Game*Sparkレビュー:『Rusty Rabbit』中年ウサギが掘るのはブロックか、それとも過去か。虚淵玄の描く“笑いあり涙あり”の冒険譚 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

パーツの声を聞き取れるほどに機械と向き合い、ピーキーでじゃじゃ馬な愛機を乗りこなす…車やバイクといった「機械イジリ」はあらゆる世代に渡っての男の趣味、浪漫です。そして、その浪漫は人間だけでなく、きっとウサギにも同じことが言えるのでしょう。

NetEase Gamesとニトロプラスは、中年ウサギが主人公の2.5Dアクション『Rusty Rabbitラスティ・ラビット)』を、4月17日にPC/PS5/ニンテンドースイッチ向けにリリースします。

人類が外の世界に旅立ってから数千年後の世界を舞台に、個性豊かなウサギたちのストーリーが繰り広げられる本作。本稿ではそんな『Rusty Rabbit』のレビューをお届けします。レビューにあたっては、NetEase Gamesからコードの提供を受けたSteam版の内容となります。

虚淵玄が描く「中年ウサギ」の物語―“虚淵節”とは一味違う展開

本作はNetEase Gamesとニトロプラスが手掛ける2.5D横スクロールアクションアドベンチャー。人類が星を去った数千年後の世界を舞台に、中年ウサギである「ラスティ・スタンプ」を主人公とした物語が展開されます。

ラスティは相棒のロボットである「ポンコツ」とともに、巨大な遺跡「エントツ山」を掘り進める日々を送っていましたが、ある日エントツ山の採掘調査を行うチーム「BB団」と出会うことによって物語は大きく動きます。

本作の原案や脚本は「魔法少女まどか☆マギカ」や「PSYCHO-PASS」「Fate/Zero」といった作品のストーリーを手掛けてきた虚淵玄氏が担当。同氏の描く世界といえば「陰鬱」で「救いのない世界」といった、重く心を抉るような展開のイメージが抱かれがちですが……本作ではそんな“虚淵節”とは一味違った、コミカルで明るい雰囲気のストーリーが描かれています。

特に「BB団」の面々はどこか抜けていて、それでいて個性的なキャラクターばかりで、シュールなやりとりや掛け合いによって笑える場面も多くあります。基本的にメインストーリーはフルボイスで、杉田智和さんや安元洋貴さん、ファイルーズあいさんなど豪華な声優陣による演技は必見。

もちろん、主人公のラスティも負けていません。ラスティの声優を担当するのは黒田崇矢さんで、「愚痴ばっかりで頑固頭、でもどこか憎めない…」そんな破天荒な中年おじさんウサギにピッタリのハマり役といえるでしょう。

また、本作では遺跡内部に人類が残した端末「ディータム」に記録されたメッセージを読み進めていくことになります。ラスティには家出した娘がおり、端末を読み進めていくことで娘の行方や、人類が去った世界の真相が明らかになっていきます。

ストーリー終盤では父親と娘、二人のあり方や気持ちのすれ違い、不器用ながらも互いのことを思い続けた親子の愛情や人物像が描かれる心温まる展開に。機械のメッセージ記録を通じた対話、というふたりの距離感が、親子のぬくもりと同時にもう会えない切なさを引き立たせているのもポイントです。

メインストーリー以外の読み物も充実―世界を“深掘る”

本作では各地の端末の記録を辿るメインストーリーだけでなく、それ以外の「読み物コンテンツ」も充実しているのも嬉しいポイント。単に「エントツ山」を掘り進めるだけでなく、その過程で見つかる様々なアイテムやガラクタが、世界の歴史やキャラクターたちの背景を補完し、物語への没入感をさらに高めてくれます。

特に注目するべきは「レストア」と呼ばれるコンテンツで、エリアに散らばった車の部品を集め、復元していきます。パーツを集めるごとにストーリーが開放されていくほか、完成するとNPCにフォーカスしたさらなる物語を読むことができます。

また、ダイナーではNPCとの日常的な会話を通じて冒険に役立つさまざまなアイテムを獲得できるほか、教会ではこの世界の宗教観や成り立ち、歴史などを深く学べます。

作中ではスラングとして用いられる“マクレガー”は「ピーターラビット」に登場するマグレガーおじさんをもじったもので、ベンジャミンは「聖ベンヤミン」とい聖兎(聖人)として神話の世界に登場しているなど、細部にも遊び心を感じます。

レストアや教会の話などはどれも作り込まれており興味深く、パーツを収集したり、会話を進めるためにアイテムを集めたりと、読み物コンテンツを開放することがマップをくまなく探索することのモチベーションに繋がっているのも良いデザインだと感じました。

2.5Dアクションでは愛機「ポンコツ」のツールを駆使して突き進む!

本作にはさまざまなエリアとバイオームが存在していて、「ポンコツ」に搭載されているあらゆる機能を駆使してエリアを掘り進めていきます。溶鉱炉や鍾乳洞、潜水艦や軌道エレベーターなどそのエリアのバリエーションは多岐にわたります。

愛機のポンコツはゲームの進行にあわせて新たな機能がアンロック。ワイヤーは高いところにぶら下がったり、壁をよじ登ったりできるほか、危険地帯やワイヤーも届かないような場所に移動できるスラスターのブーストジャンプといった機能が追加され、探索の幅が広がります。

ポンコツの本体機能のほかにも4種類の「採掘」「打撃」「斬撃」「銃撃」に対応したツールがあり、戦闘だけでなく特定の障害物を破壊して道を切り開いたり、ブロックを移動させてフィールドのギミックを解く、といった使い方もできます。

また、これらのツールにはレアリティも存在していて、それぞれレアリティによって壊せるブロックと壊せないブロックが存在しています。より高いレアリティのツールが入手できると、今まで訪れたマップの進めなかった部分が進めるようになるなどリプレイ性が高く、新たな発見もあって飽きのこない探索を楽しむことができるのは良い点に感じました。

ワイヤーやツタは斬撃で切除することで先に進める

一方、アクションのレスポンスや操作性といった部分については少々難があると感じる部分も。前述のワイヤーは上方向や横方向に伸ばすことができ、マップの各所にはワイヤーを引っ掛けて登るフックといったギミックが用意されていますが、フックのフチに当たって引っかからなかったり、ワイヤーが出るのが遅くて届かなかったり…といった場面もみられました。

高いところから落下してしまうと「スタン状態」となり、一定時間は機体の動きが制限されてしまいます。「早く先に進みたいのに…」と、探索のテンポが悪くなってしまうシチュエーションに遭遇することもしばしば。

戦闘面でもアクションや判定など、細かい部分が気になってしまう

戦闘では前述の4つのツールを使い分けながら戦います。本作に登場する敵の「錆獣」は攻撃方法がそれぞれ異なり、攻撃するツールによってダメージが変化するといった特徴もあります。どの武器が効果的で、どれが逆に効き目が薄いかは、ラスティがセリフで教えてくれるので迷うことはありませんでした。

ツールはフィールドで集めた素材をもとに作成することができ、クラフト時にランダムで武器スキルが付与されるほか、アイテムを使うことでさらなるスキルをアンロックすることもでき、素材があれば分解して作り直して…とスキルの厳選も可能です。

なかには「ブロック破壊」といったユニークなスキルもあり、ドリルを使わずにブロックを壊せるなど探索を大きく便利にしてくれるものもあります。今回のプレイではショットガンにブロック破壊のスキルが付いたものをメインに使用していましたが、広範囲のブロックを瞬時に破壊できて非常に快適でした。

それぞれのツールにはチャージ攻撃が用意されていて、例えばドリルであれば複数列のブロックを同時に破壊しながら突き進むことができます。戦闘でもチャージ攻撃のダメージは大きく、雑魚敵であれば一撃で仕留めることも可能です。

さらに、各エリアには雑魚戦とは異なったフィールドを駆使したギミックのボスが配置されており、攻略方法や有効な武器もさまざまです。相手の動きを見極めながら攻撃のチャンスを見つけ、有効な一撃を叩き込んでいく戦闘が繰り広げられます。

しかし前述の操作性や、回避手段の乏しさなどから被弾してしまうケースも多々。プレイヤーを狙ってくる攻撃も範囲などがほとんど表示されないため、直感的な操作での戦闘が難しくなってしまっています。

敵の当たり判定などはフラストレーションを感じる要素でもあります。敵の体にはダメージ判定があるので、例えば下に降りた時に敵がいた場合、プレイヤーが敵と壁に挟まれるようなかたちになると連続してダメージを受けてしまいます。

チャージ攻撃で豪快にブロックを壊しながら突き進んでも、敵や攻撃に当たってしまうことがあるため、せっかくの「ブロックをたくさん壊す」爽快感が損なわれていると感じることもありました。

また、蜘蛛の巣や体液、ミサイルなどの攻撃が敵を倒した後も消滅せずにその場に残り続け、それらに被弾してしまうなど、細かな部分でのストレスも。敵の攻撃にはデバフを付与するものも多く、不意の被弾で探索のテンポが崩されてしまうのは少々残念です。

総評

『Rusty Rabbit』のストーリーは虚淵玄氏が手掛けたということもあって緻密に練り込まれており、設定の奇抜さとは裏腹に「父と娘」という人間味あふれた心温まる展開となっています。メインストーリーの記録端末もサイドコンテンツも「続きが気になる!」と思えるような作りで、それがマップを探索することへのモチベーションに繋がっているのも良いと感じた点です。

アクション面では「ポンコツ」に備わる機能や4つのツールを駆使したフィールド探索、ブロックを破壊することの爽快感などを特徴としていますが、戦闘面や探索どちらでもアクションのレスポンスや操作性、判定など細かい部分でストレスを感じてしまうことがあるのもまた事実。カジュアルにテンポよく楽しめるデザインであるが故に、今後のブラッシュアップなどに期待したいと思います。

Game*Spark レビュー『Rusty Rabbit』 PC(Steam)/PS5/ニンテンドースイッチ 2025年4月17日リリース

アクション面では細かな部分がストレスに感じるものの、虚淵玄氏の手掛けたストーリーや世界は一見の価値アリ。

GOOD

  • 人間味溢れる中年ウサギの不器用で愚直な物語
  • ツールを駆使してマップを探索する楽しさやリプレイ性

BAD

  • 直感的でない戦闘
  • レスポンスや操作性は課題



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