歴史を振り返ってみると「左利き」には天才が多いことがわかります。
ミケランジェロ、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ナポレオン、チャップリン、アインシュタイン、エジソン
彼らはいずれも左利きであったといわれています。
このように左利きは創造性の高さと関連しているとされますが、今回、米ジョージ・メイソン大学(GMU)の研究で、左利きに関する新たな説が浮上しました。
なんとCEOが左利きだと会社の業績が上がる可能性が見つかったのです。
何を隠そう、スティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツ、マーク・ザッカーバーグは、みな左利きです。
左利きは「経営の才」とも関係しているのかもしれません。
研究の詳細は2025年4月22日付で学術誌『Journal of Behavioral and Experimental Finance』に掲載されています。
目次
- 左利きに天才が多い理由とは?
- CEOが左利きだと会社が好調に⁈
左利きに天才が多い理由とは?
「創造的な人は左利きが多い」という話を聞いたことがある方も多いでしょう。
これは単なる迷信ではなく、脳科学の知見に基づく説でもあります。
左手を使う動作は、脳の右半球によって制御されています。
脳の右半球は、空間認知や直感、創造性などに関わるとされており、左利きの人はその性質上、独自の発想をしやすいと考えられているのです。
このため、偉大な芸術家や科学者に左利きの人物が多く見られることは、ある意味では納得のいく傾向といえるかもしれません。

ではビジネスの世界、とりわけ企業のトップであるCEOにおいても、利き手は何らかの意味を持つのでしょうか。
これまでこの点についてはあまり検証されてこなかったのが事実です。
しかし直感や創造性は新しいアイデアを生み出し、革新的な決断を下すうえで欠かせない資質です。
企業の成長をリードするCEOにとって、まさに重要な特性ともいえます。
今回の研究は「左利きのCEOが本当に企業に革新をもたらしているのか?」という長年の仮説を、科学的に検証しました。
CEOが左利きだと会社が好調に⁈
研究チームは今回、1992年から2015年の間にアメリカの企業に在籍していた1,008人のCEOを対象に、その利き手を判定しました。
利き手の情報が公表されていないCEOについては、手書き、食事、ゴルフ、腕時計の着用位置といった情報から利き手を特定し、必要に応じて企業に直接問い合わせるなど、徹底的なデータ収集が行われました。
結果として、右利きのCEOが91.4%、左利きが7.9%、両利きが0.7%という割合が確認されました。
次に、各企業の特許出願数や被引用数を指標として、業績や事業の革新性のレベルを測定。
さらに企業の財務データ、業界特性、CEOの学歴や年齢、創業者であるか否かといった要素も加味して、統計的な分析が行われました。
その結果、左利きのCEOが率いる企業は、そうでない企業に比べて明らかに多くの特許を出願しており、しかもそれらの内容は既存技術の改良ではなく、まったく新しい発想に基づくものである傾向が強いことがわかったのです。
加えて、左利きのCEOは自身が発明者として特許に関与する割合が高く、STEM分野(※)における外国人技術者の雇用も積極的に行っていました。
これは人材獲得においても先見性と柔軟性を持っていることを示唆しています。
【※ STEMとは、科学(Science)・技術(Technology)・工学(Engineering)・数学(Mathematics)の頭文字を綴った略語】

最終的に、左利きのCEOが率いる企業は、総資産利益率(ROA)や株式の長期保有リターンといった財務的なパフォーマンスにおいても、右利きのCEOの企業を上回る成果を出していたのです。
これまであまり注目されてこなかった「CEOの利き手」という特徴が、企業経営の革新性や業績にまで影響を与えているという事実は、多くの読者にとって意外に感じられるかもしれません。
もちろん、利き手だけですべてが決まるわけではありません。
けれども、CEOの個性や認知特性が経営に与える影響は、今後さらに注目されるべき研究領域といえるでしょう。
さて、皆さんの会社のトップは右利きでしょうか、左利きでしょうか?
参考文献
Study: Left-handed CEOs are more innovative
https://som.gmu.edu/news/2025-04/study-left-handed-ceos-are-more-innovative
元論文
The puzzle of left-handedness: Evidence from corporate innovation
https://doi.org/10.1016/j.jbef.2025.101053
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部
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