🧠 概要:
概要
CrowdStrike(CRWD)は2026年度第1四半期の決算で売上高が予想を下回り、株価が7%下落しました。CEOのKurtzは、Falcon Flexの成長に期待を寄せ、今後のARR回復の希望を示していますが、経営陣は成長率の鈍化に懸念を抱いています。
要約(箇条書き)
- 決算結果: 第1四半期の売上がガイダンスを下回り、株価が7%急落。
- ARR成長: 前年同期比で+21.6%(44億3600万ドル)だが、新規ARRが前年の2億1170万ドルから1億9380万ドルに減少。
- Falcon Flex: 漸進的成長で、企業の柔軟なセキュリティソリューションとして拡大中。
- 成長鈍化要因: 売上高の高いバリュエーションおよび営業コストが利益圧迫。
- 未来の展望: 次四半期に新規ARRの回復を見込むが、現状の株価は割高。
- パートナー戦略: チャネル経由の販売が拡大中で、顧客満足度も高い。
- 経営陣の姿勢: AI技術に注力し、将来的な成長を見込む発言を強調。
この内容から、CrowdStrikeは短期的に厳しい状況ながら、長期的な成長が期待できるというメッセージが伝わります。
今期の背景と説明会における注目ポイント
発表された数字や前期との比較、そして前年同期比での成長率の比較を見て行くと成長率が減速している点が顕著に分かります。
以下は四半期ごとのARR売上高の規模が四半期で1B(10億ドル)を超えてきている為、成長率が下がるのはある程度理解はできます。
しかし現在の株価のバリュエーションは2027年度Forward P/Eで見ても104倍、PEG値においてもセクター中間値(1.72)を大きく上回る2.69とかなり割高です。その為今回のような露骨にガイダンスを落とす発表は株価にとってかなりネガティブ要素になり得ます。
今期発表されたARRは前年同期比+21.6%の44億3600万ドルですがこの内1Q内で新規に獲得したARR(Net New ARR)は1億9380万ドルと前年同期の2億1170万ドルを下回っております。
しかしKurtz CEOは決算説明会においてFalcon Flexの急速な拡大を強調されており、このFalcon Flexが26年度下期以降に於ける新規ARRの急速な回復の鍵となるとCFOのBurt W. Podbere氏も述べておられました。

注)Falcon Flexとは:企業が事前に合意した金額を『Credit』として確保しその範囲内で必要なセキュリティモジュールやサービスを柔軟に導入できるプリペイド型のライセンス契約を言います。導入から僅か2年足らずで急速に成長しており、企業側での柔軟性と効率性を兼ね備えたソリューションとして注目されております。

この急速に成長しているFalcon Flexを実際の数字で分かりやすく説明すると
🔴 ② Flex Driving Platform Adoption(Flexモデルの拡大)
Falcon Flexに関するデータが豊富に掲載されているセクションです。
・指標内容Flex導入顧客の合計契約価値$3.2B超:
・全契約の中でFlexモデルを採用しているアカウントが占める割合(=導入 が拡大)Q1で追加されたFlex契約額$774M(前年比+124%):
・この四半期だけで追加されたFlexの契約価値顧客1社あたりの平均契約額$1M超:
・高単価な契約が多い既存のFlex契約のうち既に導入された割合75%以上:
・契約済みで実運用が始まっているFlexが多数(デプロイ率が高い)Re-Flex(再契約)件数39件:
・すでに契約した顧客が再びFlex契約を拡張・更新しているケース。顧客満足度の高さを示唆
🟢 → Flexモデルが大口契約・高稼働率・高満足度という3点で急成長している様子が見て取れます。
🔴 ③ Trusted Cybersecurity Platform of Choice(選ばれるセキュリティ基盤)
・指標内容Next-Gen SIEM(次世代セキュリティ情報イベント管理)ARR成長率100%以上のYoY成長:
・Falcon LogScaleなど含むSIEM分野でも急成長中$10M以上の大型契約の成長率113% YoY:
・エンタープライズ向けの超大口契約が拡大中パートナー経由のQ1契約比率60%:
・販売の大部分がチャネルパートナー(代理店)経由で成立しているMSSP経由の比率15%以上:
・マネージドサービス経由でも着実に売上構成に貢献
🟢 → Flexと連携して、Falconプラットフォームが企業の中核的なセキュリティ基盤になっていることが分かります。
資料を総括して以下にまとめます。
-
ARR成長は続いているが、新規ARRの伸びはやや鈍化傾向
-
Falcon Flexの導入拡大が売上の新たな牽引役
-
高単価顧客の定着率・再契約率が高く、顧客満足度も高い
-
チャネル経由での販売が加速しており、パートナー戦略が奏功
-
次世代SIEM・AIソリューションも急成長しており、CrowdStrikeの多角化戦略が進行中
経営陣は、「AIが加速する今日の脅威環境において、サイバーセキュリティは引き続きミッションクリティカルであると確信している」と述べ、「前期の第1四半期から第2四半期にかけての純新規ARR成長率は、少なくとも2倍になる」と予想している。
この強気な経営陣のコメントは今期の決算発表を見てネガティブになっている投資家に対して、一定の安心感を与えるものだと思います。
26’2Qガイダンス
続いて新たに発表された2Q以降のガイダンスを見て行きたいと思います。

26’2Q Revenue Consensus $1.15B(1.15B~1.18B)Y/Y+19.70%
EPS nonGAAP 0.83(0.82~0.85)Y/Y-20.10%
26’FY Revenue Consensus $4.79B(4.76B~4.85B)Y/Y+21.08%
EPS nonGAAP 3.51(3.45~3.67)Y/Y-10.63%
市場Consensusと照合してもほぼInline(予想通り)の数字ですね。
EPSにおいては前年同期比、前期比比較でマイナスの成長予測になっており、恐らくChalotte AIの成長コストや研究開発費が収益を圧迫している様相かと思われ26年度営業期は少し厳しい展開になりそうです。
これだけ期待に外れてしまった決算を発表し、26FYガイダンスも特に強くないCrowdStrikeですが次世代SIEMであるAIソリューションの急成長やFalcon Flexの成長率をこのように確認された投資家さんは(私も含めて)ご自身の時間軸の取り方によって評価が大分変わってくるのではないかと思います。
27年度(今から1年後)の営業期でのEPSとRevenueの成長率予測を載せますと以下の様になっており、また急速に成長し始めると予想するアナリストさんの数がこれだけおられます。
ですが26FYでは成長が減速しているのが明らかですので、この辺の判断はまさにご自身の時間軸で変わるものだと思います。

売上高の成長予測で見ても強い顧客定着率を武器に毎期20%を超える成長予測が出ております。

決算財務諸表(前年同期比較)
CrowdStrikeは今期nonGAAP指標ではEPSがプラスですが、GAAP指標では赤字に再転落しております。これはFree Cash Flowにも影響を与える事にもなりますのでまずはIncome Statement(損益計算書)から見て行きたいと思います。

✅ 売上(Revenue)

✅ 売上原価(Cost of Revenue)

✅ 粗利益(Gross Profit)

✅ 営業費用(Operating Expenses)

✅ 営業利益(Income from Operations)

✅ 税引前利益・純利益(Net Income)

✅ 一株当たり利益(EPS)

✅ まとめ:財務面のポイント

続いてGAAP指標とnonGAAP指標での損益の差異を表した比較表です。

🔹 ① 粗利益(Gross Profit)の調整
Subscription(定期収益)

Professional Services(プロサービス)

総粗利率(Total Gross Margin)

🔹 ② 営業費用(Operating Expenses)の調整
Sales & Marketing

R&D(研究開発費)
| GAAP費用 | $334.1M |

G&A(一般管理費)
| GAAP費用 | $165.2M |

✅ 総括:GAAP vs Non-GAAP の意味と背景

最後にFree Cash Flowを見て行きたいと思います。

🔹 1. GAAPベース営業キャッシュフロー
Net cash provided by operating activities
🔹 2. 差し引かれるキャッシュアウト項目

🔹 3. Free Cash Flow(フリーキャッシュフロー)
-
Q1 FY25:$322.5M
-
Q1 FY26:$279.4M
→ 約13%減少しており、投資負担の増加(特に設備投資と開発資産の増加)が主因。
🔹 4. Free Cash Flow Margin(フリーキャッシュフローマージン)
・Q1 FY25:35%
・Q1 FY26:25%
→ 売上高に対するFCFの割合が10ポイント低下。これは収益性ではなく、将来成長のための投資比率が高まっていることを示唆。
昨年から続く営業コストの増大は成長投資の増加によるものと思われ、Falcon Flex、Chalotte AI、SIEM等の拡大戦略に合わせた支出増と見られる為、必要な先行投資と見えます。
Q1 2026 Earnings Call Transcript
George R. Kurtz – Co-Founder, President, CEO & Director
ファルコンフレックスのアカウント総額が7億7400万ドル増加し、ファルコンフレックスを採用したアカウントの取引総額は32億ドルに達したことです。20億ドルに達し、前四半期比で31%、前年同期比では6倍以上の成長を遂げました。
当社の顧客とエコシステムがこのスピードと規模でファルコン・フレックスを受け入れているのを見て、私は自信を持ち、来四半期の純新規ARRの前四半期比の伸びを改善し、純新規ARRの後ろ半分の伸びを加速させる自信があります。
ファルコンフレックスを開始して2年足らずで、私たちはサブスクリプションモデルを採用した820以上のアカウントで、総額32億ドル以上のアカウント取引を成立させてきました。
私たちが見ているトレンドは以下の通りです。 ひとつは、顧客の支出が増えていること。 フレックスの顧客の平均契約規模は、最終ARRで100万ドル以上である。 2つ目は、顧客の契約期間が長いことである。
Flexの平均契約期間は31ヶ月である。 そして3つ目は、フレックスの顧客はファルコンをより早く導入していることだ。
FalconFlexを導入する前に、ポイントプロダクトのEDRとレガシーAVを置き換え、統合するためにCrowdStrikeを選択したことが、このアカウントとの関係の始まりでした。 最初のEDR契約は3年間で1200万ドルでした。
ファルコン・フレックスを立ち上げたとき、この顧客はサイバーセキュリティの近代化を加速させる機会を得て、5年間で1億ドルを超える契約を締結しました。 これがFlexの力であり、ファルコンを単一の成果物販売から、最初の契約の8倍以上の規模の多次元プラットフォーム体験へと進化させたのです。
この変革的なFlex契約は、クラウドワークロードのセキュリティ確保、他のビジネスユニットの拡張、2つのレガシーSIEMを置き換える次世代SIEM、検知と対応を標準化するためのFalcon Completeの広範な採用が目的でした。
最初のFlex契約からわずか9ヶ月の間に、この顧客は最初のサブスクリプションの95%をすでに利用し、さらに統合すべきポイント製品と提供すべきサイバーセキュリティの成果を手にしました。
その結果、このお客様は第1四半期に再フレックス契約を締結し、次のような新たな成果を実現しました。
ファルコンのエンドポイントプロテクションを複数の事業部門に拡大し、クラウドプロテクションをファルコンクラウドセキュリティに置き換えて統合しました。
アイデンティティの保護は、機密性の高い資産において必須となりました。 次世代SIEMは、複数のレガシーSIEMに取って代わり、企業の中心的なデータストアとなり、セキュリティのユースケースを超えてIT部門に拡大しました。 データ保護は、エンドポイントからクラウドまで、レガシーDLPに取って代わりつつある。
Falcon for ITはレガシーなエンドポイント管理ツールに取って代わり、Charlotte AIはエージェント型アナリスト機能と自動化を提供し、セキュリティの成果をスケールアップします。
この顧客は、第1四半期の9桁の再フレックス契約において、契約期間を変更することなく、最初のフレックス契約額の2倍以上の金額を支払っている。
Flexを利用することで、このお客様は現在、最初に購入したEDRの20倍近くを費やしています。
8つ以上のテクノロジーを置き換え、10以上のファルコンモジュールを導入しているこの顧客は、数百万のワークロード、ペタバイトのデータ、数十万のアイデンティティにまたがるファルコンプラットフォームで、まだ多くのことを実現しています。
次に、クラウド、アイデンティティ、暴露管理、次世代SIEMプラットフォーム製品の勢いについて最新情報をお伝えします。 まず、クラウド事業についてです。 クラウド事業は非常に好調なスタートを切り、第 1 四半期の新規契約数および ARR 総額は前年同期比で加速度的に増加しました。
第1四半期には、クラウド・データ・プロテクションを発表し、このアプローチを強化しました。これはすべて当社のユニファイド・センサを利用したもので、世界最高水準のワークロード保護を提供するセンサとまったく同じものです。
当社のイノベーションと商業的成功は、2025年Frost Radarで評価されました: クラウドとアプリケーション・ランタイム・セキュリティ」レポートにおいて、イノベーション指数で全ベンダーの中で最高得点を獲得しました。
当社の成功をさらに後押ししているのは、この分野における最近のM&Aであり、ハイパースケーラーにとらわれない独立したソリューションとしての当社の関連性と競争力を高めています。
今四半期、私たちはFalcon Adversary OverWatch for Next-Gen SIEMを発表しました。これは、私たちのワールドクラスの脅威ハンティングと、超高性能でコスト効率に優れたデータプラットフォームを組み合わせたものです。
これにより、AIを搭載したSOCは、リアルタイムインテリジェンスと自動化により、ネイティブデータとサードパーティデータを横断的に監視し、完全な可視化、忠実度の高いアラート、迅速な対応を実現します。
これこそが、ある大手決済会社がレガシーSIEMを廃止し、7桁の大金を獲得した理由です。 次世代SIEMは、膨れ上がるコスト、レイテンシー、複雑さに不満を抱いていたアカウントへの入口でした。
クエリ時間の大幅な短縮、カスタマイズ可能なダッシュボードの高速化、大幅なコスト削減により、この新しいロゴが採用されました。
AIファクトリーは、NVIDIAのハードウェアとソフトウェアを保護するためのサイバーセキュリティ標準としてファルコンを統合している。
昨日発表したマイクロソフトとの重要なパートナーシップは、私たちの大胆なエコシステム・リーダーシップを浮き彫りにするものです。
昨年の夏以来、私たちは共に世界をより安全で強靭な場所にすることができる共通の基盤を見つけるために取り組んできました。
昨秋のFal.Conでは、サティアにも参加してもらえて嬉しかった。
そして昨日、私たちは脅威アクターの戦略的共同研究を発表しました。
最後に、現在の状況に非常に満足しており、今後の展開にさらに期待しています。 第2四半期は、新規ARRの前四半期比の伸びが改善し、その後、新規ARRの前半期比の伸びが加速する見込みです。
その理由は以下の通り。 ファルコンの30ものモジュールにまたがるプラットフォームが勝利し、私たちは侵害を阻止する製品とイノベーション・エンジンを手に入れました。 さらに、事業全体にわたって勢いが増しています。
私は今日のコメントの冒頭で、世界が直面している不確実性について述べた。 確かなことは、世界はますますサイバーセキュリティを必要とし、ますますCrowdStrikeを必要としているということです。
CrowdStrikeは、AI時代のワークロード、アイデンティティ、データ、インフラ、そして超人的なAIエージェントそのものを保護するために最適な立場にあります。
当社のFalcon Flexサブスクリプションモデルは、これまでにない速いペースでプラットフォームの導入を加速しており、当社の実行力は、ビジネス全体にスピードと効率性をもたらしています。
これらすべての要素が相まって、私は当社の将来に自信と興奮を感じています。だからこそ、当社は最大10億ドルの自社株買いを承認したのです。
CrowdStrikeが、侵害を阻止するという明確な使命を持った、AI時代の世界をリードするサイバーセキュリティ・プラットフォームであることを、私はかつてないほど確信しています。
CrowdStrikeなしでは生きていけないと言ってくれるチーム、パートナー、お客様に感謝します。
とても力強いそして自身に満ち溢れたKurtz CEOの説明会冒頭あいさつを抜粋転載させていただきました。先月セクターは少し違えど同じSoftware企業のApp Lovin社の決算内容を記事にしましたが、その時もこの膨れ上がる営業コストに対して大きな疑問をもったのを覚えております。
今思えばAIが進化し続け、Agent AIが主導となっている現在や未来においては『現時点で』これだけの先行投資ができない企業は逆に淘汰されて行くのだと感じました。
数年前までは一つのEndpoint Security企業だと思っていたCrowdStrikeですが、もはやそのレベルではなく進化し続けるChalottoe AIとFalconが、顧客を最良の選択(パッケージ)へと導くクラウド型の総合セキュリティ企業への道を進み続けていると感じました。
まとめ
ここまでCrowdStrikeの26’1Q決算を多角的に見てまいりましたので、自身の見解をまとめたいと思います。発表直後の数字を見て色々な事が頭をよぎり、ライバル企業が事前に良い決算を出していたのでCrowdStrikeを売却する事も一瞬考えましたがこのように中身をしっかり確認して経営陣が見ている方向性も感じ取る事ができましたのでHoldする事にいたします。
AIデータセンターに対する投資の拡大が各企業にとって重荷になっている側面も多々ありましたが、時代がまずAgent AI主流になってきておりソフトウェア企業としてここに注力できない企業は競争に負けて行くのだなと感じました。
25’3QのMicrosoftの決算報告でCapexの方向性を少し変えて行くというAmy CFOの発言やMetaのSusan CFOも(Capexへの)手は緩めないと仰っておられた経営陣の目にはこの先に待っている世界が見えておられるのでしょう。
決算を深堀する事でこういった細部まで理解できるようになるメリットは計り知れません。私も今回深堀しなかったらもしかしてCrowdStrikeは手放していたかもしれません。
仮に未来から今日を振り返った時に手放した方が良かったもしれませんし、手放さないでいて良かったと思うかもしれません。
ですが私自身投資において大事にしている事は、未来の結果よりも現在の状況をどれだけ多角的に判断できているかであり、判断の再現性をいかにして高められるかという点に差が生まれると思っております。
投資は知識や経験が最終的にはモノをいう世界であり、これを積み重ねていく事によって自身の軸と言うものが生まれて来ると思います。
この軸をしっかりと認識し、この先の荒波に飲まれないよう研鑽を積み重ねて行く所存です。
長くなってしまいましたが最後までお読みいただきありがとうございました。皆さまにとって有益な情報となり得ますことをお祈りしております。
Views: 0