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¥2,990 (2025年4月25日 13:07 GMT +09:00 時点 - 詳細はこちら価格および発送可能時期は表示された日付/時刻の時点のものであり、変更される場合があります。本商品の購入においては、購入の時点で当該の Amazon サイトに表示されている価格および発送可能時期の情報が適用されます。)
注意
本稿はホラータイトルを取り扱っているため、ショッキング・グロテスクな画像が含まれます。
また、ネタバレとなる内容を含みますのでご注意ください。
「ひきこもり」……この言葉が一般的に使われるようになったのは、諸説ありますが、日本では平成に差し掛かる1990年代前後からだったと思います。2023年(令和4年)に内閣府が実施した調査によれば、ひきこもりの総数は全国で推定約146万人に上ったそうです。
いきなり重いテーマですが、今回ご紹介するのは、そんな「ひきこもりの青年」をテーマにした新作ホラーゲーム『BrokenLore: DON’T WATCH』。日本時間2025年4月25日午前10時よりPC(Steam)向けに配信中です(PS5版も発表されていますが、記事執筆時点において、発売日未定)。何を隠そう、筆者自身がひきこもっていた経験を過去に持つので、主人公・真司に共感しつつも、終始胃がキリキリするような「痛み」を感じるプレイフィールが印象的でした。
なおレビューにあたり、開発元よりSteam版早期アクセス用コードの提供を受け執筆しています。製品版とは仕様が異なる場合があるのでご了承ください。
◆「断片的」な物語が続々と…『BrokenLore』シリーズとは

孤独な青年の葛藤を描くサイコホラー
本作は、一人称視点のホラーアドベンチャーゲームです。物語の舞台は、東京某所にあるアパートの一室。プレイヤーはそこに住むひきこもりの青年・真司となり、崩壊していく精神世界を探索して、増殖する恐怖のループから脱出を図ります。はたして真実を明らかにすることができるのか、あるいは手遅れになるのか……。
ざっくりと全体的な感想を言うと、「メタフィクショナルで謎を散りばめた秀逸な物語」と「ウォーキングシム系で派手なアクションはないが、ジットリとした恐怖を味わえる王道的ゲームプレイ」がきっちりと落とし込まれていて満足度は高く、良質なホラーゲームでした。

断片的な「ロア」が繋がり合うホラーシリーズ
本作を含む『BrokenLore』シリーズは、2025年2月に発売された『BrokenLore: LOW | 霧雨村』を皮切りに複数の作品が展開されるフランチャイズ・ホラーシリーズです。2025年Q3以降にはメインラインである『BrokenLore: UNFOLLOW』、『BrokenLore: FOLLOW』のリリースが控えています。
シリーズの大きな特徴といえば、それぞれの作品が「ロア(伝承/歴史)」を基に断片的なストーリーが語られ、相互に物語をつなぎ補完しあっている、という構造を持っていることです。各作品をプレイすることで全体像が明るみになっていくのは、まるで足りないピースを探して嵌めていくパズルのような感覚で、とても魅力的な仕組みだと思います。
また、SNSの闇であったり自己受容の問題であったり、本作であればひきこもり青年の孤立であったり、各作品が一貫して「社会や人間を取り巻くさまざまな問題」をテーマにしていることにも要注目です。
あの松竹がパブリッシングを担当
本作の開発は、渋谷を拠点にするスタジオSerafini Productionsが担っています。またパブリッシャーには、映画・演劇の配給で著名な松竹株式会社のゲーム部門・Shochikuが名乗りを上げたことで話題になりました。Shochikuは、ほかにも美少女ホラー『MiSide : ミサイド』など複数のタイトルのパブリッシング業務を行っています。
◆東京、孤独、ひきこもり─アパートが「非日常空間」に変わるとき

主人公・真司の苦悩を丁寧に描き出す
ここからは実際のゲーム内容を交えて見ていきましょう。東京の狭いアパートの一室に閉じこもっている青年「真司」は、家賃を払うことが出来ず、増え続ける請求書に追われ、理解してくれない家族に悩んでいました。彼は徐々に世界から、そして自分自身からも隔離されているように感じており、完全に外界とのつながりを断っている状態です。そんな彼に残された楽しみはビデオゲームの世界。しかし、それすらも彼の不安を和らげることはできません。


散乱するゴミ、片付けられていないキッチン、無造作に転がる空き缶、埃っぽい寝床……部屋の有り様は住む人間の状態をあらわすと言いますが、この荒れきった様子は、真司の追い詰められた生活とひきこもりの精神状態をダイレクトに反映しているようで心が痛みます。かつて筆者の部屋も乱れまくっていたので、とても共感できます。
部屋の中をあまりインタラクトできなかったのが残念ですが、本作は精緻かつリアルなグラフィックが秀逸で非常に高品質。オプションで画質のカスタムも可能ですが、元々テクスチャなどが作り込まれているため低設定でも問題ないクオリティでした。

壁に貼られたアニメのポスター、メタルラックに並んだ漫画本、段ボール箱、ゲームのコントローラー、食べかけのカップ麺……背景美術のディテールもかなり凝っていて、真司のリアルな生活の雰囲気が伝わってきます。机上のフィギュアやTシャツといった細かなオブジェクトの作り込みも丁寧で、開発チームのこだわりを感じさせます。

真司を悩ませるのは、経済的な困窮だけではありません。ピザの配達を頼んだら置き配指定したのに、なぜか対面受取だったのでイラついて食欲をなくしたり……。

そのうえ、「MHK」の訪問員が受信料の取り立てにやって来て、支払いを拒む真司を「社会の寄生虫め!」と激しく罵倒して帰っていったりと、一見平穏そうなひきこもり生活をおくる真司の、人間関係への恐怖心と経済的なプレッシャーが垣間見えてきます。

そして極めつけは母親からの電話。母親は部屋に閉じこもる真司に「経済的支援をやめるから自立しなさい」と一方的に告げます。追い打ちをかけるように、心の拠り所であるゲームについても「時間の無駄でただの現実逃避」だと一蹴します。
一連の出来事は、真司の精神を激しく揺さぶり、心理的なフラストレーションの鬱積を見事に表現しています。筆者も親からのプレッシャーは身に覚えがありすぎて、別の意味でゾッとしながらプレイしました……。
没入感を高める日本語ボイス

孤独な生活を送る真司と、外界をつなぐ唯一の手段が「メッセージアプリ」です。かつて、ひきこもり支援の更生プログラムで出会った少女・淳子からの思いがけないメッセージが、真司の単調な日常を一変させます。

なんと、プログラムの参加者だった英雄が不審な死を遂げたのです。淳子によると、彼は自分のアパートに入ろうとする「何か」に監視されていたとのこと。そして今、同じ脅威が真司たちにも迫っているというのです。

本作は日本語字幕および日本語フルボイスも実装しており、感情移入しやすくなっています。とくに主人公・真司の演技は、声の抑揚とか感情の込め方がとても自然で、「ひきこもりの青年」という特徴を見事に演じていました。もちろん、淳子や配達人、MHKの訪問員などそれぞれのキャラも違和感なくゲームの世界に溶け込んでおり、物語への没入感をいっそう高めるのに一役も二役も買っていたと思います。
崩壊していく日常とグロテスクな精神世界


こうして、さまざまなストレスに晒された真司の精神状態はついに“臨界点”を迎えます。すると、それに呼応するかのようにアパート内外でおかしな現象が次々と起きはじめ……

とつぜん部屋のいたるところに奇妙な「目」があらわれます。その物体は真司を監視するかのように覗きこんでいるのがとても不気味。これは現実なのか、それとも夢なのか。

「生き残る方法はすべての目を潰すことよ」という淳子の助言を思い出し、手元にあった包丁で壊していきます。


しかし事態は収まりません。部屋の中だけだと思った異変は、なんとアパート全体に広がってきており、もはや平穏だった日常の風景は跡形もない、異様な世界へと変貌していきます。

変わってしまったアパートの世界はまさにグロテスク。無数の目、血のり、臓物のようなものが壁を這うように覆っています。それに、首をちぎられた無惨な死体もあちこちに転がっており、恐ろしい「何か」の存在を物語っていました。
主人公の精神的な変化をきっかけに、世界の様相も変わっていくのは、『サイレントヒル』の「表世界」「裏世界」など、多くのホラーゲームで見られる手法です。しかしながら本作が他タイトルと一線を画すのは、真司が精神的に追い詰められていく過程を丁寧に描き、崩壊していく様子に説得力が十分にあったことでした。

そして何より、グロテスクな精神世界の描写がとても素晴らしい。たしかに「血と臓物」をモチーフにしている点は、たしかに使い古されたものかもしれません。しかし本作においては、派手にならず抑揚の効いたクールな表現が、高品質なグラフィックと相まって、美しさと暴力性の調和が見事でした。
物語を深める秀逸なメタファー

そして本作の最も魅力的だった部分は、物語全体が「メタ的」な視点で構成されていたこと。たとえば、真司は自分の部屋が「安全な避難場所」であり、そこに閉じこもっていれば就職だの経済的な自立だの、周囲の期待や圧力といったものから逃げられると思っています。

しかし、それはピザの配達員やMHKの訪問員、母親からの電話によって「幻想」に過ぎないと気付かされます。とどのつまり、通念的な社会からの視線をあらわすのが不気味な「無数の目」であり、そのプレッシャーに耐えきれなかった心象風景が、血と臓物にまみれた恐ろしい世界そのものなのです。
そして、結局のところ真司がアパートを脱出するには、勇気を出し己の現実に立ち向かっていかなければならないことを暗示していました。
◆恐怖心を引き出すゲームメカニクス

異なる領域を探索
プレイヤーは、真司の壊れゆく精神世界を探索していくことになります。ただしシステムとしては、ウォーキングシミュレーターに近いため、アイテム収集や謎解き、そして戦闘などの要素はなく、淡白で味気無いゲームプレイになってしまっていたのが少し残念かもしれません。
しかし、そんな欠点を補って余りあるのが「異なる領域での探索要素」でした。

ひとつ目の領域は、リアルなグラフィックで描かれる精神世界での探索。リッチなビジュアルの質感は生々しく、ただ歩くだけで恐ろしさやグロテスクさを十二分に味わうことができます。また、怪物との遭遇も独特の緊張感があって良かった点です。


ふたつ目の領域は、一転して低解像度で初代PS風の世界が広がる「レトロセグメント」。ある時点から真司は、この異空間に放り込まれることになるのですが、筆者もプレイ中に「なんだここ?!」と混乱しました。
ここはリアル領域と少し違い、複数のエリアを探索していきます。武家屋敷や森林地帯などロケーションは豊富で、それぞれが入り組んだ迷路のような複雑な構造をしています。それに加えて、こちら側にも異形の怪物が出現しチェイスが始まるので、ほどよく緊張感のあるプレイでした。
実は、この特徴的なシステムはシリーズではお馴染みの要素。すでに発売済の『BrokenLore: LOW | 霧雨村』においても、リアル領域とレトロ領域での探索ができます。気になるプレイヤーはぜひチェックしてみてください。
異形の存在:「百目」と「オナス」

さて、次は本作を象徴する二体のバケモノを紹介します。一体目は、日本の民間伝承に登場する妖怪「百目」をモチーフに再解釈した怪物です。その名の通り、肥大化した全身に無数の目が光り、非常に醜悪で恐ろしい姿をしています。

真司はこの百目と対峙するわけですが、撃退する方法が特殊でした。どうするかというと、百目が現れたらとっさに視界を覆い隠し、「百目を見ない」ように進んでいくのです。百目はランダムに前後左右出現するので、周囲の音をよく聞いて判断します。これがまた普通の戦闘やチェイスと違い、独特のヒリついた緊張感があって面白く感じました。

もしも、タイミング悪く目を開けたまま進んでしまうと……ゲームオーバーに。振り向いた瞬間に襲われたときはマジで恐かったです。

さらに怖い思いをしたのが、「オナス(Onus)」と呼ばれる怪物。コイツは妖怪とは違い、本作の完全なるオリジナルモンスターですが、鋭利な爪とお面のような顔が輪をかけて不気味です。
「Onus」はラテン語で“重荷”とか“責任”を意味する単語で、オナスが背負っている重たい袋は真司の感じる恐怖心や息苦しさを表しています。要は、この怪物は真司自身のメタファーなのです。

オナスはひたひたと足音をさせて近づき、プレイヤーを発見した瞬間追いかけてきます。必然的にチェイスになりますが、オナスはかなり足が速いので、こちらもダッシュで逃げないといけません。
鋭利な爪での攻撃は殺傷力が高いので3~4発喰らえばゲームオーバーです。見た目の不気味さと、唸り声を上げながら来るせいでゲーム中で一番恐怖を感じたし、焦りました。

複数のエンディング
本作は、隠しエンディングも含めいくつかの結末を見ることが出来ます。一周のクリア時間はおよそ1時間~2時間程度なのでカジュアルに遊べたのと、またリプレイ性があったのも良かった点です。さらに他の『BrokenLore』シリーズの世界と繋がりがあるので、考察好きなプレイヤーにはたまらないと思います。
◆おわりに

本作は、東京のアパートに住むひきこもりの青年を主人公にした異色のホラーゲームとして、作り込まれた緻密なグラフィック、メタファーを豊富に盛り込んだメッセージ性のある物語、ボイス付きで臨場感たっぷりのキャラクターたち、グロテスクな精神世界の探索と異形の怪物との遭遇などなど……魅力的な点がいくつもあります。
一方で、アイテムを拾ってパズルを解いてモンスターを倒して進む……といった、「典型的なホラー作品の楽しさを求めるプレイヤー」には、ゲーム性が乏しいものであったのは否めません。真司の部屋や精神世界では、周囲の環境にあまりインタラクトできなかったのも惜しい点でした。

加えて、ストーリー展開もやや説明不足で初見のプレイヤーは置き去りになることでしょう。エンディングについても、もう少し凝って欲しかったなあと個人的に思いました。
とはいえ、全体を通してみれば本編はうまく纏まっていて完成度は高く、ホラーゲームとしての恐怖感や面白さは充分に感じられたので、はじめて『BrokenLore』シリーズに触れるプレイヤーには特にオススメしたい作品ですね。

Game*Spark レビュー 『BrokenLore: DON’T WATCH』 Windows PC(Steam)/ PS5 Steam版:2025年04月25日リリース/ PS5版:記事執筆時点において発売日未定
痛烈なメタファーでひきこもり青年の鬱屈と恐怖の精神世界を描くサイコホラーADV
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GOOD
- リアルで生々しいグラフィック描写
- メッセージ性のある物語
- リアルとローポリ世界の探索、異形の怪物との遭遇
BAD
- やや受け身に偏った、淡白なゲームプレイになりがち