水曜日, 7月 16, 2025
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EKS大規模運用の先進事例とPlatform Engineering:AWS Summit Japan 2025参加レポート #Cloud



EKS大規模運用の先進事例とPlatform Engineering:AWS Summit Japan 2025参加レポート #Cloud

はじめに

こんにちは! 2025年度に新卒エンジニアとして株式会社レアゾン・ホールディングスに入社しました、鈴木 健介です。
現在は、menu株式会社でインフラエンジニアとしてGoogle Cloudを用いたクラウド基盤構築・運用業務を行なっています。

先日、6月25日・26日に開催されたAmazon Web Services主催の日本最大級クラウドカンファレンス「AWS Summit Japan 2025」に、26日のみですが現地参加してきました!
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本記事では、AWS Summitで感じたクラウドネイティブ時代に顕在化している共通課題を整理し、その上で特に印象的だった先進的な解決事例について紹介します。

会場の雰囲気と基調講演

会場に足を踏み入れてまず感じたのは、お祭りのような熱気でした。基調講演から各社のブース展示まで、イベント全体が生成AIのビジネス活用クラウドネイティブ技術という2つの大きなテーマに貫かれていた印象です。

特に、私が聴講したかんぽシステムソリューションズ株式会社様のセッションでは、2020年まではオンプレミス中心に運用していたインフラを徐々にクラウドに移行し、2025〜2029年にはクラウド中心のアーキテクチャへと大きく舵を切る方針が語られました。従来、クラウド化に慎重とされてきた金融業界の基幹システムにおいても、AWSが深く活用されている事実は、クラウドが単なるインフラの選択肢ではなく、あらゆる産業のビジネス基盤として定着しているということを改めて感じました。

クラウドネイティブの深化が浮き彫りにする3つの共通課題

クラウドの利用が深化し、特にKubernetesを中核とするクラウドネイティブなアーキテクチャが普及するにつれて、多くの企業が直面する共通の課題も浮き彫りになってきており、会場のセッションやExpoエリアの展示を巡る中で、特に以下の3つが大きなテーマとなっていると感じました。

  1. Observability(可観測性)の壁

    マイクロサービスアーキテクチャでは、システムが多数の独立したサービスに分散します。これにより、障害発生時に「いったいどこで問題が起きているのか?」を特定したり、パフォーマンスのボトルネックを発見したりすることが極めて困難になります。ExpoエリアではObservability関連企業が大規模なブースを構え、多くの来場者を集めていたこと自体が、この課題の切実さを物語っていると感じました。個別のメトリクスやログを追うだけでは不十分で、分散トレーシングを含めた統合的な可観測性の確保が不可欠となっている。

  2. FinOps:コスト計算の複雑化

    「一体、どのPodが、どれだけのコストがかかっているのか?」というのは、Kubernetes環境を運用する多くのエンジニアが抱える切実な問いだと思います。リソースが動的に、かつ複数のチームやサービスで共有されるKubernetes環境では、従来のサーバー単位のコスト計算が通用しない。事業部門への正確なコスト配賦や、費用対効果の正当な評価を行うためには、ワークロード単位での精密なコスト可視化が強く求められている。

  3. 増大し続けるログデータとコスト

    コンテナ化されたアプリケーションは、そのライフサイクルの短さも相まって、膨大な量のログを生成します。これらのデータをすべて収集・蓄積しようとすると、ストレージ料金やログ分析プラットフォームのライセンス料金が瞬く間に高騰してしまいます。そのため、「すべてのログを保存する」という単純なアプローチから脱却し、必要なログを効率的に収集・活用するための戦略(サンプリング、階層化など)の重要性が増してきている。

Sansan株式会社様が示す「Platform Engineering」の実践

さて、こうした業界全体の課題を踏まえつつ、私が今回のサミットで特に興味を惹かれたセッションを紹介します。それは、Sansan株式会社 技術本部 Sansan Engineering Unit Nayose グループ テクニカルリードの神林 祐一氏とSansan株式会社 技術本部 研究開発部 Architect グループ宮地 宏一氏によるセッション「研究成果を最速でリリースするためのAmazon EKSプラットフォーム – 100以上のサービスを支える基盤」です。

このセッションでは、先に挙げたような技術的課題の根本原因である「Kubernetesの複雑性」と向き合い、組織としてどのように乗り越えていくかという、非常に示唆に富んだアプローチが語られました。

プラットフォームが解決すべき課題

Sansan株式会社様では、研究開発チームが生み出す新しい価値を迅速にサービスとして届けるため、EKSをベースとした内製プラットフォーム「Circuit」を構築・運用しています。このプラットフォームが解決しようとしていたのは、主に以下の課題です。

  • 開発者の認知負荷と学習コスト:

    本業がインフラではない研究開発者に、複雑なKubernetesの運用を強いることなく、本来の価値創造に集中してもらう。

  • コストの正確把握:

    100を超えるサービスが稼働する共有クラスタで、チームやサービスごとのコストを正確に把握する。

  • 開発スピードとガバナンスの両立:

    迅速なデプロイを可能にしつつ、セキュリティや構成の統制を維持する。

解決策:徹底した「抽象化」による開発者体験の向上

Sansan株式会社様のアプローチの核心は、「Platform Engineering」 の思想そのものでした。プラットフォームチームが専門家としてKubernetesの複雑性を一手に引き受け、開発者にはシンプルな開発体験を提供していました。

  • コマンド一つでプロジェクト生成 (Cookiecutter活用):

    開発者はCLIコマンド一つで、CI/CDパイプラインまで含んだプロジェクトの雛形を自動生成可能。

  • UI操作によるPull Requestの自動作成:

    Web画面上でパラメータを入力するだけで、Kubernetesのリソース定義が記述されたPull Requestが自動作成される。開発者はYAMLを直接触る必要がない。

  • 徹底したコスト可視化へのアプローチ:

    チームごとにノードを分離し、AWSのSCAD (Split Cost Allocation Data) を活用することで、共有リソースのコストを各チームに配分する仕組みを構築している。

これらの取り組みは、Kubernetesの複雑さを「隠蔽」し、開発者の認知負荷を劇的に下げ、開発スピードとガバナンスを両立させる素晴らしい実践例だと感じました。

まとめ

今回、初めて大規模な技術カンファレンスに現地参加し、大きな刺激と学びを得ることができました。

生成AIという大きな潮流の裏側で、「複雑化するシステムをいかに管理し、コストを最適化し、開発者が本来の価値創造に集中できる環境をどう作るか」という、より普遍的で本質的な課題があることを知ることができました。そして、その課題に対してプラットフォームの垣根を越え、多くのエンジニアが知恵と情熱を注いでいることを実感しました。


▼採用情報

レアゾン・ホールディングスは、「世界一の企業へ」というビジョンを掲げ、「新しい”当たり前”を作り続ける」というミッションを推進しています。

現在、エンジニア採用を積極的に行っておりますので、ご興味をお持ちいただけましたら、ぜひ下記リンクからご応募ください。





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