯一無二のRPG

 舞台は大正二十年の帝都。西洋の文化が流入し急速に発展していく時代、悪魔と呼ばれる異形の者が人知れず帝都を脅かしていた。

 國の霊的治安を維持する組織・超國家機関ヤタガラスの命を受け、悪魔を使役する悪魔召喚師(デビルサマナー)の十四代目 葛葉ライドウが怪奇事件に挑む――といったストーリー。

 現代や近未来が舞台だったこれまでのシリーズのデビルサマナーたちは「COMP」と呼ばれるガジェットで悪魔を召喚してきたが、今作のライドウは封魔具の管を使って悪魔を召喚するといった大正時代ならではのレトロな世界観や設定も魅力である。

 プレーヤーが操る主人公は、若くして葛葉ライドウを襲名した高い実力のデビルサマナーだが、表向きは探偵見習いとして鳴海探偵社で業務を手伝う書生として活動する。

 探偵の基本となる街での聞き込みや、デビルサマナーならではのやり方で帝都で起こる様々な事件を追い、その元凶となる悪魔を退治して次のエピソードに進むという流れの1話完結形式を採用している。

各エピソードの冒頭に、アニメの様なサブタイトルが差し込まれる

探偵社のぐうたら所長の鳴海に代わり、事件を捜査していく

会話アイコンが付いている町の人には、手あたり次第聞き込みをしていくのが鉄則

 デビルサマナー×探偵という要素が上手く活かされており、ライドウが使役する仲魔の悪魔「仲魔」の力を借りた捜査方法がとにかくユニークだ。

 頑なに証言を隠す相手に「読心術」で心の声を聴いたり、監視の目があって入れない場所に仲魔を行かせる「単独捜査」、興奮状態で話にならない相手には氷結系の「冷却」で物理的に頭を冷やさせるなど、それぞれの悪魔が持つ固有の「捜査特技」を駆使していくのも本作ならではの面白さ。

 捜査を進展させるためには、その場面に合った特定の捜査特技を持った悪魔が必要になるので、敵として出現する悪魔を仲魔にしたり、2体の悪魔を掛け合わせて新しい悪魔を生み出す「悪魔合体」といった「デビルサマナー」シリーズお馴染みの方法で悪魔を集めていく。

エンカウントした悪魔との戦闘では、封魔術を使うことで敵を自分の仲魔にできる

業魔殿では悪魔合体が可能。自由に選んだ2体の悪魔を合体させたり、合体結果から逆引きで合体させる悪魔を選ぶこともできる

 戦闘や事件の調査でライドウに協力してくれる仲魔だが、過去のシリーズよりも“より愛着が湧く”仕様になっているのも注目のポイント。

 以前の「デビルサマナー」シリーズでは悪魔には成長といった要素がなく、レベルやパラメータなどはすべて固定となっていた。なのでゲーム序盤に登場する低レベルの悪魔がお気に入りだったとしても終盤まで前線で使い続けることは不可能に近かった。

 しかし、本作では「真・女神転生III-NOCTURNE」からの成長システムが継承されており、ライドウと同様に戦闘による経験値でレベルが上がり、パラメータの上昇や新しい特技を習得をしたりもするので、お気に入りの悪魔を長く使い続けることができるのだ。

 そしてもう1つの愛着が湧くポイントは、街やダンジョンなどで自由に仲魔を召喚して一緒に行動できるところだ。金子一馬氏や、新たに追加された土居政之氏デザインの魅力的な悪魔たちがライドウの後ろに着いてきてくれるのは悪魔好きにはたまらない。

パラメータの伸びしろには限界はあるものの、低レベル悪魔が即使い捨てにならないのも嬉しいポイント

好きな悪魔を連れて歩けるだけで神ゲーである

「アバドン王」を超える情熱的なアクションに進化したバトルシステム

 ここからは、ゲームの核ともいえるバトル周りについて触れていこう。あらゆる点で大きく進化している本作だが、今回プレイして一番驚かされたのは間違いなくバトルシステムの部分だ。

 オリジナル版「超力兵団」から、世界観やキャラクター、ストーリーは文句無しに傑作と呼べるクオリティだったのだが、当時はシリーズ初のアクションバトルということもあり、その出来栄えは惜しいものであった。

 少々ネガティブなことを言うと、まず第一に戦闘フィールドが狭く、複数体の敵が出現したときの画面のゆとりの無さが気になった。さらに、戦闘では手持ちの仲魔を1体しか召喚できないというのも寂しい仕様であった。

大型の悪魔という訳でもないのに、オリジナル版ではこの画面の窮屈さ。画面はPS2版

 ライドウのアクションもかなり単調で、やれることは刀による攻撃と銃撃のみ。ボタンの組み合わせによる技の変化や攻撃の強弱なども存在せず、ほぼワンボタンを連打するだけというもの。

 そしてこれは個人的に引っかかっていただけなのだが、刀で敵を斬った際のSEがなぜか拳で殴ったかのような打撃音をしており、効果音すらも気持ちよくなかった。

アクションは単調かつ、動きももっさりとしており、快適に思えるバトルではなかった。画⾯はPS2版

 これらの問題点は続編である「アバドン王」で全て解消され、今回のリマスター版のバトルシステムはその「アバドン王」を踏襲したものになっている――とアナウンスされているが、実際はそれ以上のクオリティである。

 仲魔は2体同時召喚が可能になり、ライドウの斬撃アクションには弱攻撃と強攻撃が追加され、その組み合わせによって多彩な技を繰り出せるようになっている。アクション面が大幅に強化され、劇的にバトルの深みが増している。

 オリジナル版ではオーソドックスなアクションバトルだったが、本作では攻撃した敵から「MAG(マグネタイト)」というエネルギーを奪いながら戦う「MAGドレインバトル」と呼ばれるバトルシステムを採用。

 「MP」という概念が廃止され、仲魔が強力な特技を繰り出すためにはMAGが必要となる。MAGが無くなってしまうと仲魔は特技が使えなくなってしまうので、支援攻撃はもちろんHPの回復などもストップしてしまいかなり苦しい状況になってしまう。

 MAGをいかに枯渇させずに戦うかが重要。威力は低いがMAGを奪える弱攻撃と、威力は高いがMAGを奪えない強攻撃を上手く使い分けるといった戦略性のあるバトルが楽しめる。

MAGが減ったら、とにかくMAG回収を優先して弱攻撃を使っていきたい

 近年の「真・女神転生」、「ペルソナ」シリーズと同様に敵の弱点属性を突いていくことがバトルのカギを握っている。

 弱点属性の特技がヒットした悪魔は「弱点硬直」が発生して一定時間動けない状態になる。そのうえ会心も発生して与えるダメージや奪えるMAGが増加するという、爆発的なアドバンテージを得ることができるのだ。

弱点を突けばMAGを大幅回収でき、特技がガンガン回せるという永久機関モードに突入できるので、弱点を突ける仲魔をそろえておきたい

 オリジナル版では、属性付きの銃弾や仲魔の補助が無ければライドウ自身は敵の弱点を突くことができなかったので、バトルの流れは仲魔に左右される部分が大きかった。

 しかし本作では「神剣特技」というライドウの新しいアクションが追加されており、クールタイムはあるものの無制限に属性攻撃を繰り出すことができるようになっている。仲魔頼りのやや受動的な戦闘であったが、ライドウ自身がアグレッシブに展開を作ることができようになり、プレイしていて爽快感を強く感じられた。

属性攻撃をはじめとした、さまざまな特技をセットできるようになった

オリジナル版では消費アイテムの属性付きの銃弾で弱点をつけたが、今作でさらに手軽に弱点を突いて戦うことができる

 アクションの追加でやれることが増えた分、やや単調に感じたボス戦もかなり歯応えのある内容に変化していた。

 ボスの攻撃は非常に強力で、ライドウと仲魔をまとめて戦闘不能にさせる広範囲攻撃をしかけてくるのだ。

 仲魔は基本的には標的に近づいて攻撃を繰り返すだけで防御や回避といった行動はとってはくれない。なので仲魔に的確に指示を出さないとすぐに全滅してしまう。

 広範囲攻撃の体制に入ったら仲魔が無敵状態になってライドウの周りに呼び寄せる「隠し身」が重要になる。仲魔に気を配りながら、ライドウ自身も回避やジャンプなどのアクションを駆使して立ち回らなければならないので、片時たりとも気を抜けない緊張感のある戦いが楽しめる。

隠し身状態では仲魔がダメージを受けない代わりに、解除するまで攻撃を一切してくれない

これまでにないジャンプアクションも追加され、本格的なアクションバトルになっている

 そしてボスはかなりHPが高く、ただ弱点を突いて攻撃しているだけではなかなか勝負が決まらい。そして長期戦になるとこちらが消耗して苦しい戦いになってしまう。

 強敵相手のときは、連続で攻撃して体勢を崩したり、敵の攻撃をジャストのタイミングで回避することで発動できる強力な「殺魔一閃」や、戦闘中に溜まっていく情熱(スピリット)が最大になると使える必殺技の「スピリット剣」などの新アクションを駆使していくのが攻略のポイントになる。

 どちらのアクションもド派手な演出とともに大ダメージを与えられ、特にスピリット剣の範囲がフィールド全体なので、大量の敵悪魔もまとめて一掃できるのは爽快の一言。プレーヤースキルが介入する部分もかなり大きくなっているので、オリジナル版では最大の残念ポイントだった戦闘が純粋に楽しいと思える内容になっている。

ド派手な2つの新アクションが、バトルをさらに盛り上げてくれる

進化したのはバトルだけじゃない。グラフィックス&遊びやすさの変わりっぷりはもはやリメイク級

 一番大きく変わったバトルについて語ってきたが、バトル以外にも大きな変更点は膨大にある。

 HDリマスターというからにはグラフィックスの面はもちろん進化している訳なのだが、ゲーム開始数秒で“これは本当に高解像度化しただけなのか!?”と衝撃を受けた。

 公開されたトレーラー映像からも薄々は感じていたが、グラフィックスの美麗さはリマスターと謳うにはあまりにも謙虚が過ぎる。

 PS2版は、少々3Dモデルの粗さを感じるグラフィックスだったが、本作ではクッキリとシャープな映像になっており、ライドウをはじめとするキャラクターや悪魔たちの魅力が段違いに上がっている。

 近年のアトラス作品の「メタファー:リファンタジオ」などと比べればさすがに同等とはいえないが、それでもPS2の作品がここまで劇的に変化しているのは“もはやリメイク作品といっても過言ではない”。

 オリジナル版はバトルが残念だと前述したが、実をいうとバトル以外にももう1つ大きな残念だったポイントがあり、それは“ゲームテンポの悪さ”である。

 まず1つはライドウの移動速度の遅さだ。拠点となる鳴海探偵社のある町、筑土町はそれほど広いという訳でもないのだが、そんな町の中の移動さえ一苦労な程だった。

 移動の遅さくらいでガタガタ言うなとお叱りを受けそうだが問題は理由は他にもあり、緩やかな移動速度に加えてオリジナル版ではダンジョンだけではなく“町の中だろうがほぼすべての場所で悪魔とエンカウント”するという仕様なのだ。そのエンカウント率も異常なほど高く、数歩歩くたびに戦闘に突入するという悪魔的なゲームバランスであった。

アイテムを買うためにショップへ向かう道中だけでも、何度も敵と遭遇する恐ろしい仕様であった。画面はPS2版

 そういったストレス負荷が掛かりそうな要素は本作ではすべて改善されている。フィールドでの移動速度は格段に上がり、そのうえ「現場急行」といういわゆるファストトラベル機能も実装されているので、1度行ったことのある場所に一瞬で飛ぶことができる。

 ダンジョン以外の場所では敵とエンカウントすることもなくなり、ダンジョン内もシンボルエンカウント制になったことで煩わしいザコ敵は無視して進めることもできるという快適仕様。

 ほかにもダンジョン内のセーブポイント箇所の追加や、セーブポイントから悪魔合体の館である業魔殿に一時的に転送してダンジョン内でも悪魔合体ができるようになっているなど、ゲームのテンポが悪くなりそうな部分は細かな所まで徹底的に改善されている。

ダンジョン内以外の場所からなら、いつでもファストトラベルが可能

シンボルエンカウント制になったことで、ダンジョン内の探索もストレスが無い

わざわざ業魔殿に向かわなくても悪魔合体ができるのはかなり快適だ

 本編の物語のフルボイス化、50体以上の新悪魔の追加、ライドウの新たな武器を生み出す「錬剣術」など、リマスター版からの新要素がこれでもかと詰め込まれており、何度も言うようだが本作は“控えめに言ってもリメイク版である”。

 新作ではないものの、「ライドウ」シリーズ19年振りに動き出したということはファンとしては嬉しい限りである。本作のシステムで「アバドン王」のリマスター化や、シリーズ完全新作にも期待したいところだ。



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